若者の人気を集めた小さなスポーツカー、ワンダー・シビック

若者の人気を集めた小さなスポーツカー、ワンダー・シビック

ホンダ・シビックが復活しました。新型は3ナンバーで価格も280万円と、高級車のようですが、我々ミドルエッジ世代にとっては小さくてスポーティなクルマ、というイメージが強く、最初のマイカーという人も多いはず。そのルーツ、ワンダーシビックを紹介します。


ホンダを盤石なメーカーにしたシビック

近年はコンパクトカーと呼ばれている1200~1600ccクラスは、長いこと大衆車と呼ばれてきました。代表格はトヨタのカローラと日産のサニーで、販売台数は1位、2位を占めてきました。

そのようなマーケットに、新興メーカーのホンダが挑んだクルマがシビックでした。1972年に初代がデビュー。カローラ、サニーがセダンボディの中で、シビックは2ドアセダン(ハッチバックのような2ボックスボディですが、ハッチバックのようにリアは上から開かず、リアウインドーの下が開く)でした。

環境エンジンCVCCで、シビックの名を世界に知らしめた。

斬新なデザインで人気を集めた初代シビック

Honda Civic 3-door 1972–79 photos

既存のこのクラスにはない若々しさが好評で、新興4輪車メーカーであるホンダのポジションを確立。後に3ドアハッチバックや4ドアセダン、5ドアハッチバック、5ドアのライトバンが追加されました。

特筆すべきは、世界一厳しいアメリカの排気ガス規制「マスキー法」を、シビックがCVCC技術によって世界で初めてクリアしたことです。

「スーパーシビック」のキャッチコピーが付けられた。

キープコンセプトだった2代目シビック

Pictures of Honda Civic 3-door 1979–83

初代シビックは1979年に2代目にフルモデルチェンジ。3ドア・5ドアハッチバックのほか、初めて大きなトランクが付いたセダンスタイルの4ドアセダンが設定されました。また、後にはライトバンをベースにしたステーションワゴンが「シビックカントリー」として追加されました。

また、シビックのみを対象にしたワンメイクレース「シビックレース」も始まり、シビックのスポーティなイメージの定着に貢献しました。

凡庸感は否めない。

2代目シビックに追加されたノッチバックタイプの4ドアセダン

Honda Civic Sedan 1980–83 images

創業者のMM思想を最も具現化した3代目シビック

ホンダの創業者、本田宗一郎は、自動車設計の哲学として「マン・マキシマム・メカ・ミニマム」というものを持っていました。これは、居住スペースは大きく、エンジンなどのメカはコンパクトに、というもので、その頭文字から「MM思想」と呼ばれています。この思想は今日のフィットやN BOXなどにも引き継がれています。

シビックは初代からこの思想を持っていましたが、1983年9月にフルモデルチェンジした3代目は、特に具現化されたモデルとなりました。3ドアハッチバック、トランク付きの4ドアセダン、5ドアワゴンのシャトル、ライトバンがラインナップされ、「ワンダー・シビック」のコピーで発売されました。

2代目から一気に近代的なデザインになった。

「ワンダー・シビック」のキャッチコピーで発売された3代目

Honda Civic Hatchback 1983–87 wallpapers

1982年に登場した2代目プレリュードのイメージを継ぎ、ラジエータグリルは最小になり、ノーズは低く、車高は1340mmに抑えられました。3ドアハッチバックは長いルーフと小さなハッチバックからなる台形のボディで、後席でも十分なルーフ長を確保しながら、スタイリッシュなデザインでまとめられました。

直線的な台形デザインの3ドアハッチバック

Honda Civic Hatchback 1983–87 wallpapers

ブラックアウトされたガラスやライトまわりのデザインは、当時の超先端だった。

「ワンダー・シビック」の特徴ともいえるリアスタイル

Images of Honda Civic Hatchback 1983–87

3代目シビックのメカニズムを描いた透視図

Honda Civic Hatchback 1983–87 images

専用ボディの採用で各ボディの個性を際立たせる

2代目までは3ドアと4ドア(5ドア)で多くの部品を共通にしていましたが、3代目ではイメージを共通としつつ、部品は異なるものを使用しました。

4ドアセダンは、専用のフェンダーパネルを使用して、1385mmの車高と立ち気味のCピラーにより広大なキャビンを確保しました。コンパクトさと広大なキャビンをスタイリッシュにまとめたデザインは、いま見ても斬新なものがあります。

ハッチバックと共通のデザインテーマ、イメージを持ちつつ、異なるフェンダーで独自のボディをまとった4ドアセダン。

Honda Civic Sedan 1983–87 photos

ステーションワゴンのシャトルは、さらに吹っ飛んでいました。MM思想を究極まで極めたような設計で、車高は当時では珍しいほどハイトな1480mm。荷室には縦長の独特な窓を設けました。ボディは3ドアハッチバックと同様に直線的で、スクエアな台形をしていました。1984年11月には、シャトルにパートタイム式の4WDが追加されました。

立ち気味のCピラーと大きな窓ガラスで、明るく広いキャビンが特徴。

Photos of Honda Civic Sedan 1983–87

写真は1984年11月に追加された4WD。

ステーションワゴンには、シャトルの名が付けられた

Honda Civic Shuttle 1983–87 wallpapers

高い車高と広大なキャビン、台形のボディでステーションワゴンの新境地を開拓したシャトル。

Honda Civic Shuttle 1983–87 photos

ダッシュボードは3ボディとも共通で、シンプルなデザイン。写真はシャトルのもの。

Images of Honda Civic Shuttle 1983–87

ワンダー・シビックが誕生した技術的背景

ワンダー・シビックが発売された1983年は、日本車のFF化(前輪駆動化)が進んだ時期でした。トヨタではカローラがフルモデルチェンジし、セダンはFF化されましたがクーペはFRが維持され、今でも人気のハチロクが登場しました。

外観のモチーフは、今年1月まで製造されていたCR-Zに引き継がれている。

シビックよりも走行性能を高めたバラード・スポーツCR-X

Photos of Honda Ballade Sports CR-X 1983–87

また、この頃からラジエータの設置位置が変わり、スポーツカー以外の普通の乗用車でも、冷却風の取り入れ口がバンパー上のラジエータグリルから、バンパー下の開口部に変更されました。

ワンダー・シビックのデザインは、この変更が大きく、大衆車にはないような低いノーズと、そこから延びるのびやかなデザインを実現しました。

ヘッドライトの形状が異なる。

シビックよりもスポーティなセダンとして発売されたバラード

Honda Ballade 1983 images

また、販売店の多チャンネル化に対応した兄弟車として、1983年7月に2+2クーペのバラード・スポーツCR-Xが、9月にはバラード(4ドアセダンのみ)が発売されました。バラード・スポーツCR-Xの性能は高く、「FFライトウェイトスポーツ」という新ジャンルを開拓。海外ではシビックCRXの名で販売されました。

1984年10月24日には、1600ccDOHCエンジンを搭載したSiを追加。全日本ツーリングカー選手権(JTC)などのレースでも活躍し、以後、シビックは若者の間で、スポーツカー的な位置付けになりました。1985年9月にマイナーチェンジされましたが、前期型が好評だったため、デザインに大きな変更は加えられませんでした。

マイナーチェンジで、1600ccと1500ccのリアガーニッシュがテールライトと同色に変更された。

Images of Honda Civic Si 1984–87

シビックのイメージを10年以上に渡って確立

3ドアハッチバックのデザインイメージは、1991年発売の5代目まで継承されました。それほど、出来がよく、シビックのイメージを決定づけたのです。

3代目から6代目までのシビックは、1300~1600ccという小さな排気量と実用性の高さ、そして何よりもスポーティな走行性能により、多くの若者の支持を集めました。このクラスの他車はファミリーカーのイメージが強いため、初めての新車としてシビックを購入する若者も多かったです。そして、ホンダの屋台骨としてシビックは君臨していました。

ワンダー・シビックのキープコンセプトでフルモデルチェンジされた4代目は、「グランドシビック」のキャッチコピーが付けられた。写真は北米仕様。

Honda Civic Hatchback US-spec (EF) 1988–91 images

しかし、2000年にフルモデルチェンジした7代目では、5ドアハッチバックと4ドアセダンのみのラインナップとなりました。所得の増加とRVブームによりスポーティな小型車を求める層が減ったこと、6代目で設定されたタイプR以降は、3ドアの売れ筋がタイプRに偏重してきたことなどが背景にあるようです。そのため、日本では3ドアハッチバックの製造が行われなくなり、イギリス工場で製造された3ドアハッチバックのタイプRが日本に逆輸入されました。

さらに2001年に発売されたコンパクトカー、フィットが大ヒットし、シビックのポジションはさらに上に位置付けられました。2005年発売の8代目では3ナンバーサイズになり、4ドアセダンのみラインナップ。そして、2010年に日本でのシビックの販売が終了しました。なお、2009年にはイギリス工場製の3ドアハッチバックのタイプRが日本でも限定販売されました。

5代目は「スポーツシビック」のキャッチコピーが付けられた。

Honda Civic SiR-II Hatchback (EG6) 1991–95 wallpapers

その後も、ワールドカーとしてシビックは海外で製造・販売され、2011年に9代目が、2015年に10代目が登場しました。2017年から日本でも久々に製造・販売が再開されたモデルは10代目になります。

1972年の誕生以来、45年もの歴史を重ねてきたシビック。日産のスカイラインがすっかり高級車になったり、多くのクルマが廃止される中で、シビックが上級の位置付けに推移することは自然な流れなのかもしれません。

5代目はセダンのフォルムが大きく変わり、「フェリオ」のサブネームが付いた。

Honda Civic Ferio SiR (EG9) 1991–95 wallpapers

近年、若者のクルマ離れが指摘されていますが、シビックが1980~90年代に若者をクルマに引きつけてきたことは間違いないでしょう。

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