競馬場をライブ会場に変えた「アイネスフウジン」劇場

競馬場をライブ会場に変えた「アイネスフウジン」劇場

GⅠレースの際、ファンファーレに合わせて手拍子をしたり、勝ち馬や勝利騎手に対してコールをするのは、日本独自の競馬文化と言っていいでしょう。その文化が生まれた瞬間があります。その始まりとは1990年の日本ダービー。アイネスフウジンと中野栄治騎手が作り上げた伝説について話していきましょう。


アイネスフウジンの軌跡

アイネスフウジンは1989年の9月に中山競馬場でデビューしました。3戦目の未勝利戦を勝ちあがると次走4戦目に選んだレースはGⅠ朝日杯。

京成杯の勝ち馬サクラサエズリが1F10秒台のハイペースで逃げる。それにピッタリ付いていくアイネスフウジン。そのまま2頭が後続を引き離したまま1000mを56秒9の超ハイペースで通過し最後の直線へ。最後の坂でなんとかサクラサエズリを振り切ってアイネスフウジンがゴールしたタイムが驚愕の1分34秒4。怪物マルゼンスキーが叩き出したレコードタイムと同タイムでした。

誰もが破られることはないと思っていた記録に手が届いた瞬間、アイネスフウジンの快速伝説は始まったのかもしれません。

その後年明けの共同通信杯を勝つも、クラシック初戦の皐月賞で不利もあって惜敗。
それだけに2歳チャンピオンとして、またここ数年、年間10勝できるかどうかの、周囲からもう終わったと思われていたベテラン中野騎手としても、ダービーにかける思いはひとしおだったでしょう。

皐月賞はハクタイセイに惜敗

「もしも馬券が買えるなら、借金してでも1番人気にしてやりたい」と周囲に話していたほどの情熱を傾け、ダービーに勝つための戦略を練った結果、あの平均的にずっと早いペースで逃げて、他馬のスタミナを消耗させるという戦法を選んだのでした。
まさに賞賛に値する騎乗と言えるでしょう。

そしてなかなかウィニングランで戻ってこなかったのには理由があります。
アイネスフウジンが力を出し切って、疲れきってしまい、息を整えるのに時間が必要だったのだそうです。全精力を尽くしてつかみ取った栄冠だったのですね。

アイネスフウジンの血統配合

アイネスフウジンの父シーホークはアイルランド産で、フランスの2400mのGⅠサンクルー賞の勝ち馬。父系を遡ると大種牡馬サンインロウやハンプトンに至る、スタミナ豊富なステイヤー種牡馬です。代表産駒には天皇賞や宝塚記念を勝ったモンテプリンスや、同じく天皇賞馬のモンテファスト、ダービー馬のウィナーズサークルなどがいます。

母 テスコパール

母の父はトウショウボーイやサクラユタカオーなどの父としても知られる、スピードと成長力豊かなテスコボーイ。
5代血統表でみると、テスコボーイの部分だけスピードが入ってますが、他全体がスタミナ血脈で固められた、スタミナ豊富な馬だったことが判ります。

正直この血統でマイルの朝日杯を、あのマルゼンスキーと同タイムの1分34秒4で走りきるのは驚きですが、これもテスコボーイのスピードをうまく活かした配合の賜物でしょうし、ダービーを当時のレコードタイムでに逃げ切ったのは、そのスピードを持続させるスタミナ勝負に持っていった戦略の巧みさと、アイネスフウジン自身の総合力の高さの証明と言えるでしょう。

種牡馬としてのアイネスフウジン

ダービー後に屈腱炎を発症し、引退したアイネスフウジンは種牡馬になりますが、そのスタミナ偏重型の血統が災いしたのか、あまり良い成績をあげられませんでした。

そんな中でも芝の短距離路線で活躍したイサミサクラや、ダートの交流重賞を勝ちまくったファストフレンドなどの優秀な牝馬を輩出。特にファストフレンドは帝王賞と東京大章典の2つのGⅠタイトルを取り、砂の女王として君臨した事は記憶にある方もおられるでしょう。

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