高校野球史に残る名勝負~1985年・夏~PL学園対宇部商業

高校野球史に残る名勝負~1985年・夏~PL学園対宇部商業

高校野球史に残る名勝負をいくつか紹介しています。ここでは、1985年夏の大会。PL学園対宇部商業戦をとりあげます。「KKコンビ」高校三年生・夏の大会決勝戦で「甲子園は清原の為にあるのか!」という名実況が生まれました。


「KKコンビ」・高校3年生の夏

高校1年生の夏から5季連続で甲子園に出場した、桑田真澄・清原和博の「KKコンビ」。ただ、全国制覇を成し遂げたのは高校1年生の夏「のみ」…と言っては言い過ぎでしょうか。ともあれ、高校3年生の夏。PL学園はすさまじい執念をもって甲子園に乗り込んで来たのです。この大会2回戦から登場したPL学園は、初戦の対東海大山形戦で猛打爆発。毎回得点を挙げて29-7という大差をつけるのです。

PL学園対東海大山形戦スコア

この大会、中々ホームランが出なかった清原選手ですが、準々決勝の対高知商業戦で、後に大洋ホエールズや中日ドラゴンズで活躍する、中山裕章選手からレフトへ推定140mの超特大のホームラン。続く準決勝の対甲西高校戦でも清原選手は2本塁打を放ち、チームも15対2と快勝して、決勝に進出します。

「甲子園は…」

この大会の決勝戦。PL学園と対戦したのは宇部商業。両校はこの年の春の選抜大会の2回戦で対決。その際、宇部商業は2-6で敗れていました。決勝戦、宇部商業のマウンドに先発したのは、この大会不調が続いていた「背番号1」の田上昌徳投手ではなく、この大会好リリーフでチームを決勝戦まで導く原動力となった「背番号11」の古谷友宏投手でした。古谷投手が初回、1死2塁のピンチで迎えた清原選手を平凡なセンターフライに打ち取ると、宇部商業が2回表に1点を先制。その後も宇部商ペースで試合は進むのですが、4回裏、清原選手の第2打席。古谷投手のシュートがわずかに浮いた「失投」を清原選手は見逃さず、打球はレフトのラッキーゾーンに飛び込む同点弾となりました。

試合は6回の表に宇部商業が3対2と逆転します。ですが、その直後の6回裏。清原選手この試合の第3打席。真ん中高めに少し浮いたストレートを振り抜くと打球はセンターの中段に飛び込む、この試合2本目の同点ホームランとなりました。

両手を挙げてガッツポーズ

両手を挙げてガッツポーズをとり、ベースを一周する清原選手。そこでこの試合を実況していた朝日放送のアナウンサー・植草貞夫さん「甲子園は清原のためにあるのか!!」という名文句が生まれます。

死闘、決着

「甲子園は…」と言うものの、3対3の同点のままで試合は進みます。9回裏Pl学園の攻撃も既に2アウト。このまま延長戦突入か…と思われた時、2番・安本選手がセカンドとセンターの間に落ちるポテンヒットで出塁。その後3番松山選手を打席に迎え盗塁で2塁に進塁。1本ヒットが出ればサヨナラという場面に変わります。カウントは2-3のフルカウント。投げる前、味方野手に向かって振り返り「2アウト―」と声を出す古谷投手。それは味方の緊張を解くというより、自分自身の気持ちを落ちつける動作にも見えます。

3番打者で、主将を務めていた松山選手はこの日ノーヒット。古谷選手からすれば、この日2本塁打を打っている清原選手が次に控えていることを考えれば、ここで松山選手を歩かすわけにはいかない…と考えていたことでしょう。そんな風に次の清原選手を意識しすぎたのでしょうか、古谷投手の投げた速球はわずかに真ん中よりに入ってきます。

真ん中でバットを持っているのが清原選手です。

抱き合って喜ぶPL学園の選手たち

松山選手が打った打球が右中間を抜けていくと、PL学園ベンチから選手が飛び出してきます。ネクストサークルで打席が回ってくるのを待っていた清原選手もバットを高く掲げて、喜びを爆発させます。

当時の新聞記事より

「KKコンビ」最後の夏、PL学園がサヨナラ勝ちで優勝を決めたこの試合を各メディアは大きく報じました。

↑PL学園VS宇部商戦のプレイボール~試合終了までの動画です

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