スティーヴ・バロン監督とは

STEVE BARRON
The Human League – "Don't You Want Me" (1981)
ヒューマン・リーグ最大のヒット曲ですが、全英・全米ともにチャートで1位を獲得出来た背景には、バロン監督によるこのビデオの影響も大きかったと言えるでしょう。
コストのかかる35mmフィルムで撮影することによって、まるで映画のようなクオリティの引き込まれる映像となってますね。フランス映画『Day for Night』にインスパイアされたというだけあって、オシャレな出来栄え!つい見入ってしまいます。
このビデオの評判が非常に良かったので、バロン監督は他のアーティストから続々と声がかかるようになったようですね~
Toto – "Rosanna" (1982)
全米最高2位のヒットとなり、グラミー賞も獲得したトトのヒット曲。このビデオでは、ダンサーたちがウエストサイド・ストーリーのような踊りを披露するのですが、マイケル・ジャクソン「今夜はビートイット」のPVよりも先に、バロン監督はそのアイデアを実践していたのです!ちなみにリード・ダンサーのシンシア・ローズと、あまり目立ってはいませんが男性陣の中にいるパトリック・スウェイズは、後に大ヒット映画『ダーティ・ダンシング』で共演することになります。
Michael Jackson – "Billie Jean" (1983)
前述のヒューマン・リーグのPVを見て気に入ったマイケル・ジャクソンは、スティーヴ・バロンにこのPVの監督をオファー。結果、MTVの歴史、音楽業界の歴史を変える傑作ビデオを創り出したのです!
当時まだ根強く残っていた人種差別のため、MTVでは黒人ミュージシャンのPVが流れることはなかったのですが、大手レコード会社CBSの社長自ら、「ビリー・ジーンのPVを流さないなら、他のCBSアーティスト全てのPVを引き上げるぞ」と、MTVを脅したというのです。それほどの覚悟でプッシュした結果、視聴者の支持を集め、MTVでもヘビーローテーションされるヒットに!これをきっかけに、黒人ミュージシャンのPVが自由に流れるようになったのでした。
このビデオは、マイケルが私立探偵(パパラッチ?)に追いかけられながらも、写真には写ることもなく、うまく逃げるという内容。ホントはもっと大人数でダンスするアイデアもあったそうですが、残念ながら予算の問題などがあったようで、断念することに。ここではマイケル一人での華麗なステップ、ダンスを楽しむことが出来ますが、それがあまりに素晴らしかったので、バロン監督は興奮しすぎて、ビデオカメラのレンズが熱気で曇ってしまったとの逸話も残っています。
そして、この「ビリー・ジーン」の成功により、バロン監督はさらに引っ張りだことなるのです!
Madonna – "Burning Up" (1983)
80年代、マイケルとともに時代を牽引したマドンナのPVの中にも、バロン監督作品がありますね!この曲はマドンナにとってはマイナー・ヒットにすぎませんでしたが、彼女のセクシーなイメージを最初に引き出した作品として、評価の高いビデオです。
バロン監督がマドンナに最初に会ったとき、彼女は無礼にも(?)テーブルに頭を乗せて話していたというのですが、それを見たバロンは、道路に寝転がっているマドンナを低いアングルから撮る、というアイデアを思いついたそうです。
これをきっかけに、80年代のセックス・シンボルとしての階段を駆け上っていったと言っても過言ではない、初期マドンナの魅力が詰まったビデオですね!
Bryan Adams – "Run to You" (1984)
全米最高6位を記録した、ブライアン・アダムスの代名詞とも言えるヒット曲。このビデオは、MTVビデオ・ミュージック・アワードで5部門にノミネートされるなど、評価の高い作品となりました!
猛吹雪や、落雷で木が燃えるなど、特殊効果も満載で、かなり大がかりな映像が印象的なのですが、ブライアン自身はこの撮影が怖かったらしく、世間の評価とは逆に、このPVのことを本人は嫌っているのだとか。
ちなみにこのビデオに登場する女性は、同じくブライアンの楽曲「Heaven」のPVにも登場し、この2つのPVはつながっているストーリーのようにも見えます。そういう意味でも、大がかりな作品ですね!
※「Heaven」のPVは2種類あり、その女性が出演するヴァージョンはバロン監督ではありません
Dire Straits – "Money for Nothing" (1985)
アメリカで売れるためには、どうしたらいいか?バンドのマネジャーがMTVに相談したところ、「売れる曲を書いて、売れっ子監督にPVを制作してもらいなさい」とアドバイスされ、このヒット曲が生まれたのです!バンドの中心人物であるマーク・ノップラーがPV嫌いだったので、このPVの制作も難航したそうですが、理解あるマークの彼女が後押ししてくれたおかげで、なんとかマークもOKしたのだとか(笑)。
バロン監督は、当時最先端のコンピューター・グラフィックスを駆使し、インパクトのあるPVを制作。見事、全米1位の大ヒットとなり、MTVビデオミュージック・アワードも受賞。MTVを皮肉った歌詞ながら、「I want my MTV」と連呼する歌詞は、逆にMTVの宣伝にもなったという、バンドとMTVの双方にメリットのあるヒットとなったのでした~
a-ha – "Take on Me" (1985)
バロン監督作品の中で、おそらく1、2、を争うほど有名なのが、このPVでしょう!全米1位のヒットとなったのはもちろんのこと、MTVビデオミュージック・アワードでは6部門を受賞!
カフェでコミックを読んでいた少女が、そのコミックの世界に引きずり込まれてしまい、鉛筆で書かれたタッチの二次元の世界と、実写による三次元の世界が、交錯するという不思議な作品。当時はとにかく斬新で、インパクトありましたよね~。 人の動きをカメラで撮影して、それをトレースしてアニメ化するという手間のかかる手法で、完成までに16週間かかったのだとか!
実はこの曲、1984年にUKでリリースして全く売れなかったのですが、翌1985年に再レコーディングして、改めてリリースしたところ、大ヒットしたのです!わざわざ新たに時間とコストをかけて、こんなにも強力なビデオをバロン監督に撮らせたのだから、レコード会社の絶対売る!という執念を感じますね。逆に言うと、このPVがあったからこそ、売れたとも言えるでしょう。
ZZ Top – "Rough Boy" (1986)
バロン監督、遂に宇宙を舞台に!まるでSF映画のような凝ったセットで、いかにコストをかけて作られていたのかが分かる、贅沢なビデオです!
宇宙船アフターバーナーを収容し、洗浄する宇宙ステーション。ZZトップのメンバーの、顔や手などが宙に浮いているような演出も、当時は斬新でした!また、彼らの代表曲「Legs」を想起させるような、女性の足が登場したり(笑)というのも、いかにもZZトップらしいですね。
このPVも、MTVビデオミュージック・アワードを受賞した傑作です。
Culture Club – "God Thank You Woman" (1986)
第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンを代表するカルチャー・クラブのPVにも、バロン監督作品があります。フロントマンのボーイ・ジョージの中性的な化粧やファッションがとにかく華やかなので、斬新で面白いPVが数多くあるバンドです。
このビデオでは、一見普通にバンドが演奏しているだけなのですが、そこにブリジット・バルドーやソフィア・ローレンなど、ゴージャスな女優たちが踊りながら近寄ってくるという奇抜な演出が!よく見ると、挿入している女性たちの映像処理が雑な感は否めませんが、当時はこれが最先端の技術だったのでしょう。今なら、もっとキレイに挿入できるのでしょうが、当時このようなチャレンジをしていたバロン監督、さすがです!
David Bowie – "Underground" (1986)
デヴィッド・ボウイ本人が出演した映画『ラビリンス』の挿入歌であるこの曲のPVも、スティーヴ・バロン監督でした。ボウイ本人は、このPVは気に入っていなかったそうですが、なかなか面白い内容なのです!
映画のキャラクターなども登場するのですが、途中のアニメーションは、前述のa-ha「テイク・オン・ミー」のようでもあり、バロン監督ならではの演出が多々見受けられます。また、ジギーやシン・ホワイト・デュークなど、それまでのボウイの歴史をフラッシュバックするような映像もあったりするのが見どころでしょうか。
おまけ
ミュージック・ビデオで実績を上げたこともあり、その後は映画の監督としても成功してます。
以上、時代を変えたともいえる、スティーヴ・バロン監督が手掛けたPV作品をご紹介してみましたが、いかがでしたか?他にも多数ありますので、ぜひ探してご覧になってみてください!