アニメ「宝島」のあらすじ
物語のはじまりは
13歳の少年ジム・ホーキンズは、1か月前に船乗りだった父親を亡くしたばかりですが、母親と一緒に宿屋も兼ねた居酒屋の「ベンボー亭」を切り盛りしています。将来は父親のように立派な船乗りになるのが夢ですが、そこに謎の大男「ビリー・ボーンズ」という男がやってきます。「片足の男」にひどくおびえていたビリーは、争いの末に亡くなってしまいます。
地元の名士トレローニと医師のリブシーと共に、ビリーの荷物を調べたジムは、かつてビリーが海賊フリント船長の手下で、財宝を孤島に埋めたことと、その島への地図を見つけます。

アニメ「宝島」第1話 トレローニとジム
アニメ語り第1回「宝島」 - Youtube Downloader mp3
トレローニとジブシーは船を仕立てて、財宝を探しに行くことになります。その船でジムも財宝探しに加わりますが、トレローニが船乗りの手配を頼んだのは、居酒屋を営んでいた「ジョン・シルバー」という、片足の男でした。コックとして自分も船に乗り込んだ、片足の男ジョン・シルバーは、かつて海賊フリント船長の手下で、フリント船長も恐れる操舵長を務めた男でした。

ジムとジョン・シルバーの出会いのシーン
ムービースクエア | 動画をもっと面白くするWEBマガジン ムビマガ!:劇場作品特集 劇場版 宝島/家なき子 劇場版
財宝をかけた、海賊たちとの戦い
船の中で、ジョン・シルバーと仲間たちの話を聞いてしまったジムが、反乱のことを船長に伝えたことで、かろうじて逃げ出すことができました。
宝の島に上陸したそれぞれの乗組員たちは、海賊ジョン・シルバーの一派と、船長やトレローニ、ジムたちの一派に別れ、どちらが先に財宝を見つけるか、戦いの日々が始まったのでした。
アニメ「宝島」の主な登場人物
ジム・ホーキンズ:清水マリ(成長後のジム:三ツ木清隆)

海賊ジョン・シルバー:若山弦蔵

オウムのフリント:北村弘一

海賊たちに対する、ジムのなかまたち
グレー:野島昭生

トレローニ:滝口順平

ジブシー医師:家弓家正

スモーレット船長:江角英明

アニメ「宝島」の魅力
主人公はジム・ホーキンズに間違いないのですが、アニメ「宝島」では、ジョン・シルバーがただの悪者ではなく、とても魅力的で人間的な、いわゆる「男の中の男」として描かれています。自分が助かるためには、平気で仲間を裏切り、踏み台にしていくところはありますが、それでもなお惹かれてしまうのです。
主人公であるジムは、ジョン・シルバーとはこういう男だったという、ナレーターのような存在にさえ感じ、本当の主人公はジョン・シルバーなのだと思わせるものがありました。
アニメーション、声優、そしてテーマソングの一体感
テーマソングは、オープニングもエンディングも、「町田よしと」が歌っています。GS時代は「白いサンゴ礁」がヒットし、ソロになってからは、映画「野性の証明」のテーマ「戦士の休息」が有名です。
オープニングは、これから夢に向かって旅立とうとしている期待のようなものを、エンディングは旅先から母親への手紙という形式で、アニメでドキドキした心を落ち着けるような穏やかな曲です。
テーマソングの作詞を手掛けたのは、岩谷時子
歌手の越地吹雪のマネージャーを務めたことでも有名ですが、そのかたわらで越地吹雪のシャンソンショーの訳詩を手掛け、のちには多くの歌謡曲の作詞をしました。越地吹雪の歌った「愛の賛歌」のほかに、ザ・ピーナッツや加山雄三、郷ひろみなど、その時代ごとのヒット曲を数多く作り出しました。
晩年はミュージカル「ミス・サイゴン」の訳詩も手掛けました。
音楽担当は、劇伴作曲家デビューの羽田健太郎
ピアニストとして、N響定期公演ではソリストも務めたこともあり、スタジオミュージシャンとしてジャズやポップスも演奏するようになり、バラエティ番組、クイズ番組にも多く出演しました。
このアニメ「宝島」の音楽を担当したことで、その後多くのアニメ、ドラマ、ゲーム音楽などを手掛けるようになりました。テーマソングのほか、挿入歌などもすべて担当しました。
クラシックをベースにして、番組を盛り上げる素晴らしい曲を作っています。
ジム役は、声優清水マリ
ジム・ホーキンズを演じるのは、声優の清水マリ。アニメ「鉄腕アトム」のアトム、「妖怪人間ベム」のベロなどのほかに、NHKの教育番組でも、多くのキャラクターを演じました。
アニメ「宝島」の原作は、冒険小説の名作
原作の「宝島」は、1883年に出版されましたが、子供向けの雑誌に連載されていたものでした。
児童文学ではありますが、題材が海賊の財宝で、海賊も出てきますから、不道徳な挙動というのも無理はありません。逆に、ジョン・シルバーが悪ければ悪いほど、ジムの純粋さが前面に出て、読んでいる子供たちはハラハラしながらページをめくっていたのだと思います。
原作者のロバート・ルイス・スティーヴンソン

ロバート・ルイス・スティーヴンソン
ロバート・ルイス・スティーヴンソン - Wikipedia
イギリスのスコットランド、エディンバラ生まれの小説家、冒険小説作家、詩人、エッセイストである。弁護士の資格も持っていた。「スティーヴンスン」「スティーブンスン」とも表記される。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3ロバート・ルイス・スティーヴンソン - Wikipedia
2人の子供がいる女性と結婚しましたが、その子供に聞かせるために書いたものという事ですから、実の子供ではなくても、愛情を注いでいた様子がうかがえます。
その後「ジキル博士とハイド氏」、「新アラビア夜話」などの名作を多く出版しました。

アニメ「宝島」テーマソングのレコードジャケット
宝島 : 昭和のテレビアニメ&特撮ヒーロー
この「宝島」以降、片足で肩にオウムが止まっている海賊のイメージが定着したと言われています。確かにその後の多くの作品でも、海賊というと片足だったり、手がフックになっていたりします。そして海賊船には必ずオウムが乗っています。
大胆な演出は、家なき子も手掛けた出崎統
スポーツ物の印象が強いのですが、家なき子や宝島などの、いわゆる名作と言われるお話も多く手掛けています。アニメとしては、「家なき子」と「宝島」の2作続いて出崎統作品が放送されました。
ジョン・シルバーのその後「夕凪と呼ばれた男」
一等航海士になったジムが、ジョン・シルバーのその後を語る作品が、宝島メモリアル「夕凪と呼ばれた男」として、数分間の短編アニメとして、ほぼ同じスタッフで制作されています。
ジムは、少年の頃の夢を実現して、立派な船乗りになります。ジョン・シルバーやグレイなど、宝島を巡ってであった人々の、様々な生き様をみて、男として成長した姿でした。
アニメ「宝島」の最終話にも、その後のジョン・シルバーの姿が描かれています。「その気になったら、俺たちはまだまだ飛べるんだ」というセリフが印象的です。
このアニメ「宝島」を最後に、日本テレビ系の日曜18時の子供向け番組は終了します。ジョン・シルバーとともに、一つの時代の変わり目を感じました。