『アウトサイダー』を観るべき3つの理由
まずは、この映画を観るべき理由を3つ、挙げてみよう。
1.『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』の巨匠フランシス・コッポラによる青春映画。
2.のちに人気者となる若手俳優が多数出演している。
3.あのスティービー・ワンダーの主題歌「ステイ・ゴールド」があまりにも素晴らしい。
とまあ、すでに観ている人には周知の事実かもしれないが、公開から約30年経ったいまだからこその観るべき理由でもある。初めて観ても、再鑑賞でも、いろいろな意味で楽しめる。ミドルエイジには、コッポラ監督のメッセージが余計身に染みると思われるので(たぶん)、ぜひ鑑賞をおすすめしたい。
巨匠コッポラが描く正統派の青春映画!
貧乏で家庭環境も良いとは言えない。これといった夢もなく、もどかしさと切なさを抱えているアウトサイダーたち。でも、無邪気に笑いあえる仲間がいる。そんな少年たちの刹那を描いた珠玉の青春映画である。1983年にアメリカで公開。『ウエストサイド物語』や『アメリカングラフティ』といった正統派青春映画の流れを受け継ぐ作品だ。アメリカの作家、スーザン・エロイーズ・ヒントンが1967年16歳の時に発表し、大ベストセラーとなった青春小説をコッポラが映画化。『ランブルフィッシュ』『コットンクラブ』と続くコッポラYA(ヤング・アダルト)三部作の第一作である。
1970年代に『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザーPARTⅡ』『地獄の黙示録』と重いテーマの大作を世界中で大ヒットさせたあとの作品と考えると興味深い。ジョージ・ルーカスが、『スター・ウォーズ』の前に『アメリカン・グラフィティ』を作ったように、“青春もの小作品”(ブレーク前)⇒“大作”(大ブレーク)というハリウッド監督の出世街道の図式の逆をいったのだから(逆といっても名声が落ちたわけではない。ただ、80年代に何度か破産したことが関係してるとかしてないとか・・・)。
<< ストーリー >>
舞台は、オクラホマ州タルサ。14歳のポニーボーイは、両親を交通事故で失い、長兄ダレル、次兄ソーダポップと暮らしていた。ポニーボーイは、親友ジョニー、リーダー格のダラスといつも一緒だった。彼らが住んでいるイーストサイドには貧民階級のグループ「グリーサー」があり、ウェストサイドには富裕階級のグループ「ソッシュ」があった。対立関係にある両グループはことあるごとに小競り合いを繰り返していた。そんなある夜、ジョニーはソッシュのひとりをナイフで刺し殺してしまう。ジョニーと一緒にいたポニーボーイは、相談したダラスの指示でタルサを離れ、廃屋の教会に身を隠す。
数日が経ち、2人の様子を見に来たダラスと食事をしたあとに戻ってみると教会は大きな火柱を立て、火事になっていた。遊びに来ていた子供たちが教会の中に取り残されているのを知ると、ポニーボーイとジョニーはダラスの制止を振り切り、火の中にとび込む。子供を助けることはできたが、ジョニーは大火傷を負って入院してしまう。
ジョニーの容態が悪化していく中、グリーサーとソッシュは決闘をする。ダレルを先頭に大乱闘の末にソッシュに勝利するグリーサー。勝利の報告をしに病院へ行ったポニーボーイとダラスはジョニーの死を知る。自暴自棄になったダラスはスーパーを襲って逃走。パトカーに追われ、あげく射殺されてしまう。ポニーボーイがジョニーから譲り受けた小説「風とともに去りぬ」にはさんであった紙には、死んだジョニーからのメッセージが書かれているのだった……。
次ページ「若かりし日のスターが勢ぞろい!」に続く・・・
若かりし日のスターが勢ぞろい!
主演は、C・トーマス・ハウエル。共演には、すでにスターだったダイアン・レイン、まだ無名だったマット・ディロン、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、トム・クルーズ、エミリオ・エステべス、パトリック・スウェイジら。数年後の彼らの作品を思い浮かべながら、無名時代のスターの演技に難癖つけるもよし、「若い頃、こんなだったかあ」と感慨にふけるもよし、いろいろな楽しみ方がある。ほかにも、アイドルとして世界的に人気のあったレイフ・ギャレットやロックの殿堂入りもしているトム・ウェイツ、少女時代のソフィア・コッポラ(コッポラの娘)も出演している。
女の子みんながマット・ディロンの虜だった・・・
ジェームス・ディーンの再来かと思うほどのセクシーさと少年(青年?)の危うさを併せ持ったマット・ディロン。ある意味、この映画は彼が主役だった。日本の女の子もみんな、マット・ディロン見たさに映画館に押し掛けたとか。その後、コッポラ監督の『ランブルフィッシュ』に出演した。ほかの出演作に『フラミンゴキッド』『ドラッグストア・カウボーイ』『最高の恋人』『シティ・オブ・ゴースト』などがある。
脇役トム・クルーズの軽い演技に少し気恥ずかしさも!?
当時ほとんど無名のトム・クルーズだが、今となっては『アウトサイダー』出演者のなかでも一番の出世頭だ(というかずば抜けてしまっている)。当時の軽い演技は観ている方が少し気恥ずかしくもなるが、好感のもてる演技と男っぷりはすぐに認められ、同年、公開された『卒業白書』ではゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされている。
若かりし日のダイアン・レインの凛とした美しさにため息
ダイアン・レインは1979年の『リトル・ロマンス』で映画デビューし、すでに人気者となっていた。『アウトサイダー』では、気は強く、どこか大人びた役どころだったが、凛とした美しさには絶句する。ちなみに、若き日のダイアン・レインをさらに堪能したいなら、『ストリート・オブ・ファイヤー』もいい。人気ロック歌手に扮したダイアン・レインの姿がミドルエイジには眩しすぎる。
次ページではいよいよ主題歌「ステイ・ゴールド」。ご堪能あれ!
ミドルエイジの心に効く主題歌「ステイ・ゴールド」
主題歌「ステイ・ゴールド」は、とにかく聴く者の心を揺さぶる。この曲、実はスティービー・ワンダーの作曲ではない。『アウトサイダー』の音楽を手がけたコッポラ監督の父、カーマイン・コッポラによるもの。カーマインの作ったメインテーマのメロディに、スティービー・ワンダーが詩をつけているのだ。息子のフランシス同様、カーマインの才能も並ではないということだ。
プロデュース&アレンジメントはスティービー・ワンダー。青春の切なさと悲しみをノスタルジーにくるんで、鑑賞後もさまざまなシーンを思い起こさせるような心に残る楽曲に仕上げている。スティービーの美しい歌声も素晴らしく、「Seize」という歌い出しでグッと引き込まれ、一気に少年の頃にトリップさせられる。
なお、「ステイ・ゴールド」の意味は“輝きはそのままに” “輝き続ける”という意味合い。歌詞を全部知らなくてもタイトルの意味をかみしめるだけで、十分“心のかさぶた”ははがれていく気がする。
“もう一度輝くこと ”を気づかせてくれる『アウトサイダー』
終盤、主人公ポニーボーイが、死んだ親友ジョニーの残した手紙を読むシーンがある。手紙にはこんなことが書いてある。
「子供の頃はみんな輝いている、新緑みたいに。子供の頃はすべてが新鮮だ、朝焼けとかね。おまえは夕焼けが好きだろ。貴重なところだよ。そいつを失くすなよ」
たいていの人たちは、年を重ねていくと輝き続けることを放棄したり、忘れたりしてしまう。人生で多くの傷を負い、日々の生活に追われ、新鮮な気持ちで何かに接するなんてことができなくなっていくからだ。少年だったころの無邪気で無垢な心を失いかけた時、私たちは輝きを失くしていくのだと思う。「何を青臭いことを」と言う人もいるかもしれないが、そんな大人にこそ思い出してほしいという、コッポラ監督のメッセージがここにあるように思える。
このシーンを観て思い出すのが、佐野元春の名曲「サムデイ」の一節だ。
“ 素敵なことを素敵だと無邪気に笑える心が好きさ ”
佐野元春もコッポラ同様、心を失くすなと私たちにメッセージを送っている。
『アウトサイダー』は、私たちに “ もう一度輝くこと ” を気づかせてくれる映画なのだ。
最後に、関連アイテムで高まっていただいて・・・