邦画実写映画の新たな流れを作った『踊る大捜査線 THE MOVIE』
『踊る』が映画化された1998年ごろ、映画界は「洋高邦低」という状況だった。興行収入における洋画のシェアは7割近く、邦画は3割にも満たなかったのだ。それが、『踊る大捜査線 THE MOVIE』の興行収入100億を超える大ヒットで、流れが徐々に変わっていく。
そして2003年、映画化第2弾『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の173.5億円という実写邦画歴代興行収入第1位となる驚異的な大ヒットでその流れは大きなうねりとなった。以降、現在では「邦高洋低」となり、邦画が6割近くという状況となっている。
もちろん、そこには歴代邦画興行収入1~3位、ベスト10に5作品という、ジブリ作品による巨大動員の貢献は見逃せない。その他の劇場アニメーションの力も大きな力となってはいる。それでも『踊る大捜査線 THE MOVIE』が、邦画実写映画の新たな可能性を見せたことは間違いないだろう。

”ジブリ”と『踊る』と「ー物語」で構成されている「歴代邦画興行収入ベスト10」
1位 千と千尋の神隠し(2001年) 304.0億円
2位 ハウルの動く城 (2004年) 196.0億円
3位 もののけ姫 (1997年) 193.0億円
4位 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! (2003年) 173.5億円
5位 崖の上のポニョ (2008年)155.0億円
6位 南極物語 (1983年) 110.0億円
7位 踊る大捜査線 THE MOVIE (1998年)101.0億円
8位 子猫物語 (1986年) 98.0億円
9位 借りぐらしのアリエッティ (2010年) 92.5億円
10位 天と地と (1990年) 92.0億円
『踊る大捜査線』シリーズの概要を確認しておこう!
『踊る大捜査線 THE MOVIE』のあらすじ
『踊る大捜査線 THE MOVIE』のキャスト
青島俊作 (湾岸署刑事課強行犯係・巡査部長) ・・・ 織田裕二
室井慎次 (警視庁刑事部参事官・警視正)・・・ 柳葉敏郎
恩田すみれ- (湾岸署刑事課盗犯係・巡査部長) ・・・ 深津絵里
柏木雪乃 (湾岸署刑事課強行犯係・巡査) ・・・ 水野美紀
袴田健吾 (湾岸署刑事課長・警部) ・・・ 小野武彦
魚住二郎 (湾岸署刑事課強行犯係長代理・警部補) ・・・ 佐戸井けん太
神田総一朗 (湾岸警察署長・警視正) - 北村総一朗
秋山晴海- (湾岸署副署長・警視) ・・・ 斉藤暁
中西修 (湾岸署刑事課盗犯係長・警部補) ・・・ 小林すすむ
真下正義 (湾岸署刑事課強行犯係長・警部補)・・・ ユースケ・サンタマリア
横山邦一 (警視庁公安部長・警視監) ・・・ 大杉漣
SIT捜査員 (警視庁刑事部捜査第一課特殊班・警部補) ・・・ 津田寛治
新城賢太郎 (警視庁刑事部捜査第一課管理官・警視) ・・・ 筧利夫
日向真奈美・・・ 小泉今日子
和久平八郎 ・・・いかりや長介
看護婦 ・・・木村多江
人気者織田裕二がさらにランクアップした 『踊る』シリーズ
1987の映画『湘南爆走族』でデビュー後、映画『彼女が水着にきがえたら』(1989年公開)の主演、原田知世の相手役で知名度を上げた織田裕二は、1991年フジテレビのドラマ『東京ラブストーリー』で一気にブレークする。鈴木保奈美が元気よく「カンチ!」と呼ぶ姿、織田くんが戸惑いながら「リカ」と答えるその姿は、リアルタイムで観ていた誰の記憶にも鮮明に残っているだろう。いわゆる『東ラブ』は社会現象になり、「月9」という言葉を生み、鈴木保奈美とともに織田裕二の人気は不動のものになった。
さらに1993年フジテレビのドラマ『振り返れば奴がいる』もヒット。カンチとはまったく違った、影のある男っぽい医師役を好演した。CHAGE&ASKAが歌う主題歌「YAH YAH YAH」がとにかく印象的だった(200万枚を超えるセールスを記録した)。
そして、『踊る大捜査線』である。テレビドラマとしてのヒット、映画の大ヒットで織田裕二は、まさに若手トップ俳優から誰もが知る日本を代表する俳優となったといえる。まさにもうワンランクアップした出演作なのだ。



「事件は会議室で起きてんじゃない!現場で起きてんだ!」

次ページでは、いかりや長介、小泉今日子、稲垣吾郎などが登場!!
日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を獲得した、いかりや長介の存在感
あの「ザ・ドリフターズ」のリーダーだった、いかりや長介が、いつの間にか渋い人気俳優になって、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を獲得するなんて、人間の人生はつくづくわからないものだと思う。
『踊る』での存在感は抜群だった。この映画化第1弾『踊る大捜査線 THE MOVIE』で最優秀助演男優賞を取ったのも頷けるといえるだろう。和久さんがいなくなった映画第3弾はやはりどこか物足りないものがあった。

キョンキョンの後々の活躍を予感させる殺人鬼役
『踊る大捜査線 THE MOVIE』の話題のひとつは、なんてたって超人気アイドルだった小泉今日子の殺人鬼役だった。なかなかの切れ具合で素晴らしかった。その後の女優業としての活躍を予感させるような殺人鬼役の好演。『踊る』の良いところは意外な人に意外な役を演じさせるところだろう。

多くの俳優たちの“未来”を見出したともいえる『踊る』シリーズ!
キョンキョン同様、数多くの俳優やアーチストが印象的な役を演じた『踊る』シリーズ。ここではその中でも私のお気に入りの人たちをご紹介しよう。
吾郎ちゃんのキレッキレの演技は、『十三人の刺客』で昇華した!
ご存知、SMAPの稲垣吾郎も出演。湾岸署をジャックする役だったが、とにかくキレッキレの演技に大きな可能性を感じた。その実力は2010年の三池崇史監督の映画『十三人の刺客』で昇華。暴虐を極める明石藩主松平斉韶を演じ、絶賛された。
日刊スポーツ映画大賞、毎日映画コンクール、日本インターネット映画大賞、第65回日本放送映画藝術大賞など、さまざまな映画賞で助演男優賞を獲得している。さらに第53回ブルーリボン賞にもノミネートされた。

いまじゃ、映画主演多数の快優阿部サダヲもテレビシリーズに出演!
快優阿部サダヲも『踊る』のテレビシリーズに出演。デビュー5年目27歳の阿部サダヲは、こんな長い髪でなんだかちょっとイケメン風。湾岸署で青島(織田)を刺す役だったが、目に特別なものが宿ってますな、ホントに。いまじゃ、主演映画多数で、テレビの連ドラでも主役があるようなビックな俳優さんになった。主演でも脇役でも光る稀有な存在。

阿部サダヲ - Wikipedia
薄幸やらせたら日本一女優の木村多江もちょい役で出演!
朝ドラ「トト姉ちゃん」の母親役を演じている木村多江もデビューしたての頃に看護婦役で出演。演じてきた役もそうなのだろうが、顔立ちや雰囲気がとにかく幸薄そうで、「薄幸やらせたら日本一の女優」として貴重な存在。CNNで「まだ世界的に名前は売れていないが、演技力のある日本の俳優7人」の一人に選ばれるなど演技力の高さは間違いのないところだ。
映画初主演作の『ぐるりのこと。』(2008年)では、第23回高崎映画祭最優秀主演女優賞、第51回ブルーリボン賞主演女優賞、新人賞、第32回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、第13回日本インターネット映画大賞主演女優賞、第18回東京スポーツ映画大賞主演女優賞など、各映画賞を総なめにしている。

なぜか人気者(?)になったスリーアミーゴス。まあ、いい味を出してました。
権力や保身に向かう姿はふつう敬遠されるはずなのに、なぜだが憎めなくて、なんだか笑えてしまうところが魅力の湾岸署のお偉いさん3人組。刑事ドラマとは思えない3人の緊張感のなさが面白かった。『踊る』シリーズの魅力のひとつは、脇役にも細かな設定がなされ、印象的なキャラづけがされているところだろう。とはいえ、北村、斉藤、小野といったベテラン俳優の演技力あってこそではある。コミカルな演技はハマらないとホントに笑えないので。
☆☆ホント、細かいキャラ設定で笑える☆☆
◆神田 総一朗・・・北村総一朗
湾岸署署長・警視長→警視庁湾岸警察署・指導員。(東京都再雇用職員制度)。
昭和14年9月25日生まれ。O型。
本籍・高知県。自宅は港区台場の署長官舎。
最終学歴・法政大学文学部卒業。
特技・締め、音頭
◆秋山 晴海・・・斉藤暁
湾岸署副署長・警視正→警視庁湾岸警察署・指導員。(東京都再雇用職員制度)。
昭和24年10月28日生まれ。A型。
本籍・福島県。自宅は千葉県四街道市。
最終学歴・東海大学教育学部卒業(実際は東海大学に教育学部はない)。
特技・トランペット、剣道、合いの手
◆袴田 健吾・・・小野武彦
湾岸署刑事課課長・警部→警視庁湾岸警察署副署長[警部]→警視庁湾岸警察署副署長[警視]
昭和25年8月1日生まれ。O型。
本籍・東京都。自宅は埼玉県さいたま市。
最終学歴・東京都立港工業高等学校卒業。
特技・仕切り、接待、バドミントン
