松本大洋の他作品との親和性
孤高のゴリラの孤独を描いた「ダイナマイツ GON GON」
日本の兄弟/松本大洋 1995 - 安寧と怠惰
いつかの死におびえる2人の「ハルオ」
「何も始まらなかった一日の終わりに[ハルオの巻]」の主人公・ハルオ。
彼は人間の死について日々悶々と考えている小学生。
「どうして人は死ぬ?人は死んだらどこへ行く?」と。
学校もサボりがちで、同級生に「またはげまし学級に入れられちゃうよぉ」と忠告されるが、聞く耳をもたないハルオ。
そして、2010年代に連載された「Sunny」にもハルオは登場する。はげまし学級の存在も両作品に共通している。
思春期の準備段階である年頃の少年を扱った両作品。
短編集「日本の兄弟」のハルオは少しばかり臆病で、意地悪。
少しヤンチャだが、想像力豊かな「Sunny」のハルオと見比べてみるのも味わい深い。
絵のタッチが違う「お爺さん」
死を予感させる存在として「何も始まらなかった一日の終わりに[祭りの巻]」で登場するお爺さん。
本作では、主人公の死を強烈に浮き立たせる名脇役だが、「花男」のコミカルで温かな世界観に少しアクセントを与える存在として登場する。
ほぼ同じ意味合いの台詞だが、作品によって使い分けが明確。
前述の「日本の友人」で主人公が電車を待つシーン。
その駅名は「たから町」。そう、名作「鉄コン筋クリート」と同じ街である事が分かる。
松本大洋初期の本作。
そうした色々な実験がなされた短編集であり、今見ても非常に楽しめる作品となっている。