名優・伊武雅刀のソロデビューシングル『子供達を責めないで』
「宇宙戦艦ヤマト」デスラー総統の声優を務めて知名度を高め、「スネークマンショー」により怪優の印象を不動のものにした伊武雅刀。
若き日の伊武雅刀は1983年に異色のソロシングルをリリースしている。
歌というよりド迫力の演説といった感じの『子供達を責めないで』について紹介していく。

伊武雅刀(いぶ まさとう)

伊武雅刀『子供達を責めないで』
【動画】伊武雅刀『子供達を責めないで』
刺激的な歌詞であるが、テレビ番組ではフジテレビ系の『夜のヒットスタジオ』と『オレたちひょうきん族』のコーナー「ひょうきんベストテン」にて披露された。
配慮のせいか『夜のヒットスタジオ』での歌詞は一部が本来のものと異なっているという。
原曲はサミー・デイヴィスJr.の同名曲『Don't blame the children』
『子供達を責めないで』は原曲が存在しており、サミー・デイヴィスJr.が歌った『Don't blame the children』である。
こちらも同様に演説ソングであったが、詞の内容は「子供達が犯罪を犯してしまうのは、我々大人達にも原因があるのではないか」というメッセージであった。
秋元康による絶妙な訳詞で生まれ変わった『子供達を責めないで』
『Don't blame the children』の訳詞を依頼された秋元康は、原詞を直訳したのではひねりがないとあえて逆説的な詞にしたという。
子供達を責めないで - 伊武雅刀 - 歌詞 : 歌ネット
ちょっとしたことで炎上してしまう現在、こんな歌をテレビで歌ったら大クレーム間違いなしである。
「この世の中から子供がひとりもいなくなってくれたら」なんてフレーズには歌とはいえそんなこと口にしていいのかとドキドキさせられる。
当時においてもこの刺激的な歌詞は議論され、発売元であるCBSソニーは発売前に試聴会を開いてアンケート調査を行ったという。
『子供達を責めないで』というタイトルなのに子供を責めた歌詞になっているのは、「子供は嫌いだ」と叫ぶ大人が一番子供っぽくて滑稽である、だから子供たちを責めてはいけないよという秋元康らしいメッセージであったのではないか。
そんな身勝手で滑稽な大人をもっとも表しているフレーズがこちら。
なお、歌詞に出てくる子供のモデルは小さい頃の秋元自身だという。
子供ならではの「あるある」が圧倒的なボリュームで全編に散りばめらており、秋元康の洞察力の鋭さに恐れ入る。
天才・秋元康によるこの訳詞は怪優・伊武雅刀の演技力によって人々に衝撃を与えた。
子供を責めた歌詞なのに、小中学生を中心に受け入れられオリコン最高21位を記録し累計で30万枚以上のヒットになった。
『子供達を責めないで』で本当に責めていたものは…
2008年、『子供達を責めないで』などを含む、伊武雅刀による歌を集めたアルバム『伊武のすべて』が発売された。
このライナーノーツにて、伊武雅刀は1983年の発売当時に『子供達を責めないで』を聴いていたかつての子供たちに向けて興味深い言葉を残している。
1980年代前半、第二次ベビーブーム世代(団塊ジュニア世代)の子供たちが町に溢れて活気に包まれていた。
しかし、出生率はどんどん下がり2016年に国内で生まれた赤ちゃんは100万人を下回り、第二次ベビーブーム時の半分以下となってしまった。
少子化により、子供は従来にも増して貴重な存在になっている。
にもかかわらず保育園の騒音や、電車内のベビーカーなど子供に対して冷たい意見は無くならない。
そんな現代だからこそ、多くのオトナにこの『子供達を責めないで』を聴いて欲しい。
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