イギリス版ウィーアーザワールド『Do They Know It's Christmas?』

イギリス版ウィーアーザワールド『Do They Know It's Christmas?』

世界的に有名なチャリティソング『We Are The World』。その起源となった楽曲が、1984年12月、イギリスでリリースされたのをご存知でしょうか?今回はそんな英国の有名ミュージシャンが集い、歌ったチャリティソング『Do They Know It's Christmas?』について振り返っていきたいと思います。


もうすぐクリスマス!聖なる夜の定番ソングといえば?

今年もあっという間に時が過ぎていき、とうとう12月に入りました。クリスマスシーズンの到来です。道路わきの街路樹にはイルミネーションが煌めき、いたるところに赤と緑の装飾がほどこされ、街は早くもお祭りムードに満ち溢れています。

そんな浮かれた雰囲気に合わせて、商業施設の中、飲食店の店内、商店街などで、どこからともなく流れてくるのが、クリスマス・ソングです。あなたにとっての定番のクリスマス・ソングというと、いったい、何になるのでしょうか?

山下達郎の『クリスマス・イブ』、WHAM!の『LAST CHRISTMAS』、マライア・キャリーの『All I Want For Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)』など、さまざまな定番曲が挙げられるかと思いますが、今回、取り上げる『Do They Know It's Christmas?』をもっともお気に入りのナンバーとする人は、きっと、少数派でしょう。

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エチオピアの飢饉のニュースをきっかけに立ち上げられた『バンド・エイド』

『Do They Know It's Christmas?』は、イギリスとアイルランドのミュージックシーンを彩る当時のスターたちが集まって結成したスーパーグループ『バンド・エイド』による楽曲です。バンド・エイドの発起人となったのは、アイルランド人アーティスト、ボブ・ゲルドフ。

1979年、カリフォルニアに住む当時16歳の少女ブレンダ・アン・スペンサーが近隣の小学校に乗り込んで、銃を乱射し、2名の死者・8名の重傷者を出した事件に触発されて書いた『I Don't Like Mondays(哀愁のマンデイ)』のヒットで知られる社会派バンド「ブームタウン・ラッツ」のシンガーだった彼は、1984年、エチオピアの飢饉を伝えるBBCのニュースを見て「自分たちに何かできることはないか?」と思うようになります。

その想いをスコットランド出身のロックミュージシャン、ミッジ・ユーロと共有し、彼と共に立ち上げたのがチャリティ・プロジェクト『バンド・エイド』であり、2人の手掛けた楽曲が『Do They Know It's Christmas?』というわけです。

ボブ・ゲルドフ

ボブ・ゲルドフ - Wikipedia

U2のボノやフィル・コリンズ、ボーイ・ジョージも参加!

『バンド・エイド』の理念に共鳴し、集まったアーティストは、フィル・コリンズ、ポール・ヤング、U2のボノとアダム・クレイトン、カルチャー・クラブのボーイ・ジョージ、WHAM!のジョージ・マイケル、デュラン・デュランなど、錚々たる面々。彼らが歌う『Do They Know It's Christmas?』における歌詞の冒頭は以下の通りです。

♪It’s Christmastime; ♪
♪クリスマスがやってきた♪

♪there’s no need to be afraid♪
♪もう恐れることはないんだよ♪

♪At Christmastime,♪
♪クリスマスには、♪
♪we let in light and we banish shade♪
♪光を集めて、闇を消し去ってしまおう♪

いかにも、チャリティのクリスマス・ソングっぽい始まり方です。しかし、途中、こんな一節も。

♪Well tonight thank God it's them instead of you♪
♪今夜は神に感謝しよう。自分が当事者でないことを♪

過激な歌詞の真意とは?

これ、見方によっては、かなり過激なメッセージではないでしょうか?実際、U2のボノが歌ったこの歌詞は、ゲルドフが書いたものなのですが、当初、ユーロから「あまりにもひどいんじゃないか?」として反対されていたのだとか。

しかし、根が社会派シンガーであるゲルドフは「綺麗ごとでは済まされない真実がある」とし、断固として修正を拒否。結果として、『Do They Know It's Christmas?』は、単なる美辞麗句を並べた綺麗なだけのクリスマス・ソングではなく、しっかりと想いの通ったメッセージによる骨太な社会派ソングとしての意味合いを強く帯びるようになったのです。

楽曲は大ヒット!ゲルドフは一時、ノーベル平和賞候補にも

1984年12月3日にリリースされた『Do They Know It's Christmas?』は、プロジェクト立ち上げ当初よりマスコミで話題になったこともあって、大ヒットを記録。結果として、500万ドルもの義捐金を集めることに成功し、さらには、長らく恐怖独裁政治が続いていたエチオピアに対し、西側諸国が協力的姿勢を示すきっかけにもなるなど、大変な成果をあげました。
ブームタウン・ラッツの低迷期で不遇をかこっていたゲルドフは一躍この功績により、ノーベル平和賞候補にまで踊り出るという快挙も成し遂げます。

そして、これが後に、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチ―らのチャリティ・プロジェクトで『We Are The World』でお馴染みの『USAフォー・アフリカ』の発足や、20世紀最大のチャリティー・コンサート『ライブエイド』の実現に繋がったのは、言うまでもありません。

Do They Know Its Christmas

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(こじへい)

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