ポストパンクを代表する伝説のバンドにして、孤独と絶望のかたまりのようなジョイ・ディヴィジョンの魅力

ポストパンクを代表する伝説のバンドにして、孤独と絶望のかたまりのようなジョイ・ディヴィジョンの魅力

パンク以降のUKロックシーンの方向性を決定し、今なおリスペクトされ続ける伝説のバンド、ジョイ・ディヴィジョン。ボーカリストの首つり自殺という突然の悲劇により活動停止を余儀なきされますが、彼等の作り上げた音楽の影響は絶大です。僅か2枚のオリジナル・アルバムに込められた孤独と絶望で出来た音楽をご紹介します。


Joy Division

出身地:イングランド マンチェスター 
ジャンル:ポストパンク 
活動期間:1976年~1980年

写真右から:バーナード・アルブレヒト、イアン・カーティス、ピーター・フック、スティーヴン・モリス

ジョイ・ディヴィジョン

ジョイ・ディヴィジョンの活動期間は短い。僅か4年。デビュー・アルバムをリリースしてからは2年程しか活動していません。ボーカリストの首つり自殺という悲劇が起こり解散を余儀なくされたのです。
それでもイギリスにおいてはその影響力は強く、今でも多くのフォロワーを生み出し続けており忘れられることはありません。

メンバーはボーカルのイアン・カーティス (Ian Curtis)、ギターのバーナード・アルブレヒト (Bernard Albrecht)、ベースがピーター・フック (Peter Hook) 、そしてドラムスのスティーヴン・モリス (Stephen Morris) の4人です。ギターのバーナード・アルブレヒトは、後にバーナード・サムナーと名前を変えます。

ジョイ・ディヴィジョンは1976年、マンチェスターで活動を開始しますが、70年代後半にマンチェスターで音楽活動を開始したミュージシャンには、1976年6月4日にマンチェスターのフリー・トレード・ホールで行われたセックス・ピストルズのライブに影響を受けた人たちが多くいます。

会場には観客がわずかに42人しかいなかったそうですが、その中にザ・スミスを結成するモリッシー、当時はまだ学生だったシンプリー・レッドのミック・ハックネル、バズコックスのピート・シェリーやホワード・デヴォート、ファクトリー・レーベル社長となるトニー・ウィルソン、そしてイアン・カーティス、バーナード・サムナー、ピーター・フックの3人がいました。

出生名
Ian Kevin Curtis
イアン・ケヴィン・カーティス 

生誕
1956年7月15日 

出身地:イングランド チェシャー州(現グレーター・マンチェスター)マクルズフィールド 
死没:1980年5月18日(満23歳没) 
担当楽器:ボーカル、ギター、鍵盤ハーモニカ、シンセサイザー 
活動期間:1976年~1980年

イアン・カーティス

ジョイ・ディヴィジョンを語るうえで欠かせないのが、ボーカルを担当したイアン・カーティスの存在です。重く沈み込む歌声と特徴的なライブパフォーマンスに加え、絶望や孤独と言った内省的な歌詞が多くの人々の心を捉えました。

イアン・カーティスの半生を描いた映画「コントロール」が2007年に公開されています。監督はジョイ・ディヴィジョンとのかかわりも深いカメラマンのアントン・コービンで、本作は氏の監督デビュー作です。
この作品は、英国インディペンデント映画賞で最優秀作品、最優秀監督賞、監督デビュー賞、最優秀新人賞、助演男優賞を受賞しています。

CONTROL
Anton Corbijn
白黒119min

コントロール

Warsaw

バンドは当初、バーナード・サムナー、ピーター・フックがやっていたスティフ・キトゥンズ(Stiff Kittens)からはじまります。ボーカリストとしてイアン・カーティスが加わったのを機に、デヴィッド・ボウイのアルバム「ロウ」の中に収録されている同名の曲からとって「ワルシャワ (Warsaw)」と変更します。
但し、当時のドラムスはスティーヴン・モリスではなく、スティーブ・ブラザーデール(Steve Brotherdale)です。

収録曲

  1. The Drawback
  2. Leaders Of Men
  3. They Walked In Line
  4. Failures
  5. Novelty
  6. No Love Lost
  7. Transmission
  8. Living In The Ice Age
  9. Interzone
  10. Warsaw
  11. Shadowplay
  12. As You Said
  13. Inside The Line
  14. Gutz
  15. At A Later Date
  16. The Kill
  17. You're No Good For Me

Warsaw

Warsawとして最初のデモテープの録音が1977年7月18日に行われました。後にジョイ・ディヴィジョンとして発表される曲もあり興味深いのですが、ジョイ・ディヴィジョンらしさはまだあまり感じられません。むしろパンク・バンドとしての魅力がありますが、それとて個性には欠けるといったところです。

Warsawの音源は当時は正式にリリースされていませんでしたので、ブートレッグでしか聴くことの出来なかったのですが、現在では1枚のアルバムにまとめられています。

収録されている後半の5曲が当時の録音で、残りはジョイ・ディヴィジョンとバンド名を変更後の78年5月にデビュー・アルバム用のデモ・トラックとして録音されたものです。

Unknown Pleasures

収録曲

  1. ディスオーダー
  2. デイ・オブ・ザ・ローズ
  3. キャンディデイト
  4. インサイト
  5. ニュー・ドーン・フェイズ
  6. シーズ・ロスト・コントロール
  7. シャドウプレイ
  8. ウィルダネス
  9. インターゾーン
10. アイ・リメンバー・ナッシング

アンノウン・プレジャーズ

Warsawは当時同名のバンドが他にも存在したため、1978年1月からジョイ・ディヴィジョンと名乗るようになり、1979年6月15日にファースト・アルバムが「アンノウン・プレジャーズ」をリリースします。

ポストパンクの代表的作品である「アンノウン・プレジャーズ」は、プロデュースをマーティン・ハネットが担当。有名なアルバムジャケットには、初めて発見されたパルサーであるPSR B1919+21(旧名:CP 1919)の波形が使われており、デザイナーのまたピーター・サヴィルも一躍有名になりました。

シングル曲はアルバムには収録しないというポリシーのため、残念ながらファースト・シングル「トランスミッション」は収録されていませんが、この曲はジョイ・ディヴィジョンにしてはかなりポップであり、パンク・バンドの持つ疾走感が感じられます。
「アンノウン・プレジャーズ」はポストパンクのサウンドが構築され、しかも既に完成されていますので、「トランスミッション」を収録してしまうとアルバムとしてのバランスが崩れてしまうということもあるのでしょうね。

それにしてもこのアルバムに漂う張りつめた緊張感は尋常ではありません。先のデモテープと比較すると劇的に変化していますから、プロデューサーのマーティン・ハネットの功績が大きかったと言えそうです。

「アンノウン・プレジャーズ」が音楽雑誌等で絶賛されたことからライヴは増え、レコーディングが急増します。しかし、このハードワークの日々にイアン・カーティスの体と精神は悲鳴をあげてしまいます。持病のてんかんは悪化し、鬱病にも悩まされるようになりました。
そして、イベントで知り合った女性と恋に落ちたことで、既に妻子があったイアン・カーティスは精神的にも肉体的にも更に追い詰められていくことになります。

Closer

収録曲

  1. アトロシティ・エクシビジョン
  2. アイソレイション
  3. パスオーヴァー
  4. コロニー
  5. エイ・ミーンズ・トゥ・アン・エンド
  6. ハート・アンド・ソウル
  7. 24 アワーズ
  8. ジ・エターナル
  9. デケイズ

クローサー

1980年はジョイ・ディヴィジョンにとって輝かしい年と成るはずでした。1月にヨーロッパ・ツアー、2月にイギリス・ツアーを成功させ、3月にはセカンド・アルバム「クローサー」のレコーディングを終え、4月には、シングル「ラブ・ウィル・テア・アス・アパート」をリリースしています。この曲はジョイ・ディヴィジョンにとって最大のヒット曲となり、5月から初のアメリカ・ツアーも決定し、何もかもが上手くいきかけた5月18日にイアン・カーティスは首つり自殺をしてしまいます。
僅か23歳、アメリカ・ツアー出発の前日のことでした。

ファースト・アルバム以上の完成度を持って既に録音を終えていたセカンド・アルバム「クローサー」は、イアン・カーティスの死後1980年7月にリリースされました。
関係者の悲しみを表したようなピーター・サヴィルの秀逸なアートワークも印象的です。

ヴォーカリストを失ってしまったジョイ・ディヴィジョンは全米ツアーをキャンセルし、全ての活動を停止しします。そして、結成当初からの決め事であった「メンバーがひとりでも欠けたらジョイ・ディヴィジョンの名前でバンド活動は行わない」という約束に従い残されたメンバーはジョイ・ディヴィジョンに終止符を打ち、ニュー・オーダーとして再スタートし、今日ではイギリスを代表する国民的バンドとなっています。

イアン・カーティスの死後に作られた、如何にもジョイ・ディヴィジョンらしい透明感のある名曲「アトモスフィア」のビデオをアントン・コービンが制作していますが、これがとても素晴らしい仕上がりで、イアン・カーティスを慈しむように、ジョイ・ディヴィジョンに関わった人々の悲しみが表現されています。

残されたメンバーは、「イアン・カーティスの死を売り物にしない」というコメントを発表しています。

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