「珍プレー好プレー」といえば、やっぱりみのもんたのナレーション!
11月26日(日)に放送された「ニチファミ!・中居正広のプロ野球 珍プレー好プレー大賞2017」(フジテレビ系・21時)が、平均視聴率11.0%をマークしたことが分かりました。中居クンが司会をつとめる体制になってから早7年。いまではこの元SMAPリーダーが番組の象徴のように君臨していますが、かつて、「珍プレー好プレー」のシンボルといえばみのもんた一択でした。

中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞
中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞 - フジテレビ
彼が繰り出す珍プレーのナレーションは名人芸の域。台本なしのアドリブで映像にアテレコしていくというそのしゃべりの軽妙さ・テンポの良さは、そんじょそこらの素人が上げている「実況動画」などとは天と地ほどの差があります。過去には行き過ぎたナレーションをしてしまい、批判されることもありましたが、それでも、みのの声があってこそ、「珍プレー好プレー」と考える往年の視聴者は多いに違いありません。

みのもんた
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「宇野ヘディング事件」へのアテレコが、「珍プレー好プレー」を生んだ
そんなみのもんたのナレーション、もとい、『プロ野球珍プレー・好プレー』が誕生したきっかけとなったのが、「宇野ヘディング事件」でした。『プロ野球ニュース』(フジテレビ系)のキャスターだったみのは、ある時、この事件の一部始終を収めたVTRにふざけてアテレコしていたところ、当時の担当ディレクターが「いいね!それ!」と気に入り、ほどなくして番組化したという経緯を持ちます。つまり、みののナレーション、もとい、「宇野ヘディング事件」なくして、こんにちに至るまで30年以上続く「珍プレー好プレー」という人気コンテンツは存在しえなかったのです。
そもそも、宇野ヘディング事件とは?
宇野ヘディング事件…。単なる野球選手のエラーがこれほどまでに仰々しいネーミングで呼ばれているのには、そのたった一瞬の出来事が、あまりにも衝撃的だったからに他なりません。
時は、1981年(昭和56年)8月26日。舞台は後楽園球場。読売ジャイアンツ‐中日ドラゴンズの第19回戦において、事件は起こりました。7回裏。試合は2-0で中日のリード。中日先発・星野仙一は、2安打・無得点の完璧なピッチングを披露します。前の試合までに巨人は、連続試合得点記録158試合を達成したこともあり、その記録を止めるのは俺だ!と息巻いていた彼にとって、この試合はなんとしても完封で〆たい一戦でした。

星野仙一
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緊張感あふれる状況で生まれた“奇跡のワンプレー”
7回裏も2死1塁までこぎつけて、迎えるバッターは1番・松本匡史に代えて、代打・山本功児。星野の投じたストレートにかろうじて、バットを当てるも、打球は完全なる打ち損じ。力なくフワッとショート後方へと舞い上がります。
捕球の構えに入ったのは、遊撃手の守備についていた宇野勝。現役通算338本塁打、1984年にはHR王にも輝いた右の強打者です。
バックステップで飛球を追いかけた宇野でしたが、グラブでボールを掴もうとした刹那、ナイター照明が目に入ってしまい、目測を誤ってしまいます。飛球は本来落下点であるはずのグローブをかすめて、あろうことか宇野の脳天に直撃!ボールは勢いよく跳ね返ってフィールドを転々。
その間に、一塁走者・柳田真宏はホームイン。山本功児もランニング・ホームランを狙いましたが、必死の中継プレーの甲斐あって、なんとか、ホームでタッチアウト。
試合はかろうじてこのまま2-1で中日が逃げ切りましたが、完封を逃した星野はグラブを叩きつけて悔しがったといいます。
事件から5年後には自伝『ヘディング男のハチャメチャ人生』を発表
このエラー。仮に大量得点差がついたどちらかの敗戦確実なゲームで起こっていたとしたら、これほどまで取り上げられなかったでしょうし、面白さも半減していたに違いありません。1点を争う好ゲームで飛び出したまさかの失策だったがために、故・2代目桂枝雀が提唱していた「笑いの緊張と緩和」よろしく、大きな笑いを生じさせたのでしょう。
宇野本人としては、ただのエラーを大げさにいじられて当初はそうとう嫌だったみたいですが、すぐにこの事件がらみでフューチャーされることを受け入れるようになり、1986年には『ヘディング男のハチャメチャ人生』なる自伝まで発表しています。
30年以上たった今もなお、先述の「珍プレー好プレー」において、“お約束の名シーン”的に何度も再放送されているこの宇野ヘディング事件。これ以上に、衝撃的かつ笑撃的な失策は、今度、なかなかお目にかかることはないでしょう。

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(こじへい)