主演映画『カンフー・ヨガ』が昨年末に日本でも公開され、その後もまだまだ主演作の公開が控えているなど、60歳を越えて未だに現役アクションスターとして我々を楽しませてくれている、ジャッキー・チェン。

『カンフー・ヨガ』ポスター
確かに我々ミドルエッジ世代にとっては、スクリーンの中でジャッキーが演じる役柄同様に、いつまでも若々しく明るいヒーローとしてのイメージが強い。『拳』シリーズや『プロジェクトA』など、今でも彼の旧作が地上波やCSで放送されているので、まるで時が止まっている様に思えるのも無理はないところだ。
だが、ここでふと疑問に思うのが、実際のジャッキーの人生とはいったいどの様な物だったのだろうか?ということだ。

過去に出版された自伝本3冊
実はジャッキーの自伝本は、過去にこの3冊が日本でも出版されている。しかし、それぞれ書かれた時期が異なっている関係で、微妙にその記述に違いがあったり、今ではコンプライアンス的にマズい記述があるなど、読み比べてみるとかなり面白いことが判る。
そこで今回は、珍しくジャッキーの伝記を漫画で描いた作品を紹介することにしよう。
彼の代表作『プロジェクトA』公開の年に掲載されたこの漫画だが、少ないページ数ながらジャッキーの足跡を10代の若者に伝えようとした点が非常に興味深い作品となっている。果たして、気になるその内容とは?
自伝漫画『輝け!!クンフーの星』概略

掲載誌の表紙
本作が掲載されたのは、『プロジェクトA』が公開された1984年に出版された、小学館のアイドル雑誌『ヤングアイドル』の増刊号『ひとりじめジャッキー・チェン』。『ヤングアイドル』というアイドル雑誌の特別編集号として出版されたため、当然のことながらその内容も10代の女の子をメインターゲットにしている。
自伝漫画『輝け!!クンフーの星』内容紹介

本作の扉絵
全11ページにまとめられた本作の作者は、あの名作漫画『ザ・ゴリラ』を書かれた坂丘のぼる先生。

『ザ・ゴリラ』のコミックス
同じく小学館の『コロコロコミック』に連載していた『ザ。ゴリラ』連載終了後に書かれた本作は、短いページながら写真を入れ込んだり事実をかなりアレンジするなど、低年齢層の読者にも分かりやすいように配慮されているのが特徴となっている。

両親と離れ一人香港に残された7歳のジャッキー

なぜかジャッキーにだけ先生は冷たかった。

実は厳しい態度は、先生の愛のムチだったのだ!
冒頭の数ページだけ2色カラーで掲載された本作は、その生い立ちから「中国戯劇研究学院」への入学、やがて映画界に入り自分のスタイルを見つけるまでの苦労が描かれている。
だが、ページ数の関係だろうか、サモハンやユン・ピョウとの出会いや友情については一切描かれていない。
代わりに描かれているのは、ジャッキーに厳しく当たっていた先生のその真意と愛情が明らかになる部分だ。

ブルースリーとの運命の出会い!

子供たちの反応から、自身の進む道に気づくジャッキー

それを見ていた意外な人物とは?

香港の大監督、ローウェイとの出逢い!
やがて映画のスタントマンとして活動を始めたジャッキーだが、来る日も来る日も端役のやられ役しか回って来なかった。1972年、ついに大スターであるブルース・リー主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』にスタントマンとして参加。この作品の中で危険なスタントを見事に成功させ、ブルース・リーからも高い評価を受けることになった。
そんな中、ブルース・リーの亜流ではない自分だけのスタイルを模索していたジャッキーは、ついに自分の個性を生かす道がコメディカンフーにあると気づき、独自のスタイルを完成させる。
そんな彼に目を付けたのが、ブルースリーの主演映画を監督した大監督のロー・ウェイだったのだ。

香港から日本、アメリカへと進出するジャッキー!
日本での大ブーム、そしてついにアメリカ映画への出演など、ジャッキーの快進撃は続く!

世界にはばたけ、ジャッキー・チェン!
『ヤングマスター』日本版主題歌での歌手デビュー、カンフーとスポーツとの融合を果たした『ドラゴンロード』を経て、ついにジャッキーは自身の集大成となる作品の構想を得て制作にとりかかる。
こうして脚本の完成に五ヶ月を費やした大作『プロジェクトA』が完成。ジャッキーの挑戦は更に続いていくのだ!
最後に
いかがでしたか?
今回紹介したのはあくまでもティーンの女の子向けのアイドル雑誌増刊に掲載された物であり、ページ数も少なく内容もかなり事実をアレンジしているのが特徴だ。
特にロー・ウェイ監督が車で通りかかってジャッキーをスカウトする描写は、ページ数が少ないとは言えかなり強引な展開で驚いた。とは言え、この当時のジャッキーがバリバリのアイドルとして若い女の子に大人気だったことの証明として、これは貴重な資料と言えるだろう。この本には伝記漫画以外にも、『プロジェクトA』の特写グラビアや、綴じ込み付録としてジャッキーの手形やキスマーク入りピンナップまで付いていて、アイドル雑誌の増刊号ならではの盛りだくさんな内容となっている。
残念ながら数々の特集本や書籍が出版された中でも、この雑誌『ひとりじめジャッキーチェン』はかなり入手困難な一冊となっているのだが、興味を持たれた方は是非探してみて頂ければと思う。