不思議な青春コメディ 「の・ようなもの」

あらすじ

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尾藤イサオの歌声が絶妙な予告映像
鑑賞者レビュー
淡々とした日常が描かれた作品

絶妙な会話の間
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タイトル「の・ようなもの」の意図
森田芳光監督は、本作で監督を務めるまで8mmフィルムで自主制作を撮っていました。
ぴあフィルムフェスティバル入選作品「ライブイン茅ヶ崎」では、ごく普通の若者たちを、ごく普通に描いた特に大きな事件も起こらない不思議な映画を制作しています。
本作での何気ない台詞も、若者の「普段使い」の言葉なので、よりリアリティを感じます。
独特な人間模様が描かれた本作。
その原点はそうした過去の作品制作によって培われたのかも知れませんね!

落語のリアリティは、森田監督の育ちにあった!
落研だった森田芳光

映画監督・森田芳光が北川景子に渡した自作「の・ようなもの」とは [T-SITE]

具体的には、「できますものは 汁に柱に鱈昆布 アンコウのようなもの 鰤にお芋に酢蛸でござい」といったくだりから引用されました。
劇中でしんととが、東京を夜な夜な歩きながら続けるシーンがあります。
道中、地名や風景を語るのは、道中づけという落語における語り口の一種です。
臨場感をお客さんに与える意図があり、本作ではそれに並行して、高校生の彼女がしんととをバイクで追いかける際の時間経過を表現していました。
さすが落語に造詣が深い森田監督ならではの演出でした。
エピソード

映画監督・森田芳光が北川景子に渡した自作「の・ようなもの」とは [T-SITE]

一般的な青春群像映画とは違って、いわゆる甘酸っぱいラブコメ感が少ない映画です。
男女の恋愛が主ではなく、それが淡々と描かれている点が、本作のふわふわとしたおかしみを演出しています。
例えば、劇中、若い男女の出会いと別れが感動的でなく、「普通のこと」として扱われます。
青春にはつきものである恋愛模様に焦点を当てずに、それらも日常を形成する一つの出来事だと言うように淡々と物語が進行していきます。
純朴な栃木訛りの主人公を中心に据える事で、それがより際立ちます。
常にマイペースな主人公を通して見た世界は、コメディ映画にありがちな面白い出来事に溢れた世界ではなく、普通の日常があるだけでした。
その映画らしくない世界、つまり私たちの現実的な世界をあえて映画化する点に、この映画の独特な奇妙さが内包されていると感じました。
これが森田芳光の35mm映画・初監督作品だと知り、その人間に対する洞察力に驚愕したのを思い出しました。