その名はSAP!

その名はSAP!

残念ながら終了が決まってしまった沖縄を舞台にしたボクのマンガ「屋根の上のラフテー」…そのキャラクターデザインをしてくれた沖縄在住のマンガ家「なかいま強」は僕と同時期にマンガの世界にはいった同い年の友人なのですが、もう一人同い年の仲間がいました。S藤宏…あの頃いつも3人で一緒にいて…


3人のアシスタント

以前スポーツ大将の記事を書いた時にも触れたボクの最初のアシスタント先、
週刊少年サンデー連載「はしれ走!」の仕事場で
ボクより数か月早く入っていたのがS藤でした。
そしてその3ヶ月後くらいに仲井真(なかいま強)が入ってきました。
偶然3人同い年ですぐ仲良くなって仕事に遊びにと
いつも一緒にいたような気がします。

最近年下の仕事仲間に言われたのですが
ナカガーさんたちの世代のアシスタント同士って
妙に関係が深くて暑苦しく感じたそうです。

そうなんです。
妙に暑苦しい関係の親兄弟みたいな仕事仲間でした。

みやさんのところを3人揃ってやめた後、
仲井真は月刊少年ジャンプで「わたるがピュン!」の連載を始めるのですが
連載開始前も以後も仲井真とS藤が一緒にバイトしたり
ボクとS藤で「わたるがピュン!」の手伝いをしたりしていました。

その後ボクは「キャプテン翼」高橋陽一さんのアシスタントに入り
その陽一さんから「S藤君はアシスタントできる?」と聞かれ
今度は2人一緒にキャプテン翼のアシスタントをすることになり
またまたそこでもいつも一緒にいたような気がします。

そんなS藤が体の不調を訴えたのは陽一さんの仕事場に入って
1年ほど経った頃でしょうか?
足の裏に赤い内出血のようなものができその後口の中がズタズタで
食事もまともにとれなくなったと言ってきました。

もちろんボクは病院へ行くことを勧めたのですが
そのまま入院という事になってしまったのです。

誕生日も2日違い
バイク好きで出会ったときはホンダXL250S、
その後CBR400Fに乗り換えて…
アニメ好きで一番好きだったのはザンボット3だって。
パチンコ好きでよく2人で入り浸ってて…
先にパチンコ行こうって誘った方が
負けるっていうジンクスがあって
お互い相手に誘わせたくて「ピシュゥッ!ブブブ…」
って当時はやってたレッドライオンっていう
機種の音真似をしあって誘わせようとしたり。
プロレスも好きで野球の試合の時に試合に出てないからって
隅っこでプロレスやってて審判に怒られたり…

そんな友達でした。

同い年のアシスタント S藤

病名は「膠原病」…彼のような若い男性がかかるのは稀な
今でも完全に治すことは不可能と言われている難病だそうです。

でも当時のボクはそこまでの大変な病気とは知らず
仕事帰りに何度か見舞いに行ったくらいで、本当に今でも後悔してます。

そしてS藤が入院して数か月後のある日
仕事から帰った深夜、彼の兄からS藤が亡くなったという電話を
もらったのです。

信じられませんでした。
ついこの間まで四六時中一緒にいた親兄弟みたいな仲間が!

通夜会場で、ボクは受付をしたので遅れて話に入ったのですが
マンガ家やアシスタント、担当の編集さんが彼を偲んでいろいろな話をしてました。

そんな中、仲井真の担当編集でデビュー前のボクの…そしてS藤の担当でもあった
Y蔵さんが突然
「S藤くんのネーム(鉛筆で描いたマンガの設計図みたいなものです)
を預かっているんだよね」と言い出しました。
S藤は入院前に新人賞に出すための読み切り漫画のネームを作っていて、
その資料用に当時発売したばかりのヤマハV-MAXの写真を撮りに
一緒にオートバイ屋さんに行ったのを思い出しました。
(今でもそのV-MAXの写真は残ってます)

ネームはS藤のお母さんに返すのがいいんじゃないかとか
いろいろ話しているうちに、ふと思いついてY倉さんに尋ねました。
「仲井真がそれをペン入れしたら雑誌に載せられますか?」

「もちろん大丈夫、載せられるよ」

仲井真は自分の名前はださないでむしろみんなでペン入れして
賞に出したいというようなことを言ってたのですが
「わたるがピュン!」が好調な仲井真が描くから
間違いなく載せられるということを言ったらすぐに納得して了承、
S藤の仕事仲間みんなで手伝ってペン入れすることになりました。

そして完成したのがこの
「その名はSAP」です。

その名はSAP!

今回このゲラ刷りの存在はあきらめていて、それどころかタイトルすら失念していて
仲井真に聞いたのに分からなかったのですが(なんといっても30年前の話です)
ダメ元で連絡した当時製作にも参加した仲間の一人、
スーパージャンプで「競艇少女」を連載していた小泉ヤスヒロが
タイトルは覚えているわ、ゲラはちゃんと保管してるわと
ちょっと感動してしまいました、すげえぞ、小泉!

その名はSAP

デビュー

「今回は俺は全くネームはいじらないからな!」
仲井真はそう言って一言一句手を入れずS藤の描いたセリフのまま
キャラも仲井真風ではありますがやっぱりS藤のネームの絵を思わせる
仕上がりでした。

掲載は月刊ジャンプの増刊号で秋口頃だったと思います。

掲載後、仲井真のところに届いたゲラ刷りをもって
S藤の家に行き霊前に供えさせてもらいました。
もちろんまだデビュー前だったボクが「先にデビューしやがって!」と
毒づいたのは間違いありません。

沖縄から出てきた仲井真は3人で飲んだ時に
〇才までにデビューする!できなければ沖縄に帰る!
…とよく言っていたのですが、それを聞いたS藤は
「そうなんだ頑張れよ、でも俺はマンガが好きだからいくつになっても、
なかなかデビューできなくてもマンガを続ける」って言ってました。

ボクはその時はどちらの意見にも賛同しなかったのですが
なかなかデビューできなくてもって言ってたS藤に
あっさりデビューの先を越された事になってしまいました。

その後ボクはデビューまでさらに数年かかってしまうのですが
なんとかデビューにこぎつけ、
デビュー以降もこの年になるまで何度も食えない時期とかあっても
ずっとマンガを描いているのですから
ボクはS藤と同じだったんだなって…

ともかく今残っていたのが奇跡みたいな気がします。
仲井真がこの原稿料は使えないって言ったので
その原稿料を使って手伝ったみんなで
富士から熱海へ墓参りを兼ねた一泊旅行をしてきました。
その時の写真も残っているのですがみんな若い(笑)

30数年前のゲラ刷り

ここでしか読めない!ナカガー書き下ろしの「時空探偵マツ・de・DX」はコチラから

時空探偵マツ・de・DX

関連する投稿


伝説の音楽漫画『TO-Y』連載40周年!ハンズ渋谷で記念ポップアップ開催、伝説のライブグッズも復刻

伝説の音楽漫画『TO-Y』連載40周年!ハンズ渋谷で記念ポップアップ開催、伝説のライブグッズも復刻

株式会社CRAZY BUMPは、2026年2月25日よりハンズ渋谷にて『TO-Y 40周年記念 POP UP STORE』を開催する。上條淳士氏による80年代の金字塔的音楽漫画の連載40周年を祝し、作中に登場するバンド「GASP」や「ペニシリン・ショック」の公式風グッズ、描き下ろしアートボードなど、ファン必見のアイテムが集結。


連載45周年!葛飾区で『キャプテン翼』と11人のエピソード展開催。小野伸二や影山優佳も参加

連載45周年!葛飾区で『キャプテン翼』と11人のエピソード展開催。小野伸二や影山優佳も参加

漫画『キャプテン翼』の連載開始45周年を記念した特別展が、2026年2月6日より葛飾区で開催されます。小野伸二氏や影山優佳さんら「翼ファン」11名が、作品から受けた影響を名シーンと共に紹介。南葛SCの選手との交流やベイブレード大会など、聖地・葛飾ならではの多彩なイベントも同時展開されるファン必見の催しです。


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


「ロベルト本郷のブラジルフェス」が開催!高橋陽一が「キャプテン翼」ロベルト本郷の“現役ブラジル代表時代”を初描き下ろし!

「ロベルト本郷のブラジルフェス」が開催!高橋陽一が「キャプテン翼」ロベルト本郷の“現役ブラジル代表時代”を初描き下ろし!

『キャプテン翼』の原作者であり、南葛SCのオーナーである高橋陽一が、作中でも屈指の人気キャラクターであるロベルト本郷の「ブラジル代表時代の姿」を初めて描き下ろしました。


“怪盗キッド”黒羽快斗の誕生日・6月21日より18日間毎日無料放送!『まじっく快斗』&『まじっく快斗1412』が放送!!

“怪盗キッド”黒羽快斗の誕生日・6月21日より18日間毎日無料放送!『まじっく快斗』&『まじっく快斗1412』が放送!!

新しい未来のテレビ「ABEMA」にて、アニメ『まじっく快斗』(全12話)および『まじっく快斗1412』(全24話)が、6月21日から7月8日までの期間に毎日無料放送されることが明らかとなりました。


最新の投稿


昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

ニューヨーク発のブランド「OVERCOAT」が、昭和の名横綱・千代の富士との異色のコラボレーションを発表。生前愛用したテーラードスーツから身体寸法を逆算し、伝説の肉体をパターン(型紙)として再現。特別展示や限定アイテムの販売を行うポップアップイベントを、2026年3月より東京・ニューヨークで順次開催します。


伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

辰巳出版は2026年3月6日、プロレス専門誌『Gスピリッツ』の証言集第3弾『Gスピリッツ選集 第三巻 武藤敬司篇』を発売しました。平成の新日本プロレス黄金期を支え、日米を股にかけて活躍した武藤敬司のキャリアを、本人や関係者の貴重なインタビューで振り返る一冊。新録インタビューも追加された、全プロレスファン必携の保存版アンソロジーです。


没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

東京・神保町の名画座「神保町シアター」にて、2026年3月14日より特集上映『没後30年 俳優・渥美清』が開催されます。国民的映画『男はつらいよ』シリーズの人気作をはじめ、主演を務めた貴重なラブコメディや社会派人間ドラマなど、全12作品をフィルムで上映。日本映画界に多大な足跡を残した稀代の名優、渥美清の多才な魅力を再発見する貴重な機会です。


『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

バンダイスピリッツより、ドラゴンボールの聖地「カメハウス」を立体化した『ワールドコレクタブルフィギュア PREMIUM-カメハウスセット-』が登場。全高約22cmのハウス本体は室内まで作り込まれ、悟空や亀仙人など7体のフィギュアが付属。日常シーンから名場面まで自由に再現可能なファン垂涎のアイテムです。


伝説の歌姫が横浜に降臨!『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム』LEDドームで特別追加上映が決定

伝説の歌姫が横浜に降臨!『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム』LEDドームで特別追加上映が決定

コニカミノルタプラネタリアYOKOHAMAにて、伝説の歌姫・中森明菜の魅力を堪能できる『中森明菜 ザ・ステージ・プラネタリウム-LED ver.-』が4月5日まで特別追加上映。圧倒的な高輝度・広色域のLEDドームで蘇る歌唱姿、限定特典の「難破船」ステッカーやコラボドリンクなどファン必見の内容です。