ゴジラ生誕25周年に雑誌掲載された、幻のゴジラ漫画がヤバい!「シンゴジラ」を先取りしたような、その驚きの内容とは?

ゴジラ生誕25周年に雑誌掲載された、幻のゴジラ漫画がヤバい!「シンゴジラ」を先取りしたような、その驚きの内容とは?

先日公開された「キングコング・髑髏島の巨神」を見て、「お、次はゴジラが!」と期待に胸を躍らせた、ミドルエッジ世代の方々も多いのでは? 昨年の「シンゴジラ」といい、もはや「スターウォーズ」や「アメコミ映画」並に、「怪獣映画」の巨大な波が来ている!そう感じずにはいられない今日この頃。


今回紹介するのは、記念すべきゴジラ生誕25周年に当たる1979年に雑誌掲載されていた、幻のゴジラ漫画だ。
ちなみに、この年には様々な少年漫画誌やテレビ雑誌でもゴジラ映画が取り上げられ、日劇での全過去作品上映イベント「ゴジラ映画大全集」も開催されていたほどの、ゴジラ映画再評価ブームの真っ只中。ミドルエッジ世代の方々には、この特集上映でゴジラの洗礼を受けた、という方も多いのでは?

それではまず、その幻のゴジラ漫画の概略から紹介することにしよう。

1979年に突然発表された、幻のゴジラ漫画2本とは?

残念ながら、最近ではこれら月刊少年漫画誌のバックナンバーの入手が極めて困難になっており、「まんだらけ」の様な専門店の店頭でも、中々見かける機会は少ない。当然その価格も高騰している。

この「‘79ゴジラ・エネルギー大作戦」が掲載されたのは、月刊少年マガジン1979年11月号。

滝口アキラ

ミドルエッジ世代には、その上に載っている「スーパーマン」の方が気になるのでは?
この「日本版スーパーマン」漫画については、その内にまとめて取り上げる予定なので、お楽しみに。

表紙の記載は小さいのだが、特別読みきりとして50ページで掲載されたことが判る。

滝口アキラ

今回紹介するのは、月刊少年マガジンの1979年11月号に掲載されていた、オリジナルストーリーによる「ゴジラ漫画」の1本。
「‘79ゴジラ・エネルギー大作戦」という作品だ。

構図的には、前作「'79ゴジラ東京大襲来」と同じ感じだが、英語の「GODZILLA」の字体が「怪獣王ゴジラ」のそれにそっくりだったり、白目ゴジラが後の平成ゴジラシリーズを先取りしているなど、この扉絵からも作者の「いしいしんいち」先生のゴジラ好きが良く判る。

迫力満点の扉絵がこれだ!

実はこの「‘79ゴジラ・エネルギー大作戦」が掲載される半年前、同じ月刊少年マガジンにもう1本、「'79ゴジラ東京大襲来」というゴジラ漫画が掲載されている。どうやら、この「'79ゴジラ東京大襲来」の好評を受けて、本作が掲載されたようだ。

ちなみに「'79ゴジラ東京大襲来」の方は、沼礼一氏の名前が原作者としてクレジットされているが、本作には特に原作・原案のクレジットが無いので、作者の「いしいしんいち」先生による完全オリジナル作品だと思われる。
残念ながら「'79ゴジラ東京大襲来」の掲載号は入手できていないのだが、幸運にも画像入りで詳しく紹介されているブログがあるので、興味を持たれた方は是非こちらのリンクから参考にして頂ければと思う。

'79ゴジラ東京大襲来 いしいしんいち - 努ブログ - Yahoo!ブログ

さて、次はいよいよ漫画本編の紹介に移るとしよう。

「‘79ゴジラ・エネルギー大作戦」ストーリー大紹介

日本の小笠原海域。深海で核爆発を起こし、割れた地殻から噴出すマグマの熱から莫大な熱エネルギーを取り出そうとする、壮大な実験が行われていた。

海に浮かぶ人工島で、父親のある実験に同行していることが語られる。

主人公は14才の健一くん。

滝口アキラ

島の様に見えたそれは、実は巨大なタンカー3隻を繋げた物だった!
素晴らしいアイディアだが、恐らく、1977年の12月に公開された、「007私を愛したスパイ」からの影響が大きいと思われる。

日本の小笠原海域に浮かぶ人工島!

滝口アキラ

今回の実験の責任者である滝沢教授と、健一の父親で研究スタッフである大江戸助教授。

滝口アキラ

巨大な人工島で行われている実験とは、深海での核爆発で地殻を壊し、そこから流出するマグマの熱から膨大なエネルギーを得るという壮大な物だった!
実験成功に無邪気に喜ぶ研究スタッフ一同。しかし今の視点から見ると、周囲への放射能汚染や生態系の破壊など、地球規模で問題あり過ぎでは?

巨大な人工島で行われている実験とは?

実験は見事に成功!
しかし、何らかの原因で肝心のエネルギー伝達ケーブルが断線してしまった。

深海での異常振動が原因で、大事なエネルギー伝達ケーブルが切断されてしまう。

実験成功!と思われたものの、思わぬトラブルが発生!

滝口アキラ

なにやら企んでいる様子の健一くんも、こっそり潜水艇に潜り込んで同行するのだった。

原因究明のために、小型潜水艇で調査に向かう、滝沢教授と大江戸助教授。

滝口アキラ

事件原因と現場調査のために、小型潜水艇で深海に向かう博士たち。
健一くんも無断で潜り込んで同行することに。

その時、音波探知機にまるで生き物の鳴き声のような、奇妙な物音が聞こえて来る。

事故現場で一行が眼にしたのは、何者かにより切断されたケーブルの残骸だった。

滝口アキラ

潜水艇の計器が狂ったような反応を示す中、突然健一くんが潜水艇のハッチの外を指差して叫んだ!

滝口アキラ

そして、ついにゴジラ登場!

扉絵では白目だったが、本編中では黒目が描かれている。窓の外にゴジラの目がアップで写るというこの描写、まるで後年の「ジュラシックパーク」を先取りしたかの様だ。

ゴジラの初登場シーン!

滝口アキラ

健一くんがゴジラだと知っているのは、前作「'79ゴジラ東京大襲来」の後の物語だから。

緊急浮上で必死に逃げる潜水艇!

滝口アキラ

海面まで300メートル、今にも追いつかれそうなこの状況で、何故かゴジラの生態に詳しい健一くんの判断が、一行の危機を救うことに。

追ってくるゴジラを何とか振り切って海上に脱出したのだが・・。

ほっとしたのも束の間、肝心の研究施設がゴジラに襲われることに気付く江戸川助教授!

潜水艇のライトを消すことで、何とかゴジラの追跡から逃れた潜水艇。

滝口アキラ

海上に浮上したゴジラの放射能火炎により、海上に浮かぶ研究施設は壊滅的な被害を受けてしまう。
生き残ったのはこの3人だけだった。

生き残ったのはこの3人だけだった。

核爆弾のショックですら、ゴジラにとっては「刺激」レベルなのだ!

今回の事件の報告記者会見をする3人。

滝口アキラ

やがてゴジラは日本を目指して移動、上陸してしまう。

日本上陸の時は、刻一刻と迫る!

相模湾沖に出現し、居合わせた漁船に目撃されたゴジラ。

滝口アキラ

海岸線で迎撃する自衛隊の戦車も、簡単に破壊してしまう。

ついに本土に上陸したゴジラ!

滝口アキラ

この漫画が掲載されたのは、ちょうど「ガンダム」放送開始から半年経った頃。当時から話題になっていたことが判る貴重なカットだ。

これは、上陸したゴジラがビル街に現れたカットだが、何故かこの一コマにだけ、当時放送されていた「機動戦士ガンダム」のアムロ達が描かれている!

滝口アキラ

上陸してからの夜のシーンでは、終始ゴジラは白目で描かれている。

ビルも人間も、容赦無く破壊しながら進むゴジラ!

滝口アキラ

この辺の人間ドラマと問題提議も、本作の素晴らしさだと言える。

自身の実験が招いてしまった前代未聞の危機に、苦悩する滝沢教授!

滝口アキラ

あまりの被害と責任感で、発狂寸前の博士!

そんな中、健一くんのある一言でゴジラ対策のアイディアが!

余りに絶望的な状況の中、健一くんの何気ない一言が、ゴジラ攻略のヒントになるとは!

滝口アキラ

ゴジラ撃退作戦のために、焼け残った研究施設である巨大タンカーが運ばれて来る。

滝口アキラ

ゴジラの動きを止めるための超低音ガスを充填している作業員達。

滝口アキラ

そしてついに、対ゴジラ作戦が実行に移される!

ゴジラが光に集まって来るという習性を生かし、まずは海上に浮かべた巨大タンカーにおびき寄せる滝沢教授達。

滝口アキラ

狙い通り巨大タンカー上に誘導されたゴジラに対し、超低音ガスが噴射される!

滝口アキラ

超低音ガスを浴びて、一時的にだがその動きを止めたゴジラ。
この辺の展開は、昨年の「シンゴジラ」を想い起こさせる。

作戦の第一段階は見事に成功!

滝口アキラ

第一段階は見事成功!作戦は次の段階へと進む。

ゴジラの巨大さが良く判るこのカット、実は「キングコング対ゴジラ」へのオマージュと思われる。

作戦の第二段階として、そのまま巨大タンカーに仮死状態のゴジラを乗せて運ぶことに。

滝口アキラ

ゴジラを一体どこに運ぶのか?健一くん以上に、読者にも気になるところだが・・・。

ゴジラもイビキをかく!ことが判明した貴重なカット。

滝口アキラ

まず、タンカーにゴジラを乗せたまま、日本海溝の真上まで移動。そこでタンカーを爆破!タンカーの残骸を重りとして、そのままゴジラごと一万メートル下の深海に沈める!素晴らしい作戦だ。

大江戸助教授の口から語られる、ゴジラ撃退作戦の全貌がこれだ!

滝口アキラ

爆破決行の時間がいよいよ迫る!

大江戸助教授の計算通り、果たして、一万トンの水圧でゴジラは殺せるのか?

滝口アキラ

このまま無事に終わると思われた作戦にも、意外な誤算が!

日本海溝まであと10分というその時、仮死状態だったゴジラの眼が突如として開いた!

滝口アキラ

ちなみに本作でのゴジラの泣き声は、全編「ギェアアーン!」に統一されているのだが、文字では表しにくいあの泣き声を、中々上手く表現していて面白い。

鎖を引きちぎって暴れ出すゴジラ!

滝口アキラ

護衛のヘリも、次々と放射能火炎のえじきになって行く。

人類の予想など役に立たないゴジラの生命力!

滝口アキラ

やっと目的地に着いたタンカー!

ついに海溝の上に着いた!江戸川助教授の合図でタンカーが爆破される。

滝口アキラ

ついにゴジラの最後?

炎に包まれて最後の泣き声を上げるゴジラ。

ゴジラを乗せたままタンカーは大爆発!

滝口アキラ

何とも言えない深い余韻を残すラストシーンだ。

タンカーの残骸と共に、日本海溝の奥底へと沈んで行くゴジラの姿。

滝口アキラ

最後に

ご覧頂いた様に、安易に超兵器やライバル怪獣を登場させること無く、あくまでも生身の人間たちの知恵と工夫により、ついにゴジラを撃退する!という展開は、まさに昨年の「シンゴジラ」を37年前に先取りしていた、と断言できる。

思えば、科学を過信した人類の行動が、ゴジラという「怒れる自然の象徴」を呼び覚まし、自分たちに危機をもたらすという点は、まさに初期ゴジラ映画の重要なテーマだった。ここを忘れずに描いているだけでも、本作の完成度と志の高さがお分かり頂けるはずだ。
だが、この時期にこうした優れたオリジナル作品が発表されていたにも関わらず、この後に製作された「1984年版ゴジラ」には、これらのアイディアがあまり生かされていない。
「1984年版ゴジラ」の次の作品である「ゴジラ対ビオランテ」には、この漫画版にあったテイストがわずかに感じられるのだが、個人的には未だにこの「エネルギー大作戦」を実写化してくれていたら、との想いが消えずにいる。

残念なのは、映画のコミカライズ版に限らず、この手の作品は後に単行本化されることも無いため、多くの場合は雑誌を入手して読まなければならない、ということだ。
幸い、昨年より刊行されている「ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX」には、当時雑誌掲載されていたコミカライズ版の復刻が、毎号付録として付いているので、この「エネルギー大作戦」と前作に当たる「東京大襲来」も、出来れば何らかの形で付録として復刻して頂きたいものだ。

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