ウディ・アレンの傑作『マンハッタン』は、大人の恋愛映画の教科書である、たぶん。

ウディ・アレンの傑作『マンハッタン』は、大人の恋愛映画の教科書である、たぶん。

なんとも美しい映画なのだ。オープニング、クイーンズボロー・ブリッジのシーン、ラストシーン・・・どこをとっても良い。内容的には、大人の恋愛事情が下世話な部分もあるが、モノクロ映像がそんなところも解消してくれている。『アニー・ホール』と双璧の傑作『マンハッタン』は、大人の恋愛映画の教科書と言ってもいい、たぶん。


オープニングを観れば、この映画が好きか否か判断できるんじゃなかろうか。

 ある映画を紹介しようとするときに、こんな紹介の仕方もあんまりかもしれないけれども、ウディ・アレンの映画は生理的に受け付ける人とそうでない人ははっきり分かれると思う。というよりも、ウディ・アレンの顔が嫌いなら、もう観る必要はない。だって、あの顔(どの顔?)で、なんか小難しいことを喋くり倒して、女性にもてる役って、あんまり爽やかではないでしょう。
 新橋やそこらのサラリーマン街に行けば歩いているような日本人的(一昔前のステレオタイプ的イメージだが)なウディ・アレンの容貌(身長が低くてメガネ)をわざわざ自分の貴重な時間を使って観たくないと思うのも至極真っ当な話だと思う。できれば、ブラット・ピットの美しいお顔を自分の麗しき時間のお供にしたいと思っても別段間違っていないのだ。
 ということで、まずは、オープニング映像から。アメリカ好きなら、ニューヨーク好きなら、マンハッタン好きなら、似非知識人文化人志向なら、気に入るかもしれない(し、そうでもないかもしれない)。まずは観て判断してほしい。

ちなみに、オープニングでニューヨークの街並みとともに語られているのは・・・。

「第1章 彼はN.Y.を愛し偶像化していた」
訂正
「ロマンチックに考えていた」
「彼にとって街は常に黒と白の存在であり
ガーシュインの曲だった」
あー、もう一度
「第1章」 
「彼はマンハッタンに惚れていた」
「街の雑踏で育ったのだ」
「N.Y.は美しい女であり世慣れた男だった」
陳腐だ もっと深みがほしい
「第1章」 
「N.Y.は彼にとって現代文化の腐敗の暗示であり」
「誠実さの欠如から人は安易に流れ 彼の理想の街を」
説教くさくて本が売れん
「第1章」 
「N.Y.は彼にとって現代文化の腐敗の暗示であり」
「麻薬とテレビと犯罪とゴミの街で」
「生き難くとも」
憤慨しすぎだ
「第1章」 
「彼はタフでロマンチックだった」
「メガネの奥には山猫の精力がみなぎり」
いいぞ
「N.Y.は彼の永遠の都だった」


・・・というわけで、主人公が自分の本の冒頭を語っている。
何度も書き直している体(てい)で。なんとも面白い。
そう思えたら、続きに進んでください。

『マンハッタン』はウディ・アレン監督1,2位を争う高い評価の作品なのだ!

 続きに進めたのなら、ここで『マンハッタン』がウディ・アレン作品の中でどういう位置づけの作品かを確認しよう。ひとつは、アメリカの「エンターテインメント・ウィークリー」誌がアレン監督作ベスト10を選出したもの。もうひとつは、フランスの映画情報サイト「PREMIERE」によるユーザーお気に入りのウッディ・アレン監督作品だ。
 いずれのランキングを見ても『マンハッタン』が高い人気を誇っているのがわかる。

アメリカ「エンターテインメント・ウィークリー」誌ベスト10

第1位 『アニー・ホール』(1977)
第2位 『マンハッタン』(1979)
第3位 『マッチポイント」(2005)
第4位 『ウディ・アレンのバナナ」(1971)
第5位 『カイロの紫のバラ』(1985)
第6位 『ハンナとその姉妹』(1986)
第7位 『スリーパー』(1973)
第8位 『ウディ・アレンの重罪と軽罪』(1989)
第9位 『どうしたんだい、タイガー・リリー? 』(1966)
第10位 『カメレオンマン』(1983)

フランスの映画情報サイト「PREMIERE」ユーザーによるベスト5

第1位 『マンハッタン』(1979)
第2位 『アニー・ホール』(1977)
第3位 『マッチポイント」(2005)
第4位 『カイロの紫のバラ』(1985)
第5位 『ハンナとその姉妹』(1986)

ちなみに、ウディ・アレン自身が選ぶ自作ベスト6は・・・

 ウディ・アレン監督自身も自作映画のベストを語っている。なぜ6作品なのかはわからないけど。
「カメレオンマン」(83)「カイロの紫のバラ」(85)
「夫たち、妻たち」(92)「ブロードウェイと銃弾」(94)
「マッチポイント」(05)「それでも恋するバルセロナ」(08)

イギリスの「タイムズ」誌のインタビューによれば、多くの自作について満足しているかと聞かれ、即座に「ノー」と答えたとか。さらに、こんなことを言っている。
「40作品中30本が傑作で、あとは8本の崇高な失敗作と、2本の汚点。そのぐらいの配分であってしかるべきだったが、そうはならなかった。どれも映画界の標準からすればそこそこ楽しめる作品だったかもしれないが、黒澤やベルイマン、フェリーニ、ブニュエル、トリュフォーといった人たちの映画を見たあとに私の映画を見るといい。(中略)ある程度の年齢になると、人は自分の凡庸さを認めざるをえないものだ」
 長年、世界中の多くの映画ファンを楽しませてきたウディ・アレンにして、この自己評価の低さは驚きではある。なんとも自分に厳しい人だとは思うが、その厳しさというか、それゆえの自信のなさ(?)があるからこそ、年齢を重ねてもなお映画を撮り続けようという意欲につながるのかもしれない。

『マンハッタン』・・・その物語

 舞台は、ニューヨーク。
 テレビの放送作家アイザックは42歳ながら17歳の高校生トレーシーと付き合っていて、今夜もニューヨークの混み合うバーで友人の大学教授エールとその妻エミリーと4人で芸術論なるものに花を咲かせている。いやそうでもない、離婚した妻の暴露本の心配をしている。そんなシーンから始まり、次の日にトレーシーが試験があるということで帰ることになり、その帰り道、アイザックはエールから付き合っている女がいると告白される。現在の日本なら、淫行に不倫で完全アウトの設定で始まるが、舞台は1970年代のニューヨークである。さらにモノクロ映像。なんともオシャレなのだ。

アイザックは、「僕の特異体質や奇行まで公開する」と言いながら二番目の妻の暴露本を心配する。

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