FM音源をはじめとした「内蔵音源」
「内蔵音源」はパソコンやゲームマシン、後に携帯電話に標準で搭載されたシンセサイザー機能を指しています。
なお内蔵音源対して、シンセサイザーをMIDIケーブルやUSBケーブルなどで接続して使用するものは「外部音源」。
CDやDVDのゲームソフトでCD-DAなどの音声データで録音済みの楽曲が再生される場合は内蔵音源とも外部音源とも分類されず、音声データを逐次読み込みながら間断なく再生を行う「ストリーム再生」と称されます。
FM音源は1980年代の音楽やゲームサウンドに取り入れられ、当時を象徴するサウンドと評されました。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
初期のコンピュータにはエラー出力のため、単音でブザーのようなBEEP音発生装置が組み込まれていました。これが内蔵音源の元祖とも言うべき音源です。
音源のトレンドについては下記引用が分かりやすいかと思います。
内蔵音源 - Wikipedia
ゲームの世界観を広げてくれるBGM、ゲームサウンド(音源)の歴史と代表的なゲームを振り返る。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
それでは「内蔵音源」について、まずは往年のパソコンに搭載されていた音源を確認していきます。
まずパソコンに搭載されていた主な音源を振り返り、その後にゲームマシンをみていきましょう。
同一のゲームで多くの内蔵音源が紹介されている日本ファルコムの「ソーサリアン」を中心に、比較しやすい動画を転載させていただきます。
PSG(Programmable Sound Generator)
PSGは単純な矩形波を3チャンネル演奏出来るサウンドチップ。
PC-6000シリーズやMSXといった初期のホビーパソコンやゲーム機で広く用いられました。
最も多く使われたAY-3-8910では出力ポートのうち、ひとつをノイズと排他利用が可能で、ドラムや効果音(例えば爆発音など)に用いられました。
どこか透き通っていて物悲しい高音と「ズチャッ」とでも表現したくなるドラム音が特徴的な音源でしたね。
MSXといえば、当時はコナミが独自に開発したSCC音源もユニークな表現力を持つ音源でした。
コナミがMSX向けに開発したSCC音源はFM音源にも負けない!PSG音源に甘んじていたMSXユーザーに希望を与えてくれました。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
YM2203(OPN)
80年代、多くのパソコンキッズにとってFM音源といえばこの「YM2203」を指したことでしょう。
このヤマハのFM音源は少ないメモリ使用量で多彩な音色を表現できるため、80年代から90年代にかけてのパソコンなどで広く普及しました。
「FM音源3音、PSG3音」をモノラル出力可能で、PC-8801mk2 SR以降で搭載された音源です。
「ギュイーン」なFM音源の元祖、的な位置づけだったといえるでしょうか。
多くのサウンドクリエイターがFM音源を駆使した美しいBGMを作り上げました。
なかでも著名だった一人が、当時日本ファルコムに在籍されていた古代祐三氏かもしれません。
RPGの雄、日本ファルコムが得意とした「泣きのBGM」ともいうべきFM音源のゲームサウンド8選! - Middle Edge(ミドルエッジ)
YM2608 (OPNA)
FM音源6音並びにADPCM、チップ内にROMとして波形を持っている六種のリズム音をステレオで、PSG3音をモノラルで再生可能なOPNの後継チップ。よりリッチなサウンドを奏でることが出来ました。
主な搭載機種はPC-8801用「サウンドボード2」及び、PC-9800シリーズ用「PC-9801-86」ボード(通称、86ボード)。個人的には友人が持っていたPC-88VAのBGMを聴いたとき、その厚みに驚いた記憶がありますがOPNほどの普及はみませんでした。
OPNとOPNAのソーサリアンBGMを聴くと、当時やたらとたくさん機種が存在していたPC-88でも別格だったVAを思い出すことが出来ます。
YM2151(OPM)
当時のアーケードゲームで最も一般的だった音源。数多くのゲーマーを魅了した音源です。
出力先を左、右、中央に設定できOPNよりも奥行きのあるサウンドを奏でることが出来ました。
PCではX1の拡張ボードやX68000に搭載されました。
MSM6258
X68000ではFM音源に加えてADPCMが搭載されていました。
元は留守番電話などの録音再生用のチップでしゃべるなどの表現を想定したものでしたが、電波新聞社のボスコニアンを皮切りに、FM音源が苦手とする音を再生するための補助パートとして同期演奏が行われるようになりました。
このADPCMにより、X68000は他のパソコンと比べて圧倒的に豊かなBGMを奏でていたといえるでしょう。
「無いものは自分たちで創る」夢のホビーパソコン『X68000』の魅力について語っちゃいます - Middle Edge(ミドルエッジ)
YM2612
1989年に登場したFM TOWNSに搭載された音源で、純粋にFM音源がステレオ6音のみのチップ。音自体はOPN系と変わりはありません。後述のゲームマシン「メガドライブ」にもこの音源が搭載されました。
TOWNSはこれとは別に8ビットのPCMを8チャンネルも内蔵していたものの、CD-ROMを標準で搭載していたのでゲームのBGMにはCD-DAが用いられることが多く、やや内蔵音源の存在感は薄い機種だったといえるでしょう。
FM TOWNSは時代を先取りした世界初のCD-ROMドライブ標準搭載パソコンでした! - Middle Edge(ミドルエッジ)
MSX FM-PAC(YM2413(OPLL))
それまでPSGを内蔵音源としていたMSXでは1988年にバックアップメモリを含む形でFM音源拡張カートリッジがFMPACの商品名で発売されました。
MSX規格内での名称はMSX-MUSIC。発音数はFM音源9音、もしくはFM音源6音+リズム音源5音だったものの、2オペレータのFM音源である上に任意にパラメータを指定できる音色の種類が1種類に限られ、出力もモノラルである点は同世代の他機種と比較して劣っていました。その反面、販売価格は7,800円と安価で対応ゲームが続々と発売された為、MSX2+以降は事実上標準内蔵音源となりました。
でも多くの88からの移植ゲームでは同じFM音源なのに「あれっ?」ってガッカリすることも多かったですね。

MSXユーザーが喜んだFM-PAC!
MSX-MUSICが劣化版FM音源なんて呼ばれることもあった時代。
ただしこのゲームだけはむしろ他を凌駕するクオリティだったかと思います。
【Xak(サーク】他機種のFM音源に比べて貧弱だったMSXが、もっとも美しい音色を奏でたとされる名作RPG「Xak(サーク)」はPSGの丁寧な「重ね」がスゴイ! - Middle Edge(ミドルエッジ)
以上、ここまで一通り代表的な内蔵音源についてみてきましたがいかがでしたでしょうか。
ここからは代表的なゲームマシンの内蔵音源についてです。
ファミコン(ファミリーコンピュータ)
矩形波2チャンネル、三角波1チャンネル、ノイズ、DPCM搭載とPSGから比べると性能が向上。ファミリーコンピュータ ディスクシステムを用いる事で、波形メモリ音源が1チャンネル増設されました。
ファミコンはロムカートリッジ用スロットに音声入力の端子が有り、カートリッジの方に音源チップを積むことで音源に関してはかなり自由な拡張が可能であり、これまたコナミのVRCシリーズなどで活用されていました。
独特に響き渡るベース音や「ズンタッズンタッ」なリズム音が特徴的でしたよね。
「ファミコン音源でここまでやる!?」なソフトが、2016年に登場していましたよ。
【ファミコン世代必聴】 8ビット音楽アルバム作品「8BIT MUSIC POWER」が2016年1月31日に発売! - Middle Edge(ミドルエッジ)
PCエンジン
波形メモリ音源を最大6音、ステレオ再生が可能。生楽器の再生には向かないものの、独特の味のあるサウンドを奏でました。
ただ、どうしてもCD-ROM2以降のCD-DAのインパクトが強く残っていますね。
【PCエンジン】ハドソンとNECが任天堂ファミコンの牙城に挑んだ意欲的なゲームマシン!! - Middle Edge(ミドルエッジ)
メガドライブ
FM-TOWNSと同様のYM2612を搭載、FM音源6音を再生可能なのに加えてカスタムチップに内蔵されたPSGを3音とノイズを1音再生可能でした。
FM音源の内、1チャンネルはPCMとして使用可能で、ドラムスや音声などを再生させることが多く、「ザ・スーパー忍」などの楽曲がこの音源で作成されました。
【メガドライブ】ファミコンの後継ポジションを狙った熾烈なゲーム機戦争、セガは16BITメガドライブを引っ提げてファミコンやPCエンジンに戦いを挑みました。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
スーパーファミコン
ソニーのSPC700を使用、8ビットPCM音源がステレオで8チャンネルと格段の性能向上がなされました。「アクトレイザー」の評価は非常に高かったですよね。
10月5日、スーパーファミコン(SNES)ミニが発売!幻の未発売作『スターフォックス2』を初収録! - Middle Edge(ミドルエッジ)
PlayStation
CDと同等の音質の16ビット/44KHz/ステレオのADPCMを24音搭載したSPUを使用。以降のゲームマシンでは内蔵音源の性能を論じる行為はほぼ無意味となりました。
PlayStation以降、CD-ROMによるゲームの供給が多くなり、CD-DAによるBGM演奏へと移行したという背景もあります。なおPlayStationの内蔵音源はMIDI(GM)準拠です。
携帯電話(ガラケー)
21世紀初頭の携帯電話端末(ガラケー)にはヤマハのFM音源、MA-5やMA-7が搭載されているものが多かったですね。
メインはFM音源、簡易的ながらもPCMなどが装備されていて、同時発音数も64〜128音にまで達し、更にFM音源部では正弦波以外の波も発振でき、着メロなどに広く活用されました。
この時期は、かつてのサウンドクリエイターが再び脚光を浴びることも多かったですよね。
「NTT」「KDDI」「ソフトバンク」通信キャリア大手3社の変遷、ケータイやPHSの歴史がこれで分かる! - Middle Edge(ミドルエッジ)