強烈なトラウマを与えたNHK教育テレビの影絵劇「パンをふんだ娘」は実は美しい芸術品。

強烈なトラウマを与えたNHK教育テレビの影絵劇「パンをふんだ娘」は実は美しい芸術品。

1975年に放送されたNHKの影絵劇「パンをふんだ娘」は何度も再放送され子供たちにトラウマを与え続けた。 この作品の記憶は強烈で大人になってからも不意に思い出す。 改めて観ると非常に芸術的で見直されるべき作品として紹介させていただきたい。


「パンをふんだ娘」とは?

「パンをふんだ娘」はアンデルセンの童話

ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話で童話集などによく収録されている。

とある村に住むインゲルという美しい娘は貧しい家と母親を嫌がり、いつも虫を痛ぶり殺して遊ぶ冷徹な少女だった。
ある日インゲルはお金持ちの家に貰われることとなる。
インゲルの生活は贅沢なものへと一変し、お金持ちの夫婦は美しいインゲルを溺愛し、好きなものはなんでも与えた。
そのためインゲルは更に美しくワガママな娘へと成長していく。
そんな中、金持ち夫婦はインゲルに一度里帰りするよう申し付ける。
インゲルは汚い村には帰りたくないと思いながらもしぶしぶ村へ向かう。
その際大きなぬかるみに行く手を阻まれ、靴が汚れることを嫌がったインゲルはバチ当たりにも母親へのお土産にと持たされたパンをぬかるみに投げ入れそれを踏みつぶし渡ろうとした。
その瞬間、インゲルはパンとともにぬかるみの奥底へ吸い込まれそのまま地獄へと落ちていったのだった…。
彼女の運命は…。

という物語なのだが、この物語を恐ろしい影絵劇にしたのがNHK教育テレビである。
小さい頃、1人で留守番をしていた私には恐怖レベルが高すぎる作品であった。

トラウマの原因は「テーマソング」と「影絵の高い芸術性」

テーマソングが怖すぎる…!!!

タイトルのまんま「パンをふんだ娘」という名のテーマソング。
これがトラウマの一番の原因と思われる。

「パンをふんだ娘」
うた/山田美也子・作詞/北沢杏子・作曲/越部信義

ゆらゆらと不安定な映像とこの歌は聞いたものを一気に「パンをふんだ娘」の世界へと引き込んでしまう。
悪いことをするとこんな目に遭うのか!
教訓とは言えここまでに恐ろしいことになるなんて…やり過ぎじゃないかと思うくらいの展開に子供の私は固まってしまった…。
親が帰ってくるまでテレビの前から動けず、この番組の後にはじまった明るく楽しいNHK教育番組も頭に入らずとにかく恐怖に包まれたのだ。

みるみる吸い込まれるインゲル。
この時のゆっくり沈む感じと悲鳴が妙にリアルで怖すぎる…!

これがパンを踏んだ娘の主題歌。
おどろおどろしい雰囲気と美しく切ない歌声が恐怖を煽る…!

高い芸術性!影絵劇の決定版。

この影絵劇は「劇団かかし座」によって制作されたもので、NHK教育テレビの番組「にんぎょうげき」で1975年に初放送された。
ブラックを基調に人物はシルエットで描かれ、色味を抑えた演出がおどろおどろしい雰囲気を作りだしている。
インゲルの声担当・松尾佳子の演技はそれはもう憎たらしく仕上がっており、山内雅人の淡々とした語りかけるようなナレーションが物語を盛り上げ、芸術的な影絵の美しさが恐怖を掻き立てる。
特にインゲルがぬかるみに吸い込まれるシーンは印象深くゆらゆらした画面と色彩、インゲルの悲鳴、そして合わせ技であの歌である…忘れることは出来ない。

この作品は何度も再放送されており、ミドルエッジ世代から若者まで多くのトラウマ被害者が存在するが納得である。

沼女…不気味に歌いながら登場。
朝か〜ら晩ま〜で〜ぐ〜つぐつ〜毒を煮る〜♪毒を煮るのが〜商売〜さ〜♪
やたら軽快で気持ち悪いジャズタッチの曲調で…もう勘弁してください!怖すぎる…!
でもこの赤い炎のような色とブルーのコントラストが本当に綺麗なんだ…。

美しく贅沢三昧だったインゲルの身体にはヘビやカエルがまとわりつき無残な姿に…。
さらに沼女から魔女に売られ、石のように固められてしまう。

地獄の魔女の館にはインゲル以外にも罪を犯した人々が飾られている…。
このポージングがなんかわからんけど子供の心に刺さって怖いんだよ…。

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