アンディ・フグ【極真時代】青い目の空手家 Blue Eye Samurai

アンディ・フグ【極真時代】青い目の空手家 Blue Eye Samurai

ヨーロッパの小国、スイスで生まれた少年は、極真空手に一目ぼれした。 決して大柄ではないが鍛え上げられた肉体、高い身体能力と精神力、哲学者的風貌。 「青い目のサムライ」は、海を渡り、踵落としで空手母国:日本を席巻した。



アンディ・フグは6歳でサッカーをはじめ、数年後には州のU16(16歳以下のジュニアユース代表)に、さらにその後にはスイス代表にも選ばれた。

あるとき、友達に誘われ極真空手の道場に見学に行った。
スイス人が東洋の服を着て突きと蹴りで戦い、戦いの始めと終わりにはキチンと礼をしていた。
この東洋の神秘的光景にアンディ・フグは一目惚れ。
(この格闘技には戦い以上に何か奥深いものがある)
すぐに入門を決めた。
しかし家の経済状況を考えると言い出すことができず、内緒で道場に通った。
月謝は大人が路上でやっていたカード賭博に参加して捻出した。
道場は大人ばかりで、小学生のアンディ・フグは彼らの重い突きや蹴りを食らって何度も転ばされた。
そして何度も立ち上がりムキになって立ち向かっていった。
そして休まずに道場に通い続けた。
自分より大きな人間に向かっていく姿は、後の極真空手の世界大会やK-1のリングにおいても同じだった。
アンディ・フグはずっとチャレンジャーだった。

極真空手は、「牛殺し」大山倍達が創始した空手。
既存の寸止め空手に異を唱え、実戦、直接打撃(フルコンタクト)制の空手を行った。
大山倍達の強さ、理想、精神は、世界で支持され広まった。
アンディ・フグも大山倍達を尊敬していた。

空手着で登校

12歳の誕生日、アンディ・フグが学校から帰ると部屋にプレゼントが置いてあった。
開けてみると純白の空手着が入っていた。
それまでは道場でも体操服で練習していた。
アンディ・フグは跳び上がって喜んだ。
その日は空手着を着て寝て、次の日は空手着で登校した。

最初で最後にみた父

久しぶりに父親が帰ってきたと聞き、アンディ・フグと兄は、父親がいるというバーへ向かった。
緊張しながらソッとドアを開けると、1人の男が数人の男たちから暴行を受けていた。
「あ、パパだ」
兄がつぶやいた。
それがアンディ・フグがみた最初で最後の父親の姿だった。
アンディ・フグは、一方的に殴られる父親を助けることもできず、立ちすくみ、やがて泣きながら走って帰った。
その夜、父親は家に帰ってこなかった。
15歳のとき、アンディ・フグは、国際大山杯で初優勝した。
同年、アーサー・フグが戦死したことを伝える手紙が届いた。

プロサッカー選手ではなく、極真空手を選んだ

スイスでは、9年間の義務教育の最後の3年間、日本でいえば中学校は、学校の成績や家庭環境、個人の希望や特性などに応じ、進学に向けたクラス、普通クラス、また実務クラスにわかれる。
そして卒業後どんな道を進むべきかを決め、親や学校、国がサポートする。
高校や大学への進学を目指す者もいるが、中学卒業後、職業訓練の道に進む者が7割を占める。
国は22の分野、約230種類の職種を公式に認め、若者はその中で自分に合う職種を選ぶ。
それぞれの職種にどんなスキルや知識が必要なのか各州が定め、能力資格試験がある。
それに合格すれば職人としての第一歩を踏み出すことができる。
どの職業訓練にも現場での見習いと学校での授業が必須で、現場での仕事に加え、1週間に1日は職業訓練学校に通い学ぶ。
労働市場に直結した知識や技術を学んだ職業訓練修了生は需要が高く、職業訓練修了生が応用科学大学などに進学すれば社会的・経済的地位の高い資格が得られる。
アンディ・フグは、スポーツトレーナーになりたかった。
成績的にも進学コースへ進むこともできたが、結局、中学を卒業すると兄が働いていた肉屋で修業しながら学校に通い空手の修行に熱中した。

そしてアンディ・フグは、17歳で極真空手のスイスチャンピオンになった。
また空手と並行して続けていたサッカーでもプロチームからスカウトされた。
アンディ・フグは、迷わずに高額のギャラも期待できるプロサッカー選手ではなく、極真空手を選んだ。
そして見習いを修了して大きな肉屋に就職した。
しかし海外を含めよく試合の出たり、ケガをしてよく仕事を休んだため、2年後で辞めた。

初来日 ホテルのドアを壊す

1984年、19歳のアンディ・フグは初来日。
2年連続スイスチャンピオンの肩書をひっさげ第3回極真空手世界大会に出場した。
1回戦から足技で勝ち進み、3回戦は速攻秒殺で「1本勝ち男」と呼ばれたイギリスのグレン・シャープに延長戦まで粘り強く戦い判定勝ち。
アンディ・フグの空手の特徴は、回し蹴り、後ろ回し蹴り、後ろ蹴り、前蹴りが、左右どちらの脚からも、しかも上段中段下段に繰り出せること。
相手は、速くて多彩な蹴りに翻弄された。
そしてベスト16に進んだアンディ・フグは、不屈の精神力と華麗な組手で不世出の天才空手家といわれる松井章圭と対戦。
下段回し蹴りで足を刈られ倒れそうになったところを松井章圭の道着をつかんでしまい「掴み」の反則をとられ判定負け。
ベスト16に終わった。
そしてその夜、アンディ・フグが泊まっていた池袋のメトロポリタンホテルの部屋でトイレのドアがブチ抜かれた。
そして4年後、別人のように生まれ変わって世界大会に戻ってくる。

オリジナル技 「踵落とし」

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