『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

『ガンプラり歩き旅』その20 ~栄光の初代HG 1/144 ガンダムを追え!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をする大好評連載の第20回は、ガンプラの歴史の闇へ消え去った、栄光の「初代HG 1/144 ガンダム」を紹介します!


この技術は既に、試験的に『機甲戦記ドラグナー』(1987年)の「1/144 ドラグナー1型リフター装備タイプ」で取り入れられていたが、今回はまるまるランナー一枚分、実に12パーツ、コア・ファイターのボデイ上面パーツにまでこの技術が用いられている。

武器や手首、バックパックやコア・ファイターの後部など、これらはグレー一色にまとめられて、このランナーに収められている

とにかく一番目を引いたパーツが、このボディパーツ。赤、青、黄色のトリコロールカラーが、一つのパーツに成型されている。胸のダクトがちゃんとまだ埋め込み式のデザインだった時代

これはバンダイの最新技術の投入であり、さすが究極を謳っただけのことはあって、実際、コア・ファイターの機首が青一色でしかないことや、関節部と武器や手首のグレーに目をつむれば、ガンダム本体で塗装しなければいけないところは、目の周りの黒の隈取部分と、ビームライフルのサイトのイエロー、そして額のブレードの基部とふんどし前部の赤(この2つの赤部はシールで補う仕様)だけなのである。

シールドの連邦軍スターマークが、色分けされて別パーツ化されたガンダムは、もちろんこのキットが初めて

それだけではない。
リファインデザインは、もちろん大河原邦男氏が任されているのであるが、実際に完成した商品とリファインデザインでは、確かにギャップは発生していたが、その後の四半世紀を振り返って、2017年の今となっては1/144のガンダムが、2種のHGUCやRG、FGなど、解釈の幅が多段階層で成り立っている現実結果論から顧みると、この、少し頭が大きくて、手首が貧弱なRX-78 ガンダムも、充分「好みの範囲」で、現行の商品と比較して、大きな遜色はないのだ。

なにもここまで!の、コア・ファイターのボディの赤、白も1パーツ成型。出来れば機首も……は、さすがに無理な相談だった

近年1/144では、ようやく赤パーツで別パーツ化されるようになった目の下の赤い隈取も、このHGでは最初から一体成型でこのとおり!

可動の方も、従来のポリキャップ、ボールジョイントの発想を一度停止させて、まずデザイン方面から「可動が可能なように」アレンジしつつ、組み立て難易度があがらないように、本体の可動システムには、MSジョイントⅡ(最初のMSジョイントは、『モビルスーツ戦国伝』シリーズで開発された)という、完成済みのアクションフレームが用意されていて、そこに装甲を被せていく構造が採用されている。
このMSジョイントⅡは、その後のMGシリーズのフレームや、RGシリーズのアドヴァンスドMSジョイントのプロトタイプともいえて、現代にも通じる技術性をこの時点で発揮していた。

同封冊子に掲載されていた、カタログの『モビルスーツ戦国伝』武者頑駄無のMSジョイントの写真

これがMSジョイントⅡ。接続状態のままランナーに配置されている初期状態も、RGシリーズのアドヴァンスドMSジョイントに受け継がれる

さらにさらに、このHGガンダムには、1982年の1/144 コア・ブースター以来、8年ぶりとなる「1/144のコア・ファイター」が付属する。だけではなく、しかもなんとそのコア・ファイターが、非完全ながらも果敢に変形し、ガンダムの腹部に収まるというギミック付き。

コア・ファイター。2010年にRGガンダムが発売されるまでは、唯一の「1/144でコア・ブロックに変形できるコア・ファイター」だった

1/144でコア・ブロックシステムを再現したガンダムは、これの他には2010年のRGガンダムまで20年の間を空けるしかなく、システムインジェクション、可動フレーム内蔵、コア・ブロックシステム再現、デザインリファイン、と、完成した商品はまさに“究極”の名に恥じない1/144 ガンダムに仕上がっていた。

設定どおりの完全変形とはいかないが、コア・ブロックに変形して、ちゃんとガンダムのAパーツとBパーツの間に収納される

しかし、この「究極の1/144 ガンダム」は、このHGシリーズ(直接的にはHGシリーズは、テレビシリーズで主役を張った、ガンダムMk-Ⅱ、Zガンダム、ガンダムZZの3商品が継続して終了した)の後に主流となった、1995年展開開始の1/100マスターグレード(MG)での、デザインリファインと新解釈の定着で影が薄くなってしまい、そして、完全にコンセンサスを得たリファイン、リメイクガンプラビジネスが本格的に1/144で展開され始めたHGUC(1999年スタート)で、No.21として「RX-78-2 ガンダム」が商品化された2001年の春を以て「役目が終わった」とされたのか、バンダイガンプラ初の絶版キットの称号を得て、消えていったのである。

HGの初代だけあって、ポージングの幅が広い

絶版の理由としてはバンダイサイドは、システムインジェクションの生産難易度による金型の劣化、疲労破損などを挙げているが、一方では同じ技術を同時期に用いた、他の初代HGシリーズや、1/100のF91やV2ガンダム、シャイニングガンダムなどが絶版になってないことを考えると、確かにHGガンダムはシステムインジェクションガンプラ第1号でもあったので、新技術の打ち出しに力を入れ過ぎた結果、特にボディのパーツなどは負荷がかかりやすいというのも理解できるので、新規発売されるHGUC 021ガンダムに「現代版初代ガンダムのスタンダードキット」の座を、商品的にもデザイン的にも譲ってしまおうと考えたのかもしれない(というか、タイミング的にその要素は皆無とは言えない)。

30年近く前のキットなのに、手首が数種類ついてくるので、平手を使えばこのように、アニメ版で印象的だった「コンスコン隊のリック・ドムを、振り向きざま撃ち抜く」ようなポーズも可能に

確かにこの時期、2種の異なる「アニメからリファインされた新解釈のデザインの初代ガンダム」が複数生産ラインに乗るメリットはもはやあまり感じられず、1996年にOVAが開始された『機動戦士ガンダム 08MS小隊』キット化の1/144 グフカスタム(1998年発売)をピークに「古いモビルスーツのデザインアレンジは、カトキハジメ氏に」が時代の要請になっていった流れもあり、もはや初代HGガンダムが古臭いデザインアレンジに見えてしまったという事実も否めない。

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