【ジョージ・フォアマン】45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクサー

【ジョージ・フォアマン】45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクサー

象をも倒すといわれたパンチ力で最強と呼ばれながら『キンシャサの奇跡』でモハメド・アリに敗れたジョージ・フォアマン。 一度は引退するもカムバックを果たし、20年ぶり45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクシング王者について栄光から挫折そして復活の経歴、モハメド・アリやマイク・タイソンとの比較、ヘビー級最強説を紹介。


長年にわたって黒人差別の撤廃を訴えてきたモハメド・アリは、ベルギーによる植民地支配の時代を知るザイール国民にとって、まさに希望の星であった。

フォアマンはアリと同じ黒人でありながら、入国時に旧宗主国ベルギーの警察犬だったシェパードを連れてきたこともあり、『白人の手先』と非難の的となってしまう。

シェパードでバッシング?

さらに、フォアマンが練習中にケガをして約1ヶ月試合が延期となったが、アメリカに帰国しての治療を望んだものの試合拒絶の逃亡と見なされ、出国禁止の軟禁状態に置かれることになってしまう。

アリの人気は高まるばかりで『アリ! ボマイエ!(現地リンガラ語でアリ!殺っちまえ!)』はザイールの国民的流行語になった。
なお、このときの『ボマイエ』が後に猪木ボンバイエに繋がっていく。

元々繊細なフォアマンは、完全アウェーの状態で軟禁され精神に大きなダメージを負い試合に臨むことになった。

伝説の戦法『ロープ・ア・ドープ』で敗れたフォアマン

1974年10月30日、世界中が見守った世紀の一戦は放送権を持っていた米国テレビ局の都合に合わせた、なんと現地時間の午前3時過ぎに行われた。

地元民衆の大歓声がアリに注がれる中、試合開始のゴングが鳴った。
王者フォアマンは攻勢を仕掛け、剛腕で相手を追い込むいつものスタイルを敢行。
1Rこそアリは蜂のように刺すと称された自慢のフットワークを使ってフォアマンの強打をかわしたが、2R以降はフォアマンのプレッシャーにズルズルと後退、ロープ際まで追い詰められて強打を浴び続ける。
誰もがフォアマンの早期KOを予想した。

だが、アリは常に顔面をカバーしながら、ロープの弾力を利用してフォアマンのパンチの衝撃を吸収し、頃合を見計らって鋭い反撃をする高等テクニック、後に『ロープ・ア・ドープ』と呼ばれる作戦を実行。

フォアマンと同等の体格(身長190cm、リーチ203cm)で、並外れた動体視力と反射神経を持つアリだからこそ実現できた戦法である。
ロープを背にのけぞることでフォアマンの得意とする左右フックからのアッパーを完全に封じた。

超高等テクニック『ロープ・ア・ドープ』

剛腕を振り回し続けるフォアマンはスタミナを奪われていく。
無敵王者の宿命で、早いラウンドでの決着が多かったフォアマンはこれまでの相手とは全く違う戦法に戸惑い、焦れば焦るほどパンチの精度も下がり益々スタミナを浪費し、動きに精彩を欠いていく。

そして、運命の8R。
それまでのラウンドと同様にフォアマンは前進を続けるがラウンド終盤に体が流れた瞬間、アリはその一瞬の隙を見逃さず体を入れ替えコンビネーションブローを放つ。
まともに連打されたフォアマンは最後にカウンターの右ストレートを浴び、キャンバスに沈んだ。
主審がテンカウントを宣告、最強の王者と呼ばれたフォアマンはプロ41戦目にしてついに初黒星を喫して王座を陥落した。

下馬評を覆す奇跡の勝利を挙げたアリは、ヘビー級としてはフロイド・パターソン以来史上2人目の世界王座返り咲きに成功した。

『肉を切らせて骨を断つ』戦法で奇跡の勝利をおさめたアリだが、その代償は大きくガードの上からでも効いてしまうフォアマンの強打はアリの体を蝕み、後にパーキンソン病を患う原因になったとも言われている。

『キンシャサの奇跡』にまつわる謎と疑惑

【ロープをわざとゆるく張っていた?】
試合を見ると確かに不自然なほどロープがゆるい。
ロープがここまで緩くなければ、フォアマンのパンチをのけぞって躱すことはできなかったと思われる。
現地の人気を獲得したアリ陣営が「わざとロープをゆるく張らせたのではないか」とも言われている。
だが、アリのトレーナーであるアンジェロ・ダンディは試合が行われるまで『ロープ・ア・ドープ』という戦法自体を知らなかった。
事実、アリも1Rはフットワークを駆使する戦法を取っており、緩いロープに気付いたアリが急遽編み出したものだという説が有力である。

【フォアマンは薬を盛られていた?】
フォアマンは自叙伝『God in My Corner』の中で「あれは仕組まれた試合だった」と語っている。
リングに上がる直前に自分のトレーナーから薬のような味のする飲み物を与えられたと書き、何らかの薬物を盛られた可能性を示唆している。
「やっとの思いでリングにもぐり込み、3ラウンドが終わってみるとまるで15ラウンドを戦ったかのように疲労だった。」と自らの動きが急激に衰えた原因について述べている。
こうした発言に対して、「負け惜しみ」や「嘘つき」とフォアマンを批判する声もあるが、完全アウェーで軟禁された繊細なメンタルは壊れ、周りの人間全てが敵に感じてしまっていたのではないか。
この試合時には鉄の結束と言われた『チームフォアマン』は不協和音を生じていたという。

【レフェリーのカウントが早かった?】
動画で確認してもカウント9ぐらいで試合終了を合図したように見える。
だが、ダメージは明らかでフォアマン自身もフォアマン陣営も抗議する姿勢を見せていない。
仮にこのまま続行しても挽回するのは厳しかったと思われる。

『キンシャサの奇跡』後、再起をかけるフォアマン

フォアマンはアリに喫した初黒星から約15ヶ月後の1976年1月24日、ようやく再起戦を行った。
対戦相手は元囚人のボクサー、ロン・ライル。
アリに敗れて自信を失ったフォアマンに、かつて絶対王者と呼ばれた雰囲気は無かった。

このライル戦を例に出し、フォアマンは実はそこまで強くなかったという意見もあるが、ライルはこの半年近く前にモハメド・アリに挑戦し接戦(11RTKOで敗れる)を繰り広げているほどの実力を持っており、アリやフォアマンがいない時代であればチャンピオンになれたとも言われている逸材であった。

ジョー・フレージャーと二度目の対戦

『キングストンの惨劇』から3年後、王座から陥落したフォアマンに対して同じく元王者のフレージャーは雪辱に挑んだ。
前年、フレージャーはアリとも三度目の対戦を行いセコンドの申告により14R棄権で敗北したが、アリもこの時点で敗北を覚悟してグローブを外して欲しいとセコンドに頼んだほどの大接戦であった。

フレージャーを返り討ちにしたフォアマンは、スコット・レドゥー(3RTKO)、ジョン・ディノデニス(4RTKO)、ペドロ・アゴスト(4RTKO)と連勝を続け剛腕健在を印象付けた。

関連する投稿


ロッキー・マルシアーノ 24歳で本格的にボクシングを始めるまで

ロッキー・マルシアーノ 24歳で本格的にボクシングを始めるまで

179㎝、84㎏。スピードも、テクニックもなく、不屈のブルドーザーのように突進するファイトスタイルで49戦49勝43KO、引き分けさえない全勝無敗のパーフェクトレコードを持つ世界ヘビー級チャンピオン。


 内藤大助  イジメに克ち、イジメっ子にリベンジ

内藤大助 イジメに克ち、イジメっ子にリベンジ

日本フライ級、東洋太平洋フライ級、WBC世界フライ級チャンピオン、42戦36勝3敗3分、勝率85.7%、KO率63.9%。恐ろしく強いボクサーなのにオネエを疑われるほど柔和、かつ元イジメられッ子。中学時代に凄絶なイジメに遭い、20歳でジムに入門し、 22歳でプロデビュー。そして24歳で全日本新人王になった後、イジメっ子と再会する。


漫画『はじめの一歩』が「ワンダ モーニングショット」と初コラボ!「ファミリーマートのはじめの一歩缶」が数量限定で発売!!

漫画『はじめの一歩』が「ワンダ モーニングショット」と初コラボ!「ファミリーマートのはじめの一歩缶」が数量限定で発売!!

ファミリーマートにて、講談社「週刊少年マガジン」で連載中の『はじめの一歩』と、アサヒ飲料のロングセラー商品「ワンダ モーニングショット」がコラボした「はじめの一歩×ワンダ モーニングショット ファミリーマートのはじめの一歩缶」が1月28日より全国のファミリーマート約16,200店にて発売されます。


漫画家・森川ジョージの麻雀優勝記念緊急企画!『はじめの一歩』の麻雀回(3話分)が無料公開中!!

漫画家・森川ジョージの麻雀優勝記念緊急企画!『はじめの一歩』の麻雀回(3話分)が無料公開中!!

「週刊少年マガジン」で『はじめの一歩』を連載中の漫画家・森川ジョージが、11月27日に放送された麻雀対局トーナメント『麻雀オールスター Japanext CUP 決勝戦』にて優勝を飾りました。それを記念し、『はじめの一歩』の麻雀回が「マガポケ」にて現在無料公開中となっています。


「CRONOS」より実録やくざ映画の金字塔『仁義なき戦い』とのコラボアイテムが発売決定!!

「CRONOS」より実録やくざ映画の金字塔『仁義なき戦い』とのコラボアイテムが発売決定!!

株式会社ワールドフィットが展開する、ミニマルでありながらスタイリッシュ且つ独創的なデザインが特長の“フィジタル パフォーマンス クロージング(※)”を提案する「CRONOS(クロノス)」より、名匠・深作欣二監督による実録やくざ映画の金字塔『仁義なき戦い』とのコラボレーションアイテムが発売されます。


最新の投稿


80年代の伝説「Sugar」全アルバムが最新リマスターで配信解禁!シティポップ再評価の決定版

80年代の伝説「Sugar」全アルバムが最新リマスターで配信解禁!シティポップ再評価の決定版

「ウエディング・ベル」のヒットで知られる女性コーラス・バンド「Sugar」。彼女たちが残した全オリジナル・アルバム4作品が、最新デジタルリマスター音源で一挙配信開始されました。高度なコーラスワークと先進的なサウンドは、現代のシティポップやフューチャー・ファンクとも共鳴。色褪せない名盤の魅力を紐解きます。


ドラマ『俺たちの旅』50周年!中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々が再集結する2026年秋ツアー決定

ドラマ『俺たちの旅』50周年!中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々が再集結する2026年秋ツアー決定

1975年の放送開始から50年。伝説の青春ドラマ『俺たちの旅』の主要キャスト4名(中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々)によるスペシャルコンサートの2026年秋ツアー開催が決定しました。各地で完売が相次いだ熱狂を受け、内容を一新。名曲と共に、今だから語れる秘話が詰まった夢のステージが再び幕を開けます。


『eフィーバーキン肉マン』発売決定!聖地・沼津に実機展示&「なすなかにし」試打動画も公開予定

『eフィーバーキン肉マン』発売決定!聖地・沼津に実機展示&「なすなかにし」試打動画も公開予定

株式会社SANKYOから新機種パチンコ『eフィーバーキン肉マン』が登場。2026年4月の導入に先駆け、静岡県の「キン肉マンミュージアムin沼津」にて先行実機展示がスタートしました。キン肉マン好き芸人「なすなかにし」の試打企画や、QUOカードPayが当たるSNSキャンペーンも実施される注目の新台です。


連載45周年!葛飾区で『キャプテン翼』と11人のエピソード展開催。小野伸二や影山優佳も参加

連載45周年!葛飾区で『キャプテン翼』と11人のエピソード展開催。小野伸二や影山優佳も参加

漫画『キャプテン翼』の連載開始45周年を記念した特別展が、2026年2月6日より葛飾区で開催されます。小野伸二氏や影山優佳さんら「翼ファン」11名が、作品から受けた影響を名シーンと共に紹介。南葛SCの選手との交流やベイブレード大会など、聖地・葛飾ならではの多彩なイベントも同時展開されるファン必見の催しです。


全高65cmの衝撃!アシェットから『週刊 勇者ライディーンをつくる』創刊。光と音のギミックも搭載

全高65cmの衝撃!アシェットから『週刊 勇者ライディーンをつくる』創刊。光と音のギミックも搭載

アニメ放送50周年を記念し、アシェット・コレクションズ・ジャパンから『週刊 勇者ライディーンをつくる』が2026年2月18日に創刊されます。全高65cmのフルメタルボディで、必殺技の再現や「ゴッド・バード」への変形機構を実装。発光・BGM・セリフ再生など、大人の所有欲を満たす豪華ギミック満載のシリーズです。