『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第20回は、ガンプラの歴史の闇へ消え去った、栄光の「初代HG 1/144 ガンダム」を紹介します!


ビーム・サーベルを振るうHGガンダム

そしてまた、無塗装素組派にとっては、魔法のような現象だったシステムインジェクションが、塗装派の人にとって不評だったという、残酷な現実。
確かに、筆者は当時からも、「このHGは、無理をしてまで多色成型システムインジェクションであるがゆえに、逆に塗装派には評判が悪い」という評価を耳にした。
塗装派は、システムインジェクションで複数の色のパーツを一つにされるよりは、色単位でパーツが別れていた方が、パーツ単位で塗装が出来るのでありがたいという主張だ。
確かに、2017年の現在の目で見ればそうかもしれない。
現代のHGUCやMGは、ほとんど設定の色単位でパーツが別れているので、素組派でも塗装派でも、ありがたい仕様に統合進化したといえるだろう。
しかし、だからといって、HGUC発足より10年近く前の、このHG誕生の試作型にその評価基準を当てはめるというのも、少し筋違いではないかと筆者などは思う。

サーベルを手に、テレビ版オープニングの1カットっぽく

問題点を、そもそもの時系列の順番に置き換えて考えて欲しい。歴史は過去から未来へ向かって進んでいるのだ。
1990年当時、1/144ガンプラでは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』シリーズが、パーツ単位多色成型の他にも、ビス止めスナップフィットや可動指等、意欲的な仕様進化を目指して進んでいたが、ガンプラ全体のビジネスは上でも書いたようにSD全盛期で、リアルタイプガンプラはメインストリームではなくなっていた時期。
そこで生み出されたこのシステムインジェクションという技術は、確かに後々「逆に塗装派には塗装し辛い」と酷評されたが、もう一度考えてみよう。「1/144」の「RX-78ガンダム」のガンプラは、正式にはこれの前には、ガンプラ第1号のガンダムと、その派生型の「Gアーマー付属版」しかなかったのだ。
その、ガンプラ黎明期当時のキットのパーツ構成を考えれば、当然ボディは前後貼り合わせの2パーツ構成なのだから、パーツの形と構成では、進歩してないかもしれないが、少なくとも後退はしてなどいない。
システムインジェクションという新技術は、無塗装派にとって大恩恵ではあっても、塗装派にとって、決してこれは「後退」ではなかったのである。

10年の技術の蓄積。1980年の1/144 ガンダム(右)と、1990年の1/144 HGガンダム(左)

もう二度と、新規生産分が店頭に並ぶことがない初代HGガンダムではあるが、実はガンダムというメカのデザイン変節や進化論を考察していったとき、この初代HGガンダムで産み落とされた設定が、今のガンダム立体化にも名残を残していたり、また、アニメ『機動戦士ガンダム』で描写されていたギミックが、このキット以前にも以降にも、一度も再現されないまま、この初代HGガンダムでだけ再現されていたりといったピックアップポイントが、幾つか見つけられるのである。
ここからは、それらを挙げていこう。

まず、シールド。
アニメ『機動戦士ガンダム』劇中のガンダムは、シールドに関しては、常に(初期の1/144や1/100がそうであったように)左手でシールドのグリップを掴んで構えるか、両手を使う時には、背中にマウントして背負うかの、どちらかであった。
なので、背中マウント保持方法は、当然この初代HGガンダムでも出来るようにしてあるのだが。
現行のガンプラのガンダムでは当たり前である、シールドのホールドが、グリップを指で握るだけではなく、ジョイントで左腕部にマウント出来るという発想を商品化したのは、この初代HGガンダムが最初であった。

腕のジョイントにマウントされるシールド。シールド裏には予備のビーム・サーベル(という設定のモールド)も見える

また、元々は箱型ブロックだった腰回りを、足回りの可動性を上げるために、プレート分割してフレアースカートのように解釈した初のガンダム(前腰左右のプレートが独立して動く仕様はこれも商品で実現させたのはこの初代HGガンダムが初めて)であったのだが、例えば、腰前部の2枚が別個に可動するという仕様は、実は後のHGUC版よりも高度である(可動範囲はHGUC版の方が勝るが)。

箱型だった腰ブロックをプレート分割へとデザインリファインしたことで、ここまで前に脚を踏み出すことが可能になった

これらの特徴は、『機動戦士Zガンダム』デザインスタート時で取り入れられたモビルスーツにおける基本構造を、初代ガンダムに当てはめた結果、生まれたデザインリファインである。

また、これもZガンダムでの設定からフィードバックした新設定だが、バズーカを腰の後ろに装填させるギミックは、実はこの初代HGガンダムが最初に公式化させたのだ。アニメ版『機動戦士ガンダム』では、最終決戦でガンダムがビーム・ライフルを後ろ腰にマウントさせて出撃する演出があるが、バズーカを後ろ腰にマウントさせた描写は、実は一切ないのである。

その後のガンプラのガンダムの、基本装備システムになる、「腰にバズーカをマウントさせる」機能

ただ、ガンダムブーム当時朝日ソノラマから刊行された、富野由悠季監督による小説版『機動戦士ガンダムⅢ』の表紙で、大河原邦男氏によるイラストで、ガンダムが後ろ腰にバズーカをマウントさせて描かれており、これがその設定の発祥と思われる。

今回の一枚目画像のネタ元。これがガンダムブーム当時、モデラー達がこぞって再現しようと、既存のガンダムプラモを改造しまくった、ソノラマ文庫版『機動戦士ガンダムⅢ』の、大河原邦男氏による表紙画(3巻目なのに、逆にG3ガンダム配色じゃない辺りがいかにも当時)

また余談になるが、システムインジェクションによって「首がグレーという成型色」とされた、初の初代ガンダムでもある。

今の目で見ても、かなりイケメンで、元のアニメデザインに近い「安彦顔」のHGガンダム頭部

これらはアニメにはない、アニメ開始10年を経た新解釈、新規設定なのだが、実は「アニメ(劇場版ではなく、1979年放映のテレビシリーズ『機動戦士ガンダム』)で描写され」ておきながら、過去のガンプラでは一度も取り入れられることがなかった「シールドの裏に、ビーム・ライフルをマウントする」を再現した、最初の1/144ガンダムでもある(シールド裏ライフルマウント設定は、劇場版では描写がカットされたので、覚えている人自体、そもそも少ない)。

テレビシリーズのみの設定だった、ビーム・ライフルがそのシールド裏にマウント出来るガンダムは、このHGが初

ちなみに、シールド裏にライフルがマウント出来る1/144 ガンダムの「次」は、2010年に発売されたRGガンダムであるが、そのRGガンダムの「シールドの裏に、ライフルと同時にビームサーベルの予備が2本マウント出来る」設定といい、その配置といい、RGのシールドの裏の設定は、テレビ版を再現したというよりは、この初代HGガンダムを参考にリファインされたと考える方が妥当ではないだろうか?

では、さすがに「初代HGガンダムに欠点は皆無か」と問われると、“この時点での究極”としても、残念だと思ったところは、確かに幾つかある。

例えば手首。
この初代HGガンダムが生み出した、数ある新機軸の一つに「平手と拳、武器持ち手の、5つの手首の差し替えによる表情替え」という、今では当たり前(いや、2010年代でも、手首5種は多い方)のギミックがあるのだが、完成したキットの状態での手首が、大河原氏のリファインデザインとも、元のガンダムのアニメ版デザインとも違って、妙に袖から手首までひょろ長いのだ。
その結果、どうも締りのない腕に見えてしまう欠点を持つが、HGUCでも2006年のザクⅠ辺りで取り入られるようになった「武器持ち手に角度が付いているので、バズーカが肩に担ぎやすい」が、この時点で採用されていることなどは驚くべき仕様ではある。

武器持ち手のパーツ状態。よく見ると、バズーカを肩に担ぎやすいように、手首に角度がつけられていることが分かる

実際に、無理なくバズーカを構えさせられる

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