『Hey! Ryudo!』⇒宇崎竜童
桑田と宇崎竜童の出会いは古く、桑田がデビューする前に遡ります。
「俺の愛すべき歌謡曲は『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』以来ほとんど出ていない」
と公言するほど、宇崎を敬愛していた桑田は、デモテープ持参で彼の楽屋まで訪ねていき、「事務所に入れてくれないか?」と打診したとのこと。
しかし、宇崎はこれを拒否。理由は、桑田独自のハッキリと聴き取れない歌唱法が気に入らなかったからだといいます。

宇崎竜童
ダウンタウンブギウギバンド 「サクセス」 - YouTube
その歌詞の内容は…
そんなちょっとした遺恨はあったものの、桑田の宇崎に対する敬愛の念は変わらず。その証拠ともいえる楽曲が1980年にリリースされた『Hey! Ryudo!』です。

『Hey! Ryudo!』:サザンオールスターズ
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『MICO』⇒弘田三枝子
イタリア人歌手・ミーナの楽曲『砂に消えた涙』を、「世界一好きな曲」と公言している桑田。
そのカバー曲を歌った“ミコ”こと、ポップスの女王・弘田三枝子にも、相当な思い入れがあったのか、アルバム『綺麗』に収録された楽曲『MICO』において、愛憎入り混じった感情を爆発させます。

弘田三枝子
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その歌詞の内容は…

『MICO』:サザンオールスターズ
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『Dear John』⇒ジョン・レノン
桑田がビートルズ並びにジョン・レノンから多大な影響を受けていることは、周知の事実。
それゆえ、12月8日の悲報が飛び込んできた際、さぞかしショックを受けたのかといえば、実はそうでもないようです。桑田はこの時、ジョン=隠居と捉えていたために、現在進行形という意味での熱はすっかりなく、冷静に彼の死を受け入れることができたようです。
そんな背景もあって、ジョンへの想いをつづるにしても、今の気持ちを表すよりは、一番彼に熱を上げていた少年時代に立ち返ったほうが良作になると考え、この『Dear John』を書いたのでしょう。

ジョン・レノン
ジョン・レノン - Wikipedia
その歌詞の内容は…

『Dear John』:サザンオールスターズ
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『吉田拓郎の唄』⇒吉田拓郎
なんとストレートなタイトルでしょうか。桑田は著書『ロックの子』の中で「フォークソングは嫌いだったけど、唯一、拓郎だけは歌謡曲の延長みたいで好きだった」という旨の発言をしています。
さらには、自身のラジオ番組で「色んなフォークが流行ってたんだけど、拓郎さんだけが輝いて見えた」とコメントしていたことからも分かるとおり、このフォークのプリンスに、かねてより強い憧れを抱いていたことは間違いないようです。

吉田拓郎
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その歌詞の内容は…
そんな拓郎について歌ったのが『吉田拓郎の唄』というわけですが、そこは桑田佳祐。単純な拓郎賛歌ではありません。

『吉田拓郎の唄』:サザンオールスターズ
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実はこれ、ちょうどこの時期にライブ活動引退宣言をしていた拓郎に対する、叱咤激励の気持ちを込めた歌だったのです(3年後の1988年に撤回)。
なお、『吉田拓郎の唄』をめぐる話には続きがあります。 2003年にサザンの野外ライブツアーでこの楽曲を歌った際、桑田は歌詞を大幅に変更。
このように、拓郎を全面的に賛美する内容へと改変されていたのです。ちょうどこの時期は、拓郎が肺がんの手術で療養していたとき。そんな「My hero」への激励を、よりストレートな表現で示したかったのでしょう。本人が弱っているときに、「フォークソングのカス」なんて歌ったら、それこそ、問題になりそうですし。
以上のように、さまざまなスターへの献歌を発表している桑田佳祐。これらの楽曲の背景にある想いまで汲みとって聴くと、また違った味わいがあることでしょう。
(こじへい)