『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第20回は、ガンプラの歴史の闇へ消え去った、栄光の「初代HG 1/144 ガンダム」を紹介します!


その後のガンプラのガンダムの、基本装備システムになる、「腰にバズーカをマウントさせる」機能

ただ、ガンダムブーム当時朝日ソノラマから刊行された、富野由悠季監督による小説版『機動戦士ガンダムⅢ』の表紙で、大河原邦男氏によるイラストで、ガンダムが後ろ腰にバズーカをマウントさせて描かれており、これがその設定の発祥と思われる。

今回の一枚目画像のネタ元。これがガンダムブーム当時、モデラー達がこぞって再現しようと、既存のガンダムプラモを改造しまくった、ソノラマ文庫版『機動戦士ガンダムⅢ』の、大河原邦男氏による表紙画(3巻目なのに、逆にG3ガンダム配色じゃない辺りがいかにも当時)

また余談になるが、システムインジェクションによって「首がグレーという成型色」とされた、初の初代ガンダムでもある。

今の目で見ても、かなりイケメンで、元のアニメデザインに近い「安彦顔」のHGガンダム頭部

これらはアニメにはない、アニメ開始10年を経た新解釈、新規設定なのだが、実は「アニメ(劇場版ではなく、1979年放映のテレビシリーズ『機動戦士ガンダム』)で描写され」ておきながら、過去のガンプラでは一度も取り入れられることがなかった「シールドの裏に、ビーム・ライフルをマウントする」を再現した、最初の1/144ガンダムでもある(シールド裏ライフルマウント設定は、劇場版では描写がカットされたので、覚えている人自体、そもそも少ない)。

テレビシリーズのみの設定だった、ビーム・ライフルがそのシールド裏にマウント出来るガンダムは、このHGが初

ちなみに、シールド裏にライフルがマウント出来る1/144 ガンダムの「次」は、2010年に発売されたRGガンダムであるが、そのRGガンダムの「シールドの裏に、ライフルと同時にビームサーベルの予備が2本マウント出来る」設定といい、その配置といい、RGのシールドの裏の設定は、テレビ版を再現したというよりは、この初代HGガンダムを参考にリファインされたと考える方が妥当ではないだろうか?

では、さすがに「初代HGガンダムに欠点は皆無か」と問われると、“この時点での究極”としても、残念だと思ったところは、確かに幾つかある。

例えば手首。
この初代HGガンダムが生み出した、数ある新機軸の一つに「平手と拳、武器持ち手の、5つの手首の差し替えによる表情替え」という、今では当たり前(いや、2010年代でも、手首5種は多い方)のギミックがあるのだが、完成したキットの状態での手首が、大河原氏のリファインデザインとも、元のガンダムのアニメ版デザインとも違って、妙に袖から手首までひょろ長いのだ。
その結果、どうも締りのない腕に見えてしまう欠点を持つが、HGUCでも2006年のザクⅠ辺りで取り入られるようになった「武器持ち手に角度が付いているので、バズーカが肩に担ぎやすい」が、この時点で採用されていることなどは驚くべき仕様ではある。

武器持ち手のパーツ状態。よく見ると、バズーカを肩に担ぎやすいように、手首に角度がつけられていることが分かる

実際に、無理なくバズーカを構えさせられる

また、色分け的には仕方がないが、腰のふんどし前部の連邦軍のV字マークが、シールでフォローされてはいるが、パーツではディテールごと省略されていることは、画竜点睛を欠いたのではなかろうか?(もっとも最近のHGUCの、色分け省略をシールで補う際に、ディテールの上から厚みのあるシールを貼る手法が正しいかと言われるとなんとも言えないが……)。

ディテール面で言えば、当時の成型能力の限界なのかもしれないが、現代のガンダムのキットでは必ず別パーツになっている、ハイパーバズーカ後方の取っ手クリップ(ハンガーフック? チャージングハンドル? キャリングハンドル?)が、バズーカ本体と一体成型で表現されているため、取っ手状ではなく板状になってしまっていて、こういう細かいところで「究極」のはずが、チープさに繋がってしまうというのはあるだろう(80年代の初期ガンプラブームの渦中で発売された1/144 武器セットでは別パーツだった)。

板状成型の、バズーカの取っ手クリップ(?)。ここを別パーツにしないだけで、立体感が損なわれてしまった

そして、ビーム・ライフルのフォアグリップは、可動しない片面一体成型なのだが、これもこれで、「究極のガンダムという割には、ガンダムの決めポーズの一つでもある、ライフル両手持ち構えが出来ない構造にするのはどうか」と思う反面、そもそもこのMSジョイントⅡの可動能力では、腕を前方に伸ばした状態でライフルを構え、そこで左手がフォアグリップを握るぐらいには手が届かない。なので、グリップだけ可動しても意味はないという割り切りは出来る。

MSジョイントⅡの可動領域では、ビーム・ライフルに左手を添えるのは、こうしたポージングで構えさせるのが限界

また、フルアクションを謡いながらも、腹部と腰の可動は、かがむどころか回転も出来ない固定仕様なのだが、それはコア・ブロックをそのまま内蔵しているのだから無理な注文であって、そりゃイマドキのRGでは可能なのかもしれないが、30年近く前のHGにそこまでを求めるのも無茶ぶりだなぁとは思ってしまう。

加えて可動面では、MSジョイントⅡがその可動の殆どを制御しているからか、頭部が回転しかできなかったり、肩関節がスウィングできなかったり、MSVや、HG以前のガンプラで出来ていた可動でも、不可能な可動がある辺り、「究極」を謳うにも拘わらず残念というしかないなというところは残る。

後は、MSジョイントⅡが抱える根本的な保持力の問題。
筆者が今回制作に用いたキットは、1990年発売の初版キット当時品なのだが、MSジョイントⅡは当然未使用の状態で組んだにも拘わらず、完成直後から特に下半身の保持力が弱く、股関節はボールジョイントで、足首もフレキシブルに稼働して接地性は悪くないのだが、なかなか下半身のポーズがしっかり定まらないという難点は目立ってしまった結果となった。

しかし、これら欠点を補って有り余る、この初代HGガンダムでしか得られないバリュー、作風、デザインの差別化があり、ガンプラの歴史から抹消してしまうには惜しすぎるという気分は拭えない。
せめて、ミドルエッジ世代のガンプラファンの間だけでも、この初代HGガンダムを「RX-78-2 ガンダムの、HG解釈の一つ」として、記憶に留めておいても良いのではないだろうか。

さて今回は、シミルボンの再現画像に登場するわけでもない初代HGガンダムを、長々と紹介してきたが、今や入手困難と思われる「ガンプラ唯一の欠番キット」にも、これだけの価値と意味があったのだと、覚えていてくれる人とは共感を、初めて知る人には驚きを、抱いてほしくて登場と相成りました。

今回の製作は、いつもどおり基本、素組で部分塗装。
塗装箇所は、目の周りの黒の隈取部分と、ビームライフルのサイトのイエロー、そして額のブレードの基部の赤(ふんどし前部の赤はシールで補った)だけ。
筆者の場合その他に、今回の連載の統一ルールに沿って、ビームライフルとバズーカとバックパックをミディアムブルー、両手を濃緑、首を白(関節部は素材的に塗料が乗らないのでジョイントのまま)で塗装した。
あと、この時代はビーム・サーベルがまだ1/144ではクリアが徹底されていなかった時代で柄と共に一体型白成型なので、ビーム部をピンクで塗装。

完成した状態を改めて見ても、後のHGUC 021 HGUC 191等と並べても、「解釈で選べる個々のイメージのガンダム」の一つとしての存在価値は、あると思われる。

市川大河公式サイト

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