「ハイドライド」シリーズ
PC-88メインで開発、他PC機種へも移植されていきました。
「ハイドライド」「ハイドライドⅡ」「ハイドライド3」が一般的に知名度が高く、総称して「ハイドライドシリーズ」と呼ばれます。

「ハイドライド」シリーズ(T&E SOFT)
「ハイドライド」(1984年12月13日)

「ハイドライド」(1984年12月13日)
「ハイドライド」ストーリー
人と妖精が共存する異世界の王国フェアリーランド。この国では3つの宝石(賢者の石)の力によって平和が保たれていたが、悪い心を持ってしまった1人の人間により宝石(賢者の石)の1つが奪われ、力の均衡を失ったことで、封印されていた悪魔バラリスが覚醒する。
王国はバラリスの魔力により崩壊し、国中には怪物がはびこり、王国のアン王女も呪いにより妖精の姿にされいずこかへ連れ去られる。そんな中、ジムと名乗る勇敢な若者が立ち上がった。
「ハイドライド」対応機種
【PC-8801以降】
1984年12月13日発売。本作のオリジナルとなる版。BGMはビープ音1声のみで構成されており、処理の間に発声ルーチンを挟む形で演奏される。
曲は他の機種と異なり、ゲームスタート時にはビゼーの組曲アルルの女に含まれるファランドールから数小節を奏で、ゲーム中は、同じく、ビゼーのオペラカルメンに含まれる闘牛士の歌からの数小節を繰り返し演奏する。開発にはキャリーラボのBASE-80が使用されている。
【X1シリーズ】
1985年1月発売。他の機種では画面端に移動すると切り替わる方式だったフィールドマップが、X1の持つPCG機能の利用により、背景がスクロール式になっている。また、マップパーツを多く保持し(256種類、他機種版の約5倍)、他機種よりも美しいグラフィックス表現を実現している。
PSGによるオリジナルBGMの演奏、画面切り替えによって回避できた敵が回避できなくなる他、ボスが大変弱く、登場する敵キャラクターの増減もあった。PSG搭載機で演奏されるBGMはこの機種と同じ曲である。
【PC-6001mkII以降】
1985年2月発売。画面解像度は低く色も特殊なものの、PSGによる3重和音のBGM再生、ジョイスティック対応、画面高速切り替えなど、PC-8801版よりゲームとしての完成度が高かった。
PC-6001mkII以降用のカセットテープ版とPC-6601以降用のフロッピーディスク版、フロッピーディスクのPC-6601SR専用版が発売された。
【MSX】
カセットテープ版が1985年3月発売、要メインメモリ32KiB。約半年後の11月にROMカセット版が発売されている。64KiBのメモリを前提としたゲームを32KiBに収めるため自己書き換え、データの圧縮等により、ほぼ同内容を実現したほか、空いた部分にメモリセーブ、画面切り替えスクロールなどの処理が実装されている。
ユーザーの強い要望によって実現したROMカセット版はメインRAM8KiBの機種での動作を実現し、パスワードを利用したセーブ方式や、5段階の速度調整機能があるほか、テープ版では1色だった妖精も各々に色が付けられることとなった。
【MSX2】
1985年7月発売。MSX2の登場とほぼ同時期のリリースだった。グラフィック性能に合わせてVRAM64K用(16色)、VRAM128K用(256色)からの選択式。カセットテープ版とフロッピーディスク版が発売された。
後に旧パッケージゲームを付録として添付していた月刊誌MSX-FANが、VRAM128K用(256色)のみを収録している。
【FM-7シリーズ】
1985年4月発売。FM-7のキー入力周りのハードウェアの都合上、操作がしにくかったため難易度を下げてバランスが調整された。また、プログラマーの一存で、他機種にはない人魚、ラドン等の隠れキャラクターが存在する。
【PC-9801U/F以降】
1985年9月発売。PC-8801版を完全に再現することを目指して移植されている。10段階の速度調整機能があった。
【MZ-2000/2200/2500用】
1985年12月発売。キャリーラボによる移植、並びに販売。PC-8801版にI/O周りのパッチを当て処理を実現しているため、再現性は非常に高い。発売の経緯については、前述の手法によって動作するものが完成した後、打診が事後にT&E SOFTにあったというもの。
カセットテープ版で発売され、テープのA面にMZ-2500、2200用のカラー版を、B面にMZ-2000用の「グリーンディスプレイ」版を収録している。グリーンディスプレイ版はグラフィックスRAMの3プレーン目を、カラーディスプレイ版は、テキストVRAMをワークエリアとして利用している。MZ-2500ではMZ-2000モードでの実行が必要。MZ-2520/2861ではMZ-2000モード並びにデータレコーダが削除されたので動作しない。
「ハイドライドⅡ」(1985年12月13日)

「ハイドライドⅡ」(1985年12月13日)
「ハイドライドⅡ」ストーリー
かつて怪物に支配された時代が終わりを告げ、フェアリーランドは平和な日々を取り戻していた。しかし今再びフェアリーランドの地下深くで邪悪に満ちた意識が覚醒し、新たな怪物を創りあげ、死者を蘇生して広大な地下世界を創り上げた。
そのことにいち早く気づいた修道僧たちは、人々にこの異変を説いたが、彼らは平和な日々に浸かりきっているため聞き入れてもらえなかった。次第に邪悪な力が地上へ及ぶ中、神は人間の中からまだ心の汚れていない一人の男の子をフェアリーランドへ召喚した。
「ハイドライドⅡ」対応機種
【PC-8801シリーズ】
1985年12月13日発売。基本的にBGMは無く、効果音のみで進行する。タイトル画面、精霊登場時、ラスボス出現、エンディング等のシーンでのみ、Beep音によりメロディーが流れる。
幾つかの英単語についてスペルミスが存在しており、MZ以外の機種では発売時期がずれたこともあり移植時に修正された。V1モード専用のため、V2モードでは表示色がおかしくなる。開発にはキャリーラボのBASE-80が使用されている。
【X1シリーズ】
1986年2月発売。PSG音源に対応しており、全シーンにBGMが付いている。また、画面切り替え方式の選択が可能となっている(瞬時切替/スクロール切替)。PCG書き換えによる、川、マグマが流れる処理が追加されている。カセットテープ版とフロッピーディスク版が発売された。
【FM-7シリーズ】
1986年2月発売(FM-77版は1986年11月発売)。メインテーマ(タイトル画面)とエンディングテーマの二曲がFM音源に対応。他のBGMはX1版等と同様、PSGで演奏される。FM-7/NEW7用のカセットテープ版とフロッピーディスク版(5"2D)、FM-77以降用のフロッピーディスク版(3.5"2D)が発売された。
カセットテープ版では、主人公の姿が武器と防具の脱着に関係なく、フェアリーランドでは何も装備せず洋服姿に、地下帝国では剣と鎧と盾が装備された姿になっている。敵キャラもいくつか削減・共通化されていて、同じ姿で違う名前になっていたり、主人公の洋服姿と同じものも存在する。
【MZ-2000/2200/2500】
1986年9月MZ-2000/2200用のフロッピーディスク版(5"2D)と、MZ-2500/V2用のフロッピーディスク版(3.5"2DD)が発売された。前作と同じく、移植を行ったのはキャリーラボだが販売元はT&Eソフトになった。スペルミスの放置や挙動などから、PC-8801版をベースにI/O周りを書き換えることにより移植していると思われるが、地下帝国へのパスワードは異なる他、スタッフロールに移植者の名前が追加されている。
MZ-2500版はメディアが3.5インチ2DDである以外は同一であり、MZ-2000モードでの実行が必要。グリーンディスプレイモードも実装されており、起動時に選択出来る。前作同様、MZ-2520/2861では動作しない。
【MSX】
1986年11月発売。PSG音源に対応。低解像度の都合上、マップ細部が若干変更されている他、X1同様PCGの書き換えによる演出がされている。電池式バッテリーバックアップ方式のROMカセット(1メガROM+SRAM)で発売。
ROM容量がぎりぎりだったためか、ゲームの進捗フラグは厳密な物ではなく、それを利用したアイテム、所持金の増量、本来必要なアイテムを入手せずにクリアする事などが可能になっている。
「ハイドライド3」(1987年11月21日)

「ハイドライド3」(1987年11月21日)
「ハイドライド3」ストーリー
全ての災厄の元となったエビルクリスタルが砕けた後、再びフェアリーランドは平和を取り戻し、長い月日が流れた。歴史を重ねるうちに王国は発展を遂げ、人々は街を広げ、豊かな生活を謳歌していた。次第に魔法は生活に溶け込み、妖精たちの姿も見られなくなっていき、フェアリーランドも人間の世界のようになっていった。
だが、そんなある夜に、地響きとともに巨大な火柱がフェアリーランドに立ち昇り、その翌日から各地に不思議な現象が起こるようになり、不思議な扉、地割れ、怪物たちが現れた。修道僧たちは、この原因の究明を一人の若者に命じた。
「ハイドライド3」対応機種
【PC-8801mkIISR以降】
1987年11月21日発売。サウンドボード2対応(初対応)。
FDDがインテリジェント型のため、FDDからのデータの読み込みと、ゲームの処理が同時に行われることによって実現したとされる。このため、CPUがデータをPIO転送する機種への移植は困難になった。
拡張RAMに対応し、ディスクキャッシュとして利用でき、1MB搭載されている場合、オンメモリで動作する。
アナログパレットに対応しており、PCGを持つ機種のみだった画面のスクロール切り替えも実装された。
BGMは、SSGにメインを割り振り、残りのパートが拡張される形でアレンジされているため、OPNA、OPN、SSGと別の音源でありながら大きな違和感を生まないという形になっている。サウンドボードIIではFM音源部分のパンポット、リズム音源パートが追加されている。
【MSX】
1987年12月発売。ROMカートリッジ。データ保存先はテープ・PAC(SRAMカートリッジ)に対応。音楽はPSGのみ対応。
副社長の「容量が足りないならしょうがない」という英断で、RPGとしては初の4Mビット大容量ROMが採用された。ROMカートリッジはデータ転送を伴わず、実メモリ空間にマッピングできる形であるため、移植が実現できたとされる。
MSX1版は画面切り替えスクロールを実装した。
MSX1版でも、その細かなマップパーツにより、比較的奇麗な画面が描画される。MSX1の低解像度で漢字表示を実現した事から、判読が困難な文字もあり、解読表が説明書に添付されていた。
ROMのみではセーブが不可能であり、テープセーブにしても説明書が無いと保存操作が分からない作りとなっている。実際は宿屋でクイックセーブとSRAMセーブが同時に行われるため、電源を入れっぱなしにしてプレイすればゲームオーバー後もセーブ地点からロードが可能。
【MSX2】
1987年12月発売。ROMカートリッジ、データ保存先はテープ・PAC(SRAMカートリッジ)に対応、PSGのみ対応。
MSX1版とは異なり、スクロール切り替えではなく単なる画面切替。MSX2ならではの高解像度モードと16色表示により、PC-8801mkIISR以降版以上に美しいグラフィックを実現している。
オープニングでは2画面切替による擬似32色表示を実現した他、アニメパターンも増え、表現が自然になっている。
【X1】
1988年7月発売。FM音源に対応。上記の理由により、困難とされた移植であり、当初はDMAの使えるTurbo専用で発表された。しかし、BGMルーチン等の工夫により、若干他機種に比べて処理が重いものの、最終的にX1でも動作するように移植された。
BGMはOPMに対応しており、音色、パート割りはPC-8801mkIISR以降版と異なり、PSGを利用せず、FM音源のみで演奏されるBGMは、他の機種よりも丸いイメージを与える。また、FM音源ボードが未搭載の場合、MSXシリーズ同様PSGでBGMが演奏される。
オープニングのアニメーションパターンも88版に比べ追加された。