はじめに
今回ご紹介する楽曲はすべて、作詞・作曲ともに竹内まりやの作品です。以降では作詞者・作曲者名は省略し、リリース日や編曲者名などの差異のみをを記載します。
駅(中森明菜)
中森明菜版
リリース日:1986年12月24日(アルバム『CRIMSON』収録曲)
編曲:椎名和夫
竹内まりや版
リリース日:1987年8月12日(アルバム『REQUEST』収録曲)
リリース日:1987年11月28日(シングル初回盤)
リリース日:1988年5月10日(シングル再発盤)
編曲:山下達郎
『駅』といえば、竹内まりやファンの間で最も人気の高い曲ですが、元々は中森明菜のアルバム『CRIMSON』用に書かれた楽曲です。その数ヶ月後に、竹内まりやが16枚目のシングルとしてセルフカバーしました。
実際には、『AFTER YEARS』との両A面シングルで、初回盤ではA面『AFTER YEARS』、B面『駅』で、再発盤では、A面とB面を入れ替えてリリースされました。7枚目のアルバム『REQUEST』にも収録されています。1991年には、映画『グッバイ・ママ』の主題歌に起用され、今日ではファンならずとも知る彼女の代表曲の一つです。

『駅』を収録するアルバム『REQUEST』
元気を出して(薬師丸ひろ子)
薬師丸ひろ子版
リリース日:1984年2月14日(アルバム『古今集』収録曲)
編曲:椎名和夫
竹内まりや版
リリース日:1987年7月25日(シングル『夢の続き』のB面)
リリース日:1987年8月12日(アルバム『REQUEST』収録曲)
リリース日:1988年11月28日(シングルA面)
編曲:山下達郎
『元気を出して』は、薬師丸ひろ子の初のソロ・アルバム『古今集』のオープニングを飾る収録曲です。彼女の人気曲であるため、シングルと錯覚している人もいますが、これまで一度もシングル化されたことはありません。
そして、『古今集』のリリースから4年後の1988年、竹内まりやが17枚目のシングルとしてセルフカバーしました。バックボーカルには、夫の山下達郎と原曲を歌った薬師丸ひろ子が参加しており、曲の最後では3人の透明感あるハーモニーを聴くことができます。
アメリカのシンガーソングライター、カーリー・サイモンが離婚した際に憔悴した様子を見て「彼女を元気づけたい思いで書いた」という特別な曲です。

『元気を出して』を収録するアルバム『REQUEST』
ミラクル・ラブ(牧瀬里穂)
牧瀬里穂版
リリース日:1991年10月30日
編曲:小林武史
竹内まりや版
リリース日:1992年5月25日
編曲:山下達郎
『ミラクル・ラブ』は牧瀬里穂のデビュー曲(タイトルは英語表記)で、その翌年に、竹内まりやが20枚目のシングル『マンハッタン・キス』のカップリング曲としてセルフカバーしました。2007年のアルバム『Denim』、2019年のベストアルバム『Turntable』に収録されています。
牧瀬里穂版は、デビュー間もない少女の初々しさに溢れた曲ですが、竹内まりや版は、同じ詞なのに大人の哀愁を帯びたバラードに仕上がっています。
リリースから27年後の2019年には、橋本環奈主演のAbemaTVドラマ『1ページの恋』の主題歌として起用されます。今や30年以上にわたって、幅広い世代に親しまれている有名曲です。

『ミラクル・ラブ』を収録するアルバム『Turntable』
けんかをやめて(河合奈保子)
河合奈保子版
リリース日:1982年9月1日
編曲:清水信之
竹内まりや版
リリース日:1987年8月12日(アルバム『REQUEST』収録曲)
編曲:山下達郎
ストリングスアレンジ:服部克久
『けんかをやめて』は、竹内まりやの7枚目のアルバム『REQUEST』の3曲目に収録されていますが、シングル化はされていません。後に、ベストアルバム『Impressions』、『Expressions』にも収録されました。
元々は、河合奈保子のシングル曲で、クリス松村との対談では以下のように話しています。
詞は、二股をかけたことを謝る身勝手な女性の思いを歌ったものでありながら、河合奈保子が歌うとなぜかかわいく聞こえる。。。一方、いざ自分で歌ってみると、今度はなぜか傲慢に聞こえてしまう。。。そんな気持ちになったと話しています。

『けんかをやめて』を収録するアルバム『REQUEST』
色・ホワイトブレンド(中山美穂)
中山美穂版
リリース日:1986年2月5日
編曲:清水信之
竹内まりや版
リリース日:1987年8月12日(アルバム『REQUEST』収録曲)
編曲:山下達郎
『色・ホワイトブレンド』もまた『けんかをやめて』と同様、竹内まりやの7枚目のアルバム『REQUEST』の8曲目に収録されていますが、シングル化はされていません。後に、2008年のベストアルバム『Expressions』にも収録されました。
竹内まりや版では、中山美穂版よりキーを半音下げて歌っています。中山美穂のまぶしいぐらいに輝きを帯びた10代の歌声に対し、竹内まりやは温もりある落ち着いた大人の歌唱で、対照的な魅力を感じさせてくれます。山下達郎のバックコーラスもぴったりで、アイドルとは一味違った心地よいアレンジに仕上がっています。

『色・ホワイトブレンド』を収録するアルバム『REQUEST』
ファースト・デイト(岡田有希子)
岡田有希子版
リリース日:1984年4月21日
編曲:萩田光雄
竹内まりや版
リリース日:2019年9月4日(アルバム『Turntable』収録曲)
編曲:増田武史
岡田有希子は、竹内まりやが最も楽曲提供した女性アイドルで、『ファースト・デイト』は彼女のデビュー曲です。以後は "学園三部作" と称して、『リトル・プリンセス』、『-Dreaming Girl- 恋、はじめまして』と3作連続で竹内まりやが作詞・作曲を手がけました。本曲のリリースから35年後の2019年、ベストアルバム『Turntable』でようやくセルフカバーが実現しています。
セルフカバーも、原曲にかなり近いアレンジで歌っており、まるで歌い方まで岡田有希子に合わせているかのようです。若くして亡くなった彼女に思いを馳せているのでしょうか。対談では次のように語っています。

『ファースト・デイト』を収録するアルバム『Turntable』
MajiでKoiする5秒前(広末涼子)
広末涼子版
リリース日:1997年4月15日
編曲:萩田光雄
竹内まりや版
リリース日:2019年9月4日(アルバム『Turntable』収録曲)
編曲:藤井丈司
ストリングス編曲:服部隆之
『MajiでKoiする5秒前』は、広末涼子のデビュー曲で、タイトルは、当時ブームだった若者言葉「MK5(マジで切れる5秒前)」を言い換えたものです。竹内まりやは、2013年のコンピレーション・アルバム『Mariya's Songbook』でデモ音源を収録しましたが、セルフカバーで歌ったのは2019年のベストアルバム『Turntable』の時です。
モータウンビートの明るく可愛らしいノリの曲ですが、還暦を過ぎた竹内まりやが見事に歌いこなしていて、違和感がありません。自身の曲とは言え、当時16歳だった広末涼子の曲をカバーしたことを考えると、驚異的です。

『MajiでKoiする5秒前』を収録するアルバム『Turntable』