天国から来たチャンピオン
人を信じ、そして愛し合う。かつてのアメリカ映画にはこうしたハートウォームな作品を代表的なジャンルのひとつとしていた時期がありました。
時代でしょうか、近年ではそうした映画が少なくなってきているようです。その点、70年代のアメリカはその手の映画の宝庫といって良いでしょう。
そんなハートウォームでファンタスティックな映画の代表が1978年の「天国から来たチャンピオン」です。
名作です。名作なだけに多くの方がこの映画のことはご存知でしょうから、この映画に関するエピソードを中心にご紹介します。

天国から来たチャンピオン
「天国から来たチャンピオン」は、第51回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、美術監督・装置賞を受賞しています。
この映画のキャッチコピーにあるように「人間っていいなぁ」と思わず言いたくなる、そんな魅力に溢れている作品です。
エピソード
「天国から来たチャンピオン」は、ハリー・シーガルの舞台劇「Heaven Can Wait」を原作とする1941年に映画化された「幽霊紐育を歩く」のリメイク作品です。
原題は原作同様に「Heaven Can Wait」です。直訳せずに「天国から来たチャンピオン」としたところが素晴らしいですね。当時の感覚では“天国は待ってくれる”だと厳しいものがあります。ヒットさせるにはタイトルは大事ですから。
しかし、良いタイトルではありますが、主人公はアメリカンフットボールの選手です。アメリカンフットボール最大のイベントであるスーパーボウルで優勝を狙っているとはいえ、「チャンピオン」というのは違和感があるにはあります。いくら優れた選手であってもアメリカンフットボールは団体競技ですからねぇ。主人公のことをチャンピオンと言うのは如何なものでしょう。
もしかすると、オリジナルでは主人公がボクシングの選手だったことに由来するのかもしれません。本作も当初、主人公はボクシングの選手として企画されており、主役には元ヘビー級チャンピョンのモハメド・アリを予定していたのだとか。
結局モハメド・アリに断られたためウォーレン・ベイティが自ら主役を務めることになり学生時代にやっていたアメリカンフットボールに変更したのです。
ウォーレン・ビーティは、高校時代にアメリカンフットボールのオールスター・チームでセンターとして活躍していたらしいですよ。

天国から来たチャンピオン
アメリカンフットボールシーンの撮影は、ディーコン・ジョーンズ、レス・ジョセフソンといった本物の元ロサンゼルス・ラムズのスター選手を出演させています。
往年のアメリカンフットボール・ファンには見逃せませんね。
また、見どころのひとつに主人公が住むことになる青年実業家の大豪邸があります。
この豪邸はカリフォルニアに実在するフィローリ邸といって総面積39エーカーもあり、そのうちの17エーカーが見事に手入れされた庭園となっています。因みに部屋数は45もあるのだとか!
現在アメリカの保存財団の管理下にあり観光名所になっているようです。
出演
「天国から来たチャンピオン」の制作と主演を務めたのはウォーレン・ビーティです。本作ではバック・ヘンリーと共に監督をエレイン・メイと共に脚本も務めています。
アカデミー監督賞を受賞した「レッズ」をはじめ、多くの作品で監督、脚本を担当しているウォーレン・ビーティですが、「天国から来たチャンピオン」は彼の監督第一作目になります。
ところで、ウォーレン・ベイティという名前ですが、ミドルエイジ以上の方にとってはウォーレン・ビューティーと言った方が馴染みがあるのではないでしょうか?
ウォーレン・ビーティやウォーレン・ベーティといった表記をされることもあるようですが、発音に近いということで、本人の意向により現在ではウォーレン・ベイティとされているようです。

ウォーレン・ベイティ
The 12 Best Movie and TV Quarterbacks of All Time | Den of Geek
レスリー・キャロン、キャリー・フィッシャー、カトリーヌ・ドヌーヴ、フェイ・ダナウェイ、ダリル・ハンナ、メラニー・グリフィス、バーバラ・ハーシー、ジョーン・コリンズ、ウルスラ・アンドレス、マリア・カラス、ジャクリーン・ケネディ、ナタリー・ウッド、ジュリー・クリスティ、ダイアン・キートン、それからイザベル・アジャーニにマドンナ。
さて、この錚々たる顔ぶれの女優リストは何だと思いますか?これはウォーレン・ベイティの女性遍歴なんです。
若い頃はハリウッド1のモテ男と呼ばれていましたからね。何でも共演した女優とは恋仲になるのだとか。
そんなウォーレン・ベイティの代表作といえば「俺たちに明日はない」でしょう。

俺たちに明日はない
「俺たちに明日はない」は、アメリカン・ニューシネマを代表する1本としていまだに語り継がれている名作です。
共演はフェイ・ダナウェイ。先の女性遍歴リストにも当然入っています。
その女性遍歴リストですが、歌手のマドンナが入っていることを不思議に思われる方がいるかもしれませんね。
ご記憶の良い方なら覚えているかもしれませんが、そうです2人は共演しているんですね。

ディック・トレイシー
アメリカン・コミックを映画化した1990年公開の「ディック・トレイシー」です。
そして「天国から来たチャンピオン」ですが、共演はジュリー・クリスティ。当然のように実生活でも2人は恋に落ちています。

ジュリー・クリスティ
ジュリー・クリスティ。とても知的で素敵な女性です。ウォーレン・ビーティの恋人にしておくにはもったいない!と思わず声を荒げてしまいそうですが、確かにウォーレン・ビーティも素敵ですからね。

ジュリー・クリスティ&ウォーレン・ベイティ
1972年に撮影されたジュリー・クリスティとウォーレン・ベイティです。映画のワンシーンのようにも見えますが、そうではありません。
美男美女とはまさにこのことですね。
いくらウォーレン・ビーティが素敵だといっても、彼の恋人にしておくにはもったいない!
ストーリー
ここからはネタバレになってしまいますが、青年実業家のもとに抗議に来ていたベティにひと目惚れしたジョーは、彼女を助けるため、その青年実業家に乗り移ります。
その際、スーパーボウルに出場することが目的だったジョーは、それにふさわしい肉体が手に入るまでの間に合わせとして、短期間の条件を天使と結ぶのでした。
ジョーは青年実業家として業務をこなす傍らスーパーボウル出場を目指しチームを買い取り、訓練をはじめます。
しかし、スーパーボウル出場が決まり、ベティとも順調に愛を育んでいた矢先、アメリカンフットボール選手であるトムという代わりの肉体が見つかったため、ジョーは青年実業家の体から出ていかなければならなくなったのです。

天国から来たチャンピオン
トムの肉体を手に入れたジョーは、引き換えにそれまでの記憶をなくしてしまいます。ジョーが愛したベティにも目の前にいるトムがジョーであることは分かりません。しかし、お互いに何かを感じ二人並んで歩きだすというラストシーンは何度見ても感動してしまします。