メイウェザーvsパッキャオはメイウェザーに軍配。
5月2日に行われたボクシングの「世紀の一戦」フロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオ戦はメイウェザーの判定勝ちで終結。
ともにパウンド・フォー・パウンドと呼ばれる現代の最強を決める戦いはメイウェザーに軍配が上がった。
歴代ボクサーの中では誰が最強なのか?
メイウェザーは「俺はモハメド・アリよりも偉大だ」とコメントし、それに対してマイク・タイソンは「すごい妄想だな、奴はチンケで、臆病な男だ。とーっても小さな、臆病な男なんだ」とコメント。
当のモハメド・アリも「Don't you forget, I am the greatest!(忘れるなよ、俺が一番偉大なんだ!)」とコメントしている。
今までモハメド・アリ、マイク・タイソンなど最強(パウンド・フォー・パウンド)と呼ばれた男達とメイウェザーはどちらが強いのか?
歴代最強と呼ばれる男達の実績を動画を交え確認していく。
パウンド・フォー・パウンドとは?
格闘技において全階級で体重差のハンデがない場合、誰が最強であるかを指す称号。
異なる階級の選手を比較、対比する方法を指し示すものとして1950年代初期に『リング』誌の初代編集長ナット・フライシャーによって造られた用語である。
ボクシングの階級は全部で17階級もあり、最軽量級は105ポンド以下のミニマム級で、最重量級は200ポンド以上のヘビー級となっている。基本的にスピードは軽いほうが有利であるが、技の威力は重いほうが格段に強く、体重の軽重によって必要とされる技術は異なっており、本来は比較ができないが、技量が同程度であれば、体重が重い方が勝つ可能性が高い。つまり最重量級のヘビー級またはスーパーヘビー級のチャンピオンが全階級の中で最強ということになる。
しかし、もし体重差がなく、全階級の格闘家が同じ身長・体重で戦った場合誰が一番強いのか。つまり、パウンド・フォー・パウンドとは、体重差がない状態で全階級を通じて、どの格闘家が一番優れているのかを決めるときに用いられる言葉である。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 シュガー・レイ・ロビンソン
シュガー・レイ・ロビンソン(Sugar Ray Robinson)
出身:アメリカ ミシガン州デトロイト
1921年5月3日~1989年4月12日
元世界ミドル級および世界ウェルター級チャンピオン。
200戦175勝(うちKO勝ち109)19敗6分け
多くの評論家やファンが、全階級を通じて史上最高のボクサーと認める「オールタイム・パウンド・フォー・パウンド」。
日本のボクシング批評においては「拳聖」と称される。

1940年代当時に、すでに現代のボクシング技術と比較しても遜色のないほど高レベルなフットワークやジャブ、左フックのダブル・トリプルコンビネーションなどを駆使した。モハメド・アリの先駆けともいえる技術的先駆者。
強豪達とグローブを交え、そのほとんどに打ち勝ち、数々の華麗なる名勝負、ノックアウトを歴史に刻んだ圧倒的実力の持ち主。後世の名選手達に多大な影響を与えたことは言うまでもない。
同一階級での5度の世界チャンピオン獲得は、階級などが増加した21世紀の業界においても並ぶ者のない大記録である。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 モハメド・アリ
モハメド・アリ(Muhammad Ali)
出身:アメリカ ケンタッキー州ルイビル
1942年1月17日生まれ
61戦56勝(うちKO勝ち37)5敗
1960年ローマオリンピックボクシングライトヘビー級金メダル獲得。
その後プロに転向し、ソニー・リストンを倒して世界ヘビー級王座を獲得。

Float like a butterfly, sting like a bee.(蝶のように舞い、蜂のように刺す)
大男同士の重い殴り合いだったヘビー級ボクシングに、蝶のように華麗なフットワークと、蜂のように鋭い左ジャブを活用する技を持ち込んだモハメド・アリ。この余りにも有名なフレーズは、当時のアリのトレーナー、ドゥルー・バンディーニ・ブラウンに考案されたもので、試合前には肩を組み「Float like a butterfly, sting like a bee!」と一緒に叫ぶといったパフォーマンスを見せていた。
リング上の身のこなしだけでなく、ジャブに右ストレートでカウンターを合わせるほどの離れ業もやってのけるパンチのスピードも合わせ持っていた。マイク・タイソンが現れた現代においても、ヘビー級史上最速はアリという意見もある。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 シュガー・レイ・レナード
シュガー・レイ・レナード(Sugar Ray Leonard)
出身:アメリカ サウスカロライナ州ウイミルトン
1956年5月17日生まれ
40戦36勝(うちKO勝ち26)3敗1分け
ウェルター級~ライトヘビー級まで前人未到の5階級制覇を達成。
本名はレイ・チャールズ・レナード。母親がレイ・チャールズのファンだったため命名したもの。のちにボクサーとして活動する際、尊敬するシュガー・レイ・ロビンソンにあやかって、シュガー・レイを名乗った。

モハメド・アリが去ったボクシング界に突如として登場、アリを継ぐ者として一躍有名になる。スピードとテクニック、スター性を併せ持ち、70年代後半から80年代にかけてのボクシング界を代表するスーパースターの座に君臨した。ボクシング界の常識を覆す数々の歴史的ファイトを繰り広げ「黄金のミドル」時代を築き上げた。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 ロベルト・デュラン
ロベルト・デュラン(Roberto Durán)
出身:パナマ
1951年6月16日生まれ
119戦103勝(うちKO勝ち70)16敗

初期の野性的でワイルドなボクシングと後期のテクニカルなスタイルで50歳になるまで戦い続けた。二階級越えれば威力が明らかに違い、三階級越えは挑戦自体が無謀と言われた業界の常識を平然と覆した怪物。
対戦相手は中量級の歴史的王者揃いであり、彼の影響で興行、テレビの世界までも変わっていった。全時代、全階級最強に推す者も多く、デュランは間違いなくモハメド・アリと並ぶ、世界を動かしたボクサーである。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 トーマス・ハーンズ
トーマス・ハーンズ(Thomas Hearns)
出身:アメリカ テネシー州メンフィス
1958年10月18日生まれ
67戦61勝(うちKO勝ち48)5敗1分け
初期のニックネームはマシンガン・トミー、後にヒットマン、あるいはモーターシティ・コブラ。なお試合前のコール時には愛称であるトミー・ハーンズと呼ばれることが多い。
史上初の4階級制覇、さらに史上初の5階級制覇を成し遂げた。

身長185cm、約2mのリーチという中量級選手としては恵まれた体格を生かし、左腕を下げたデトロイトスタイルから放つフリッカージャブと正確な強打、マシンガンのようなラッシュで1980年代のボクシング界を席巻した。
シュガー・レイ・レナード、ロベルト・デュランらと共に「黄金のミドル」時代を盛り上げた選手の一人である。
圧倒的強打で相手をなぎ倒す強さを見せた一方、典型的なグラス・ジョー(顎が打たれ脆くノックダウン、ノックアウト負けが多い選手)だったため、一発に泣かされることもあった。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 マービン・ハグラー
マーベラス・マービン・ハグラー(Marvelous Marvin Hagler)
出身:アメリカ
1954年5月23日生まれ
67戦62勝(うちKO勝ち52)3敗2分け
1980年から1987年までの間に、統一世界ミドル級王者として12度もの防衛を重ねた名王者。
サウスポーのオールラウンド・ファイター(サウスポースタイルだが元々右利きで右強打が武器だったので右構えにスイッチすることも多かった)で、あらゆるテクニックと強打、試合運びの巧さ、強靭なメンタルを備え、「ミスター・パーフェクト」と呼ばれた。

パンチ力、固いガード、打たれ強さに加え、テクニックやハングリー精神も兼ね備える。
同時代に活躍したスター選手たちのような派手な言動は好まず、現役時代は酒や煙草はおろか、菓子類やコーヒーでさえも口にしない修行僧のような生活を送っていた。
専門誌のパウンド・フォー・パウンドのランキングでは常に上位に名前が挙がっており、その実力はミドル級史上屈指と評価されることが多い。レナード、ハーンズ、デュランとともに1980年代の「黄金のミドル」時代を築き上げた男。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 マイク・タイソン
マイク・タイソン(Mike Tyson)
出身:アメリカ ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン区
1966年6月30日生まれ
58戦50勝(うちKO勝ち44)6敗2無効試合
デビューしてわずか1年8ヵ月、史上最年少(20歳5ヵ月)で世界ヘビー級王者となった。
翌年にはWBAとIBFのタイトルも獲得し、3団体の統一に成功。
”パウンド・フォー・パウンド”の名を欲しいままにする。

身長180cm。ヘビー級としては小柄なものの、巨漢ボクサーのガードを正面から悉く打ち破る桁外れのパンチ力と、モハメド・アリに並ぶほどのヘビー級史上最速のスピード、急所を正確に打ち抜く高度な攻めの技術、そしてガードのみに頼らず、ほとんどの攻撃に空を切らせる鉄壁を武器に次々と大男たちを沈めていき、アリ引退後のヘビー級停滞期を見事打ち破りパウンド・フォー・パウンドの頂点に君臨した。
最盛期のタイソンはモハメド・アリと並んで最強ボクサーの最有力候補である。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 フリオ・セサール・チャベス
フリオ・セサール・チャベス(Julio César Chávez)
出身:メキシコ ソノラ州シウダ・オブレゴン
1962年7月12日生まれ
116戦108勝(うちKO勝ち87)6敗2分け
1984年から1989年にかけて世界タイトル3階級を制覇。

歴代3位となる88連勝、最多世界戦出場数37、デビュー戦以来90戦無敗などボクシングの歴史における数々の記録を打ちたてた。
全盛期には類い希なるタフネスとスタミナを武器に絶大な人気を得た。
ロベルト・デュランなどと並び、ラテンアメリカを代表するスーパースター。
1990年代前半、マイク・タイソン低迷後のボクシング業界において数々のビッグマッチで活躍し、パウンド・フォー・パウンドの称号を欲するままにした。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 ロイ・ジョーンズ・ジュニア
ロイ・ジョーンズ・ジュニア(Roy Jones, Jr.)
出身:アメリカ フロリダ州ペンサコーラ出身
1969年1月16日生まれ
69戦61勝(うちKO勝ち44)8敗
ミドル級出身でヘビー級の王座を獲得した史上2人目のボクサー。ミドル級、スーパーミドル級、ライトヘビー級、ヘビー級の4階級を制覇し、長きに渡りパウンド・フォー・パウンド最強と目されていた名選手。

史上屈指の身体能力と評される選手。「スタイルがないのがスタイル」と言われ、相手に合わせて柔軟に戦法を変えることが出来る。
重量級としては圧倒的なスピードが武器で、腕を後ろに回してラッシュを次々と躱すなど、防御にも長けており、キャリアが非常に長い理由の一つである。
また、手数は多くないものの、飛び込みざまの左フック、急所を的確に打ち抜くコンパクトなコンビネーションなど、攻めの技術が多彩にして的確。特にジャブとブローが売りであった全盛期の彼には、チャンピオン級の選手であっても触れることすら困難を極めた。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 ジョー・カルザゲ
ジョー・カルザゲ(Joe Calzaghe)
出身:イギリス ウェールズ
1972年3月23日生まれ
46戦46勝(うちKO勝ち32)0敗
2007年、主要4団体(WBA・WBC・IBF・WBO)スーパーミドル級の実質的な統一世界王者に。
リカルド・ロペス、ロッキー・マルシアノ、スヴェン・オットケに続き4人目の無敗のまま引退した元世界王者。

サウスポースタイルと恵まれた体格を活かし、純粋な力だけに頼らず速度と技術力というスタイルをもって戦う、常にパウンド・フォー・パウンドの上位にランクインしていたスーパーボクサー。
最大の武器はサウスポースタイルからのマシンガンのような超スピード回転連打であり、その戦法はパワーに欠けるものの、驚異的な手数で攻め続け、対戦相手を圧倒した。
スーパーミドル級の世界王者に君臨し、10年間以上戦い続けた。
2009年、46戦全勝0敗というパーフェクトレコードを歴史に刻み、現役を引退した。
パウンド・フォー・パウンドと呼ばれる男達 オスカー・デ・ラ・ホーヤ
オスカー・デ・ラ・ホーヤ(Oscar De La Hoya)
出身:アメリカ カリフォルニア州
メキシコ系アメリカ人
1973年2月4日生まれ
45戦39勝(うちKO勝ち30)6敗
アマチュアではバルセロナオリンピックライト級で優勝(金メダル獲得)、プロでは史上初の6階級制覇を成し遂げるなど、アマ時代からエリート街道を驀進してきたその成功ぶりから「ゴールデンボーイ」の異名を持つ。

ボクシングのスタイルとしては基本に忠実でオーソドックスな戦法を得意とし、アウトボクシングからインファイトまで完璧にこなすコンプリートボクサーである。
コンビネーションが非常に多彩で、群を抜いた速度と技で翻弄する展開を好む一方、一瞬の隙を突く強烈な打撃力も併せ持っており、生涯の通算KO率は75%以上。
特に左フックを最大の武器とし、フィニッシュ・ブローとして数々のKO劇を彩った。
真のパウンド・フォー・パウンドは誰なのか?
ここに挙げたボクサー以外にも「リカルド・ロペス」「ファン・マヌエル・マルケス」などもパウンド・フォー・パウンドとして挙げられることがある。
◆直接対決について
シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、ロベルト・デュラン。
デラホーヤとチャベス、パッキャオ。
そして今回のメイウェザーとパッキャオなど最強同士の戦いも行われているが全盛期のタイミングがズレていることも多く、単純に勝った方が歴代最強というわけにはいかない。
◆階級制覇数について
ヘビー級より上がないため4階級、5階級など多くの階級を制したものが最強というわけにもいかない。
◆負けの数について
全盛期を過ぎても戦い続けた長いキャリアを持つボクサーが負け数が増え不利になるため、これまた単純には比較できない。
私個人としては、ヘビー級では小柄でありながら圧倒的なスピードと破壊力を誇ったマイク・タイソンこそが歴代最強のパウンド・フォー・パウンドだと考えている。
ただし、マイク・タイソンに関しては同時代に強いライバルがいなかったこと、全盛期が他の選手と比較して短かったことから最強ではないとのご意見も多いようです。
どこまで考えても答えの出ない「歴代最強は誰か?」。
あなたは誰だと思いますか?