始まりはただの電子音
ゲームのBGM(バックグラウンドミュージック)。
その歴史を振り返れば、黎明期はただの電子音やビープ音で作られた短いメロディから始まって、のちには鑑賞用に製作された他の音楽と変わらないレベルのものにまで昇華しました。
1980~90年代は、パソコンやファミコンはじめとした家庭用ゲーム機で用いられた音声処理チップ(PSG、FM音源、波形メモリ音源、SIDなど)を制御演奏したものが主流でしたが、2000年前後を境にCD-DAやPCMによるストリーム再生方式が主流となっていきます。
私たちが子供のころ、と考えればいまでも耳に残っているのはPSGやFM音源、PCM音源あたりかもしれません。
1970年代のゲームサウンド
ゲームスタート時に流れるBGMで初めて有名になったゲームは、Exidy社が1977年に発表した「サーカス」とされています。
この頃はゲームの動きと演奏を両方処理することが出来ず、演奏時には画面の動きが止まっていました。
70年代のゲームといえば、空前のヒットとなった「スペースインベーダー」ですが、それとても音楽と呼べるものはありませんでした。
しかし多数作られたコピーゲームの内、任天堂レジャーシステムの「スペースフィーバー」などではBGMが鳴っていました。
この頃は、ただ音が鳴っていることにテンションが高まる時代でしたね。
1980年代前半のゲームサウンド
1980年代、PSG(Programmable Sound Generator)など音源上で和音の生成が出来るようになり、数多くのゲームBGMが登場します。
本格的なゲームBGMが登場したのは1980年代初期、ナムコの「ラリーX」でした。
こちらはその改良作「ニューラリーX」で奏でられた2和音の旋律を、耳にした記憶がある方も多いことでしょう。
和音の旋律に酔いしれた、そんな時代でした
また、「ドンキーコング(任天堂)」の「ハンマーのテーマ」は初期のゲームBGMとして有名です。
1983年にはファミコンの登場でゲームBGMが広く浸透することに。
翌84年にはYMO細野晴臣プロデュースのアルバム「ビデオ・ゲーム・ミュージック」で、名作「ゼビウス」などのゲームミュージックが初めてレコードとしてリリース。
今までゲームをプレイしている時だけしか聴けなかったゲームBGMを単体の音源として楽しむことが可能になり、ゲームのサウンドトラック市場が形成され始めました。
1985年、「戦場の狼」を皮切りにFM音源がアーケードゲーム機に取り入れられ、音源チップ演奏における表現の幅が格段に高まります。
FM音源は1980年代の音楽やゲームサウンドに取り入れられ、当時を象徴するサウンドと評されました。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
1980年代後半~1990年代前半のゲームサウンド
FM音源やPCMなど、様々な音源が登場
技術の発展に伴って様々な音声処理系が登場した時期で、なかでも正弦波を基に乗算を含めた複雑な演算で波形を合成するFM音源や、任意の波形を使用できるPCMが主役を担っていました。
FM音源は1984年から1985年にかけてNECの8ビットパソコン(SRシリーズ)で採用され、家庭用ゲーム機ではセガ・マスターシステムで初めて標準搭載(セガ・マークIIIでも別売りのFMサウンドユニットを装備することでFM音源を鳴らす事が可能)。
以降、多岐にわたるパソコン・家庭用ゲーム機の主流音源となりました。
80~90年代のゲームはサウンド(BGM)が秀逸!FM音源はじめ、ゲーム観を高めるのに欠かせなかったBGMについて。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
ファミコンのディスクシステムにはPWM音源、MSX向けにコナミが開発したSCC音源
コナミがMSX向けに開発したSCC音源はFM音源にも負けない!PSG音源に甘んじていたMSXユーザーに希望を与えてくれました。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
音源性能やサウンドプログラマの技量がサウンドの質に反映される時代
PCM音源は記憶容量・処理速度的に本格的な実用段階に達したのがこの時代でした。
同時発音数も増加し、こうした高性能な音源によって音の自由度が格段に向上、ピアノやトランペット等実際の楽器に近い音を出すことも可能になりました。
とは言え、当時はまだ発展途上の部分も多く、そのためこれら新音源と従来のPSGの組み合わせで各々の弱点をカバーし合う処理系なども多く見られることに。
いまでも非常に評価の高いスーパーファミコン「アクトレイザー」
80年代後半から第一線を走り続けるゲーム音楽作曲家『古代祐三』 - Middle Edge(ミドルエッジ)
音源構成はゲームセンターで聴き取れる音にも大きく変化を与えます。
FM音源は金属的な音を発音可能ですが多用すると曲全体の中域が薄くなること。
またPCMで人声を発音させる使い方も増え、「人声を目立たせBGMは脇役に回る」音響手法がカプコン「ストリートファイターII」の大ヒット以降対戦格闘ゲームを中心に多用され、それとともに業務用ゲームでのBGMの多くは影が薄れていくことに。
ストリートファイターⅡは対戦格闘ゲームの常識を変えてしまった!その後の格ゲーの流れを決定づけたスト2(ストリートファイターⅡ)を振り返る。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
1990年代後半~2000年代のゲームサウンド
セガサターン、プレイステーションの頃から、次第にディスクメディアが主流に。
メディアの大容量化、ハードの高性能化により、「限られた音色で多くの曲を鳴らす」という制約が大幅に緩和され、さまざまなジャンルの音楽がBGMとして取り入れられるようになりました。
また、録音済みの音楽をストリーミングで流すという方法もしばしば登場するようになり、ゲームBGMは鑑賞用に販売されている通常の音楽CDと同等の品質を獲得するに至り、21世紀初頭現在の主なゲーム機の音声処理系はPCM系の録音済み波形を用いる方式が主流になっています。
「音楽自体をゲームにする」という発想も登場
音ゲーはビートマニアから始まった! - Middle Edge(ミドルエッジ)
2000年代になると音楽レーベルによる過去のゲームBGMの再録盤の発売、愛好家による自主録音音源の動画サイトへのアップロード、1990年代まで主流だったチップ音源を自由な解釈で演奏するチップチューンブームなどが生じています。
「幼い頃好きだったあのゲームを、好きだった音源で奏でてみたら」といった感じですね。