こうして女子大生コンビだったオアシズは、1992年にプロデビュー。
大学を卒業するかしないかの頃に人力舎に所属し、芸人としての活動をスタートさせた大久保佳代子は、就職活動はまったくしなかった。
周りから
「売れる保証なんてないのに千葉大卒のキャリアを捨てて芸能界に飛び込むのは怖くないの? 」
といわれたが、不安は一切なく
「せっかくのチャンス。
2年でもいいし、3年でもいい。
やってみてダメだったら就職活動をやり直せばいい」
と考えていた。
「新しい波」の司会は、新人アナウンサーの西山喜久恵。
早稲田大学の寄席演芸研究会のコンパで、上智大学生だった西山喜久恵に初めて出会った大久保佳代子と光浦靖子は、
「私たちブスは早稲田の男子から口をきいてもらうこともなく、1番端っこのブス席で飲んでたんです。
そしたら「今日はゲストとして、なんとフジテレビに内定を受けたアナウンサーが来ます」って西山さんが現れたんです」
「男子からバカみたいにチヤホヤされてたアンタには私たちブスの苦しみがわかってないから」
とまくしたて、西山喜久恵は
「いや、そんなことないです」
と否定したが、観ている者の多くは
「わかるはずがない」
と共感。
ブスの自虐ネタという新たなジャンルを開拓したオアシズは、やがて
「ブスだけど頭はいい」
「ブスだけど金は持ってる」
「ブスだけど性欲が強い」
という強烈なキャラに進化。
1993年4月、毎週木曜深夜、フジテレビで「とぶくすり」が放送開始。
「新しい波」に出演したナインティナイン、極楽とんぼ、よゐこ、光浦康子がレギュラーに抜擢されたが、大久保佳代子は
「笑えないブス」
という理由で外され、
「光浦さんはテレビ的なブスだけど、私は自分のことブスって思っていなかったから。
そういうのが1番タチが悪い」
と自己分析。
再びメンバーと合流するのは、6年後(1999年4月17日)の「めちゃ×2イケてるッ!」の出演時となる。
それまでの間、大久保佳代子は、オアシズとして単独ライブや営業、たまにラジオやテレビに出演。
相方の光浦康子がテレビで活躍するのをみながら、劇団の舞台に立ったり、男に狂ったり、親からの仕送りを劇団のために使ってしまったりしながらOLをしながら芸人を続けた。
「お笑いコンビの片方が先に売れていくのはよくあること」
と、いつか2人でブレイクする日を信じ、ジッと耐えていたが現実は厳しく、一向にコンビとしての仕事は増えない。
大久保佳代子は思い切って光浦靖子に電話をかけ、
「あっ、もしもし光浦さん。
最近やってないじゃん。
オアシズライブ。
そろそろ派手に1発やりますか!」
と提案するも仕事場にいるらしい光浦靖子に、
「いやースケジュールないしさ。
じゃあ、いま忙しいんで、また。
とりあえずナシってことで」
とまるで相手にされずに電話を切られ、コンビとしての将来に不安を覚えた。
芸人の仕事が激減した大久保佳代子は、節約をしながらOL生活を送りつつ、芸能人にはできない、自由な恋をした。
会社には必ずお茶碗1杯の白米をアルミホイルを巻いて持参し、昼食は、そのおにぎりとコンビニで買ったスープとペットボトルのお茶で済ませ、
「今日は250円しか使ってない」
と喜び、退社後、スーパーで野菜の値段の変動に一喜一憂しながら、半額シールや割引シールが貼られた商品を探し、キズものの野菜も
「食べちゃいば同じ」
とカゴへイン。
会社のドアノブを握ったとき、
「あっエロい」
と思ってしまう大久保佳代子は、男性の上司にパソコンの操作を教えてもらい、
「ここをクリックだよ」
といわれると
「私もクリックして」
15~16時くらいに階段を歩く自分をみて、パッと離れる不倫カップルを何度も目撃し、踊り場を
「やり場」
と命名。
一方、給湯室は
「女の聖域」
と呼んだ。
女子会で
『これまでどんなところでエッチしたことある?』
という話題になると
「幕張メッセ」
と答え、精液を
「栄養ドリンク」
と呼んで盛り上がったが、男性を含めた合コンでは、しゃべりすぎないように注意。
その理由は
「しゃべらない女の子の方がモテる。
しゃべらない方が、男はコイツ何考えてんだろ、コイツ何を思ってんだろ、裸どうなってんだろ、知りたい、知りたいとなる」
そしてトイレに行くときにボディタッチし、男性の反応をみて
(イケるか)
と探る。
触るのは平気だが自分が触られるのは苦手で、
「ビビッとなる過敏になって全身が性感帯になっちゃう」
カラオケにいって、
「今日何とかしてほしい」
と思うと、aikoの「カブトムシ」をリクエストし
「甘い匂いに誘われた私はカブトムシ~♪」
と歌った。
「好きなものをいつ食べるか。
最初に食べる人は自分の欲に正直で大胆な人。
最後に食べる人は慎重で堅実な人。
私は1発目から好きなものに飛びつく勇気はないが、タイミングを見計らいガブッといく」
「二日酔いになるくらい酔っぱらったら好きな男子にグイグイいけた」
「二日酔いという代償を払って恋愛を手に入れていた」
という大久保佳代子は、後日、
「駅前の歩道橋で年下男子のケツ追っかけまわしてましたよ」
といわれたり、ポケットから記憶にない人たちの名刺が出てきたり、撮った覚えのないツーショット写メがあったりした。
酒に酔って好きな男子の家に押しかけたものの、何も起こらず、始発に乗って爆睡。
気がつけば14時で、その間、電車は三鷹と千葉を何往復もしており、荷物はすべてなくなっていたこともあった。
二日酔いの朝は、紙パックの乳酸菌飲料「ピルクル」を一気飲み。
その後、インスタント天ぷらそば「緑のたぬき」をお湯少な目、味濃い目でつくり、ギトギトのスープまで飲み干し
「金使って何も覚えてない時間を過ごして、その代償がこの気持ち悪さか」
と落ち込んだ。
あるとき自分のことを好きといってくれる男性が現れ、カラオケの後、受け付けで支払いをしているとき、チュッと大久保佳代子のほっぺにキス。
大久保佳代子は、その男性に対しそれほどでもなかったが、頬がドクドク、ドクドクとしてきて、
「今夜は帰りたくない」
その後、
「チョメチョメ、チョメリンコみたいなことになった」
行為の最中は基本的に目をつむっているが、たまに開けて相手の様子をうかがい、常に自分が相手にどう見えているかを意識し、特に自信がある顎から首にかけてのラインをみせるようにする。
あるとき突然、彼氏が
「好きな子ができた」
と別れを告げて部屋を出ていったとき、大久保佳代子は追いかけ、人目もはばからずすがりつき、泣いて、
「とにかく部屋に戻ろう」
2人で部屋に戻ると
(お酒を飲んで感覚を麻痺させればどうにかなるんじゃないか)
と思い、飲ませたが、最終的に、
「佳代子といるとしんどい」
といわれ
(マジか。
こんなに金貸してるのに)
と思いながらサヨナラしたこともあった。
20代~30代前半、自分から嫌いになることはなく別れは必ず相手から切り出された大久保佳代子は、性欲がたまると近所のプールでがむしゃらにクロールを泳いだ。
ちなみに男性は
「ガッチガチが大事」
だという。
逆に女友達に彼氏ができると心がザワめき、
(どんな男なのか?)
と非常に気になった。
あるとき女友達に、
「彼のバンドがライブするから観に行こう」
と誘われ、会場の客が15人だと安堵した。
「友達の彼が素敵な男ではなく、少し残念な男であるほど安心する」
女友達にインド人の彼氏ができて一緒に飲み、少し真面目な話をしているとき、
「ドウニカナルヨ」
「イマガダイジ」
「ダイジョウブ、フカクカンガエナイ」
といわれると、
(お前は少し考えた方がいい!)
結婚式に呼ぶことはないが呼ばれることは多く、
「他人の幸せを祝うためにいくら金を使えばいいんだ。
取り返す日は来るのか?」
と思いながら祝儀を用意。
挨拶を頼まれると
「結婚には3つの袋が必要です。
小さな金玉袋と中くらいの金玉袋と大きな金玉袋です」
と下ネタを入れつつ、最後に、
「新郎の友達との出会いを期待してま~す」
そして
「元とってやる」
と延々とアルコールを流し込み、デキ上がると知らない人の会話に入り、テーブルからテーブルへ。
こうして結婚式では常に泥酔。
駅のホームで引き出物の巨大な鯛の形をしたアップルパイにかじりつき、次の日に起きて後悔に襲われ、頭を抱えると枕元に食いかけの鯛のアップルパイが転がっていたことがあった。
ある日、「めちゃ×2イケてるッ!」のスタッフがオアシズの単独ライブをみて、
「大久保って面白かったんだ」
と気づき、たまにめちゃイケにゲストとして出演するようになった。
すると視聴者にバカウケ。
片岡飛鳥は、
「当時の僕は、マンガみたいなブスだった光浦にだけ目を奪われて、目立たなかった大久保のは起用しなかったんです。
奮起した大久保は何年も遅れて「めちゃイケ」に合流するんですけど全然見る目ないんですね」
と反省。
1999年4月17日、大久保佳代子は、めちゃイケのレギュラーとなった。
「めちゃイケのレギュラーに入れてもらったのがちょうど30歳なんですよ。
だからまあ「とぶくすり』」から7、8年はあるのかな。
あの期間があって、あの入り方で良かったなと。
今こうやって振り返ってみるとそう思います」
大久保佳代子は、めちゃイケのレギュラーになってもOLの仕事を続け、それどころかOL兼芸人というキャラをネタとして使用。
北海道ロケで
「翌朝までに東京に戻らなければならない」
というナインティナインのために呼ばれた6人乗りのセスナ機に
「私も明日仕事があるので」
と便乗した。
大久保佳代子は、朝、番組の打ち合わせをして、それからOLの仕事をして、夜、収録ということもあったが、結局、30代後半まで14年にわたってOLを続けた。
「誰に知られるわけでも褒められるわけでもないし、小さかったけど、達成感や爽快感がありました。
ありがとうという声をもらえることもあった。
いい人間関係ができて、年の近い上司や同僚と飲みに行く楽しみも知りました。
しかも、OL時代に大切にしていたことは、バラエティーの世界でも求められることでした。
周りの人がどう思っているか、ちゃんと考えること。
先を読んで、物事を判断していくこと。
常識をちゃんと持っておくこと。
それこそ、非常識なことは、常識がわかっているからできるんです」
大久保佳代子は、先に売れた光浦靖子のことを
「面白さでは敵わないけど人間性は私の方が上」
と自負していた。
一方、
「眠れる獅子がやっと起きた」
と喜んでいた光浦靖子は、大久保佳代子が売れて、大きく取り上げられるようになると
「いや私の方が面白いはず」
「こんなに真面目に生きてきた私が負けるはずがない」
と腹を立てた。
ある日、光浦主催の女芸人の飲み会で、光浦靖子が
「女芸人っちゅうのは男の何倍も頑張らんとトップとれんダニ」
というと後輩は、
「さすが光浦さん‼」
とヨイショッ。
後輩芸人から尊敬されている光浦靖子は、大久保佳代子にとっても自慢の相方だった。
そして後輩に
「大久保さん、今日の服なんか色っぽい」
「なんか最近キレイになりましたね」
とホメられると、自分も少しいい気になった。
しかしそんな浮ついた大久保佳代子を光浦靖子は許さず、次の日、仕事場で会うと、
「大久保さんさ、その服、胸開けすぎじゃない。
芸人が色っぽくなってどうすんの。
男に媚び売っちゃダメだ」
そして仕事の移動中も
「大久保さんさ、最近エッチしてる?」
「なんで?」
「いい?
女芸人はエッチしちゃダメ。
変な色気が出ちゃうから」
さらに食事中、自分の弁当に入っているおかずを大久保佳代子に差し出し、
「はい、これも食べな。
今の体型、中途半端。
もっとブタみたいに太らないと面白くないダニ。
極楽(トンボ)の山本さん、みてみ。
太ったから売れたんだよ」
芸人たる者、女を捨て常に面白くあるべきと説く光浦靖子に大久保佳代子は、
「うん、私太る!」
と爆食いした。
そんな光浦靖子の言葉を信じた大久保佳代子を信じられない悲劇が襲う。
光浦靖子がスタッフに
「マジ!
あの占い師は当たるって評判ダニ。
仕事運も男運も最高。
仕事は今調子いいから、あとは男だけダニ」
と話すを聞いて、
「男に媚びるな」
といい続けてきた相方の思わぬ一言に
(きっと一瞬の気の迷いだろう)
といい聞かせたが、1週間後、ラジオの仕事があり、
「おはよー」
と楽屋に入ってきた光浦靖子に、
「遅かったじゃん。
どうしたの」
といって、その顔を見た瞬間、言葉を失った。
あろうことか、光浦靖子は男にモテたいがためにエステサロンでまつ毛を植毛していた。
「プチ整形しちゃったダニ」
その瞬間、大久保佳代子の中で光浦靖子に抱いていた尊敬の念は音を立てて崩れていった。
ラジオ収録後、
「じゃあ、私と大久保さんどっちとつき合うっていったら私の人」
という光浦靖子に男性スタッフが困った顔で手を上げると、
「これは男できるのも時間の問題ダニ」
それをみて大久保佳代子はついにキレた。
「オイッ、なにがプチ整形だ。
私はアンタにいわれて地味な服着て、太るためにバクバクバクバク豚みてえに食わされて・・・
アンタが女芸人が股を開けば開くほど笑いが取れなくなるっていうから、エッチもしないでここまで来たのに」
その後、2人は醜い言い争いを開始。
「大久保さんは色気づいたらダメ」
「なんで?(怒)」
「色気がチョコチョコ出るブスは笑えないって。
私は大久保さんに早く立派な芸人になって欲しくて、笑えるブスになってって」
「私は笑えますよ。
笑えるブスです。
そんなこといったら、あなた、今や笑えないブスですよ。
キツいですよ、ホントに」
「私はいつでも笑えるブスですよ」
「いやいやかわいそう。
悲惨だもん」
「笑えるブスです!」
「笑えない‼」
「笑えるブスです‼」
「笑えない‼」
友人の結婚式に参加したとき、光浦靖子が20万円のシャネルのネックレスなど総額80万円の高級ブランド品で身を固めているのに対し、大久保佳代子の衣装さんからの借り物。
その後、オアシズとして仕事があった。
2人が出演した番組のプロデューサーは、人気番組「ロンドンハーツ」も担当していて、収録後、
「大久保さん、今度、格付けにも出てくださいよ」
といわれた。
光浦靖子も出演している「格付けしあう女たち」は、多くの女性芸人がそこからブレイクした人気コーナー。
「いやあ、大久保さんだったら面白くなると思うな」
というプロデューサーに
(やった!
これで私も人気女性タレントの仲間入りができる)
と思ったが、共に喜ぶべき相方の光浦靖子が
「いやあ、大久保さんは格付け出ても、どうせ一言もしゃべれんダニ」
と発言。
(ハッ?)
大久保佳代子が驚いていると
「光浦さんがそういうんだったら・・・やめときますか。
じゃっ、またよろしくお願いします。
お疲れ様」
といってプロデューサーは去り、相方の信じられない一言でチャンスは一瞬にして消え失せた。
さらに光浦康子に、
「無理なことを考えんほうがいいダニよ。
大久保さんも仕事は選ばにゃいかんよ」
といわれ、ついに大久保佳代子はキレた。
「仕事を選べ?
選ぶ仕事がないから困ってんでしょうが!
なんでお前ェに私の仕事を断る権利があるんだよ。
せっかくのチャンスを潰しやがって」
その後、2人は醜い言い争いを開始。
「お前に潰されてなかったら梨花のポジションは私だった」
「なんだ。
そのノープラン」
「テレビ観てて梨花のいうこと、いちいちうなずけますもん(怒)!
大体、最初コンビ組んだとき、私が先に売れて引き上げるからっていっただろ」
「引き上げただろ。
いろんな仕事振りましたよ。
愛のエプロン(料理バラエティ番組)でも、私土下座してペアマッチにしてくれって。
ダダズベリして私すら呼ばれんくなったもん。
自分がケガしたもん。
お前はすぐタレントのフリするけど素人だぞ」
りんご、グレープフルーツ、キャベツ、炭水化物カット、様々なダイエットに挑戦し、途中で挫折し、リバウンドを繰り返した来た大久保佳代子がスリムになれたきっかけは、失恋だった。
居酒屋で出会い、ビビビと感じたどストライクの男性とデートを重ね、
「これはイケる」
と思っていたが、突然、避けられるようになった。
何度誘っても断られ、最初は
「病院に行く」
「用事がある」
などとまともな理由だったが、やがて
「友達のネコにエサをあげにいく」
「水が届く」
など嘘丸出しとなり、恋は終了。
失恋後、何も食べられなくなった大久保佳代子は、ほぼアルコールだけで1ヵ月を過ごした。
すると何の苦労もしないまま、体重が2~3kg減った。
その瞬間、落ち込んでいた気持ちは消え、
「私ちょっといんじゃない」
と家の中を裸で歩き回った。
別れた男性から連絡が入っても
「抱かせませんから!」
と上から目線。
「見返してやる」
とさらにエクササイズを始め、
「抱かせたいと思わせる!
でも抱かせない!」
と念じながらダンベルを上げ下げ。
食生活にも気をつけ、目指すのは
「中間管理職のお疲れ気味のおじさまが抱きたいと思うカラダ。
やせすぎでも太りすぎでもない、ほどよく熟したいやらしいカラダ」
失恋をきっかけに手に入れたボディを維持すべく、節制し、体を鍛えることで意外な変化も起きた。
それは「妄想力」
若い頃、
「母親と一緒に引っ越しを手伝ってくれる男友達。
3人で引っ越しそばを食べにいき、そこで談笑中に母親が投げかけた「うちの佳代子をもらってくれない?」という冗談に、彼は「僕はいつでも準備できてるんですけどね」と笑う。
ふと流れる心地よい沈黙。
私は黙ってそばをすすり続ける」
など旺盛な妄想力を発揮して楽しんでいたが、年齢と共に衰え、
「ラインやメールのアドレスを交換するなど前向きな疑いがあれば・・」
「10%の可能性があれば・・・」
などと現実的で消極的な発想になっていた。
それがダイエットによって図々しい妄想力が復活。
「妄想って体力がないと、健康な肉体に健全な性欲が宿っていないとできない」
と悟った。
若き頃はガムシャラにやり、40代半ばになってある程度の目標を達成した大久保佳代子は、
「何のために生きてるんだろう」
「何のために仕事やってるんだろう」
と思うようになった。
「今まで頑張ってきたんだからボチボチゆっくりやっていこう」
という気持ちより、
「刻々と閉経の足音が近づいてくる」
「結婚もしていないし、仕事も思うようにできなくなると、その先は暗闇しかない!」
という危機感の方が強かった。
そんな自分の存在意義を悩んでいるとき、井森美幸に出会った。
今も昔も変わらず、共演者にイジられながら楽しそうに仕事をしている井森美幸をみて、
「井森さんの仕事のモチベーションって何ですか?」
と質問。
すると2歳上の井森美幸は、
「大久保ちゃん、なんでそんなこと聞くの?
で、モチベーションって何?」
モヤモヤは吹き飛んだ。
昼は弁当かラーメンかうどん。
夜は外食化コンビニか簡単な自炊。
休日はノーメイク、ノーブラ、ノー風呂で1日ダラダラ過ごす大久保佳代子だが、恋人ができると生活は一変。
特に
「殿方が」
家に来るときは、
「これを食わせれば間違いない」
という勝負料理をつくる。
それは豚肉の生姜焼き、ポテトサラダ、そして特製稲荷寿司。
「プライベートな空間で食卓を囲むというエロスなひとときに、山盛りのお稲荷さんでさらにセクシャルな空気を漂わせる」
という稲荷寿司は、揚げに酢飯を詰めると米が透けてみえるほど大きい「ハムスター稲荷」
これまでふるまった恋人から
「不味い」
とも
「美味い」
ともいわれたこともなく
「あれ、もしかして美味しくない?」
と疑っていたが、バラエティ番組の女性芸人が弁当をつくる企画で他の弁当が空になったのにハムスター稲荷だけ残り、確信に。
その後、具や酢飯を改良するなどしたが、大きさだけは、
「上品なハツカネズミサイズにすることも考えましたが、やっぱりハムスターサイズだけは譲れない」
別れた恋人たちがハムスターをみる度に自分のことを思い出し、その瞬間、2人の距離がグッと縮まると信じている。
クリスマスの夜、仕事が終わった大久保佳代子は、いとうあさこに
「ドライブでもいっちゃいますか?」
といわれ、群馬方面へ。
目的もなく走り続けていたが、自然とパワースポットとして有名な神社へ。
すると自分たちを待っていたように雪が降りだし、
「ホワイトクリスマス?」
と何か良いことが起こる予感。
その後、温泉宿へ向かうと待っていたのは、
「クリスマスの夜にまさかの女2人で旅ですか?」
という嘲笑。
「せめて明石家サンタに報告を・・」
と思っていたが、それまでに酔い潰れて寝てしまった。
正義感が強くて優しいいとうあさこは、大久保佳代子が失恋すると自宅に保護し、
「いつでも泊まれるように」
とタオルやパジャマを入れた「佳代ちゃんボックス」をつくったこともあった。
しかし大久保佳代子は、いとうあさこが失恋したとき、繰り返される暗い話に、
「仕事がある」
とウソをついて脱出。
一方、いとうあさこが結婚することを恐れ、
「神様、そうなる前に佳代子に幸せを」
と祈っていた。
いとうあさこが24時間マラソンのチャリティーマラソンランナーに選ばれたときは喜んで応援したが、ハードな練習でみるみる痩せてきれいになっていくいとうあさこをみて、
「ヤバい。
このままだとモテちゃう」
と危機感を覚え
「大丈夫?
ちゃんと食べなきゃ」
と心配するフリをしながら
(太れ)
とコッテリとした料理を食べさせ、酒を飲ませた。
本番では親友として伴走しながら、
「ゴールしたら美味しいもの食べに行こう」
と声をかけ、実際、完走後、中華料理店へ。
その後も
「頑張ったご褒美」
と称して、養豚所のごとく高カロリー食を与え続け、いとうあさこの体重が戻り始めると
「安心、安心♡」
優しさか、あきらめか、家族は親せきから結婚の話題をフラれることがなくなり、友達の年賀状の家族写真に写る子供の姿に年月を感じながら、休日は、ノーメイク、ノーブラでソファーでひたすらダラダラ過ごし、気がつけば夕方。
「いつの間に?」
と驚き、あわてて女友達に電話をかけまくってご飯に行くか、誰も捕まらなければ冷蔵庫の余り物でつくった
「残飯飯」
を1人で食べる。
そんな生活がイヤになり、
「犬を飼いたい」
と思い始めて数年、引っ越すときはペット可物件を選び、酔えば閉店間際のペットショップで子犬を抱きしめたまま1時間以上居座り、たんぽぽの川村エミコに
「大久保さん、ダメですよ。
今は酔ってますから、酔ってますから」
と諭されたり、やはり1人暮らしで犬と暮らすのは大変なので躊躇が続いた。
しかし2016年、番組の企画で訪れたペットショップで、メスのチワックス(チワワとダックスのミックス犬)に出会い、
「ひと目見て抱っこしたとき、最初は震えていたけど、手を出したら顔を乗せてきた。
それがかわいくて。
私が守ってあげなきゃダメだと思いました」
と瞬時に心を奪われ、飼うことにした。
そして
「誰からも愛される子になりますように」
という願いを込めて
「パコ美」
と命名。
長女、パコ美との新生活は、早朝に起こされ、散歩に行き、白目をむいて暴れるパコ美の遊びにつき合い、ドッグフードをふやかして食事をつくり、大量のウンチと格闘するなど大変だったが、意外な変化が起こった。
「長年行き場を失っていた私の母性。
その注ぎ場所を見つかったせいか、パコ美と暮らすようになってから、更年期に怯え、イライラしがちだった情緒が安定し、満たされている自分を感じるように。
そのせいか、よく顔が優しくなったっていわわれるんです」
相方の光浦靖子も行き場をなくした母性がザワついたのか、タケノコご飯を炊いておにぎりを握って仕事場で配るという活動を行っていたので、理由を聞くと一言、
「人に優しくしたい」
夜中、3時間ごとに目が覚めていた大久保佳代子が、
「毎朝6時にパコ美が散歩に行こうって顔をなめてくるから起きる癖がついたんだよね」
というと、夜中まったく起きることなく7、8時間ブッ続けで眠れる光浦靖子は
「明らかに老化」
といった。
さらに密かに、
「また犬飼っちゃったんだというと誰かが必ず反応してくれる。
パコ美をきっかけに男性を会話が弾む、そんな嬉しい展開も♡」
と散歩中の偶然の出会いやパコ美をきっかけに男性と連絡先を交換することを期待。
かつて実家の愛犬、ホイットマンは、人間が食べる缶詰をご飯にかけて食べさせるなど甘やかしすぎて、栄養や健康の面でも反省する点が多かったので、大久保佳代子は、
「昭和のホイットマンと違い、平成のパコ美は厳しく健康に!」
と決めた。
しかし実家に預けると
「リンゴ買ってきたよ~」
とパコ美に話しかける母親、朝食のトーストを与える父親、そして驚くほど何でも食べるパコ美を目撃。
大久保佳代子もパコ美と暮らし始めて外食の回数が減り、家に帰るとパコ美をお供に晩酌。
隣に寄り添い、まばたきもせずにつぶらな瞳で見上げてくるパコ美に
「今日も大変だったよね」
「こんなことがあったんだけど、私は悪くないよね」
と一緒に枝豆をつまみながら話しかけていたが、やがてつまみはパコ美が食べられるものを選ぶように。
結果、チワックスの平均体重3kgだが、パコ美は、6.8kgに成長。
体が大きくなったせいであまり歩きたがらず、散歩にいってもすぐに帰りたいといいたげな表情で見上げてくるので抱き上げて散歩し、
「娘が太ったのは私のせい。
1人晩酌の寂しさのせい。
お父さんの分まで頑張って幸せにしてあげなくてはいけないという気持ちや留守番させてる罪悪感も手伝って、ごめんねとつい甘やかしてしまう母子家庭のせい。
パコ美はなに1つ悪くない、
すべては私が悪いんです」
と溺愛。
寝ていると腕枕をねだって懐に入り込み、上目づかいで凝視し、互いに見つめ合った瞬間、舌をニュルっと口の中に入れてきてくるパコ美に
「甘えん坊だし、頭がいい。
人間だったら、いい女」
と女子力の高さを見習う姿勢すらみせ、特に濃厚なディープキスに関しては
「口を閉じていても入れてくる」
とその唇を奪うテクニックに脱帽。
「ママのところにおいで」
「ママ、今からお仕事いってくるからね」
と話しかけ、
「パコ美ちゃんのママ」
といわれると
「こんな茶色い物体を産んだ覚えないわ」
とボケるがもちろん本心ではない。
後輩芸人に
「パコ美姉さん」
と呼ばれるパコ美に対し、いとうあさこは
「バアバが来たよ」
といって遊びに来てじゃれあい、髪の毛をむしり取られて帰っていった。