実力光る問題児ケンドー・カシン(石澤常光)のやりたい放題ヒストリー

実力光る問題児ケンドー・カシン(石澤常光)のやりたい放題ヒストリー

誰もが認める実力の持ち主であるケンドー・カシン(石澤常光)がなぜか稀代の問題児となり、新日本プロレス、全日本プロレスでやりたい放題の大暴れ。そんな個性派レスラーのケンドー・カシンのヒストリーを追う。


ケンドー・カシンのプロフィール

ケンドー・カシンの本名は石澤常光(いしざわ・ときみつ)。181センチ、87キロ。
1968年8月5日生まれの青森県出身。
レスリングの強豪校・光星学院高校、早稲田大学人間科学部卒業。
レスリング全日本学生選手権3連覇! 91年全日本選手権でも優勝。
レスリング出身の鈴木みのるに対して、ケンドー・カシンは「クラスが違う」と言ってのけた。

ケンドー・カシンは根っからのプロレスファンで、1992年に新日本プロレスに入団。
コーチは馳浩で、デビュー戦は金本浩二。

1996年3月、永田裕志を破り、第7回ヤングライオン杯優勝。
そして同年7月にヨーロッパ遠征でマスクマンとなり、稀代の問題児・ケンドー・カシンが誕生する。
しかし、その前に、石澤常光にとって輝かしい闘いの歴史があるのだ。
それは・・・・・・。

新日本プロレスVSUWFインター全面戦争

事の発端は新日本プロレスの長州力と、UWFインターの高田延彦の電話会談だった。
交渉は決裂し、キレた長州が「やるのか?」と言うと、高田が「本当にやったらそっちが困るでしょう」と挑発。
「何こらあ!」
ついに新日本プロレスとUWFインターの全面戦争が勃発。
1995年10月9日、東京ドーム。チケットが即完売し、入場券を手にできなかったファンが帰るに帰れず、周囲に溢れてしまった。
UWFインターのファンや選手からしてみれば、日頃キックと関節技を特訓し、実戦でも総合格闘技のような試合をしているUインターが負けるわけがないと思っていた。
その理由は、普段ロープに飛ばしてドロップキックというような試合に慣れているレスラーが、自分たちのキックや関節技に対応できるとは思えないと。
ところが、新日本プロレス道場では、常日頃からレスリング、ボクシング、関節技、キックなど、あらゆるトレーニングを積んでいた。
そして、新日本プロレスの選手が、いざという時に、本格的なキック攻撃や関節技に対応する力があることを、見事に証明した大会となった。
この全面対抗戦は、「新日本プロレスが最も成功した興行」とも言われている。

この全面対抗戦で、先兵としてその実力を発揮したのが、実は石澤常光だったのだ。
鬼コーチ・山本小鉄軍曹も、石澤常光のシュートの実力には太鼓判を押していた。
なぜなら、新日本プロレスに腕自慢の素人が道場破りに来る時に、応対する係が石澤常光だったからだ。
石澤常光は、相手を容赦なくコテンパンにやっつけて、道場の外に放り投げたという。
その感じは後のケンドー・カシンのキャラクターを彷彿とさせる。

石澤常光は、UWFインターとの対抗戦で大活躍。
10.9東京ドームでは、永田裕志とタッグを組み、金原光弘、桜庭和志と対決。
そして石澤常光は、あの桜庭和志を三角絞めで破っているのだ。

新日本プロレス対UWFインターの全面戦争は、この日の興行だけでなく、ずっと続いた。
とにかく激しい試合の連続に、プロレスファンは心底興奮し、感動した。
当時高校生だった柴田勝頼がプロレスラーになると決めたのも、この闘いを観戦したからだ。
この大会で、石澤常光はシュートに強いということを証明し、ファンの知るところとなった。

ヒールに転向したケンドー・カシン

ヨーロッパから凱旋帰国したケンドー・カシン。しかし「ファンの反応が冷たかった」とヒールに転向することを決意したらしい。
実際にそんなに冷たかったかどうかは定かではない。段々と奇怪な言動が目立ち、誰にも理解できないカシン語録や理解不能な行動を起こすようになっていく。
何といっても実力はピカイチ。
1999年1月、ケンドー・カシン、ドクトル・ワグナー・ジュニア組は、東京ドームで大谷晋二郎、高岩竜一を破り、第2代IWGPタッグ王者に輝く。
そして同年5月、ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア6でケンドー・カシンが優勝。
なぜかトロフィーを足蹴にしたり、よくわからないパフォーマンスをするようになる。
同年8月、金本浩二を破り、第34代IWGPジュニアヘビー級チャンピオンに君臨。
ベルトを踏んづけたり、トロフィーを破壊したりと、ヒールぶりがエスカレートしていく。

ほかにも中西学と犬猿の仲というキャラ設定でサイドストーリーをつくり、カシン語録で中西学を散々バカ呼ばわり。
ヘビー級の中西学は、まずケンドー・カシンと試合で交わることがないので、このパフォーマンスの意味のなさに困惑。

しかし、ケンドー・カシンの毒舌と理解不能なパフォーマンスは定着し、「それがカシン」とファンも認めていた。

ケンドー・カシンの飛びつき式腕十字固め

プロレスは勝負の世界。実力もないのに口だけ達者だったら、間違いなくリング上で潰される。
しかしケンドー・カシンは実際に強いのだからどうしようもない。
カシンの得意技はエルボースマッシュやランニングネックブリーカーなど、いろいろあるが、一番の必殺技は飛びつき式腕十字固めだ。
今は中邑真輔が得意としている技だが、90年代はケンドー・カシンが一番の使い手だった。

そんなケンドー・カシンの実力が買われたか、にわかに総合格闘技PRIDEに参戦したらどうなるか。そんな噂が囁かれ始めた。

石澤常光VSハイアン・グレイシー

PRIDEは、1997年10月11日、東京ドーム。高田延彦VSヒクソン・グレイシーの闘いで始まった総合格闘技のビッグイベント。
400戦無敗のヒクソン・グレイシーが、高田延彦を腕ひしぎ逆十字固めで破り、プロレスファンは騒然。
「プロレス最強神話が崩壊した」ともマスコミに書かれたが、プロレスラーの桜庭和志が次々とグレイシー狩りをやってのけ、プロレスラーの強さを見せた。

山本小鉄も長州力も、明らかにレスラーに不利なルールなので、プロレスラーがPRIDEのリングに上がることには、基本的に反対だった。
試合に負ければ、観客はルールがどうのこうのとは考えない。勝ったほうが強く、負けたほうが弱いとしか見ない。

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