内田裕也
ロケンロールと言えば、この人、そう内田裕也さんですね。生き方も口癖もロケンロール。存在そのものがロケンロールという稀な人物です。
しかし、それって、どーゆーこと?と問われると、それはよう分かりません。それはよう分かりませんが、内田裕也が音楽と同様に映画も深く愛していて、映画の中の彼はまさにロケンロールとしか言いようがないということは主演作品を観ると良~く分かります。おそらく彼にとってロケンロールとは音楽のジャンルではなく生き方なのでしょう。
そんな訳で、今回は音楽ではなく、内田裕也の映画の方に注目してみたいと思います。
映画初出演は、1963年の「素晴らしい悪女」です。

素晴らしい悪女
団令子、久保明 主演のこの映画、残念ながら現在ではなかなか観ることは容易ではありません。しかし、まぁ、貴重な初出演作とはいえ、それだけのことです。内田裕也的には観れなくとも問題ないでしょう(汗)。
その後、様々な映画に出演していますが、やはり内田裕也の映画を語るのであれば主演作品ですよ。中でも80年代。80年代前半の内田裕也の映画には狂気が宿っているんです。そう、まさしくロケンロールだぜシェキナベイベー!!!
水のないプール
演技が上手いか?と問われると「いや、それほどでも」と答えるしかないのが内田裕也という男です。「ヘタ」と答えても問題はないようにさえ思えます。しかし、断然カッコいいのです。唯一無二の存在と言っていいでしょう。変わりがきかない役者の筆頭、それが内田裕也という男、で、大丈夫です。たぶん…
もうね、狂気をはらんだ物静かな男をやらせたらピカイチですよ。
さぁ、そんな内田裕也の1982年の主演作品「水のないプール」。監督はピンク映画の巨匠こと若松孝二です。期待が高まりますよねぇ。といってもこの作品ピンク映画ではありません。
そもそもピンク映画の巨匠とはいえ、若松孝二という監督は反体制の視点から“怒り”を描き60~70年代に若者から圧倒的に支持されていたんです。「水のないプール」にもその特徴が存分に発揮されています。

水のないプール
窓の隙間からクロロホルムを注入して部屋の中の女性を眠らせた後、レイプするという男が主人公です。
無口で不愛想。やる気があるのかないのか分からない男を内田裕也が内田裕也にしか出来ないって感じで演じています。
喫茶店で「ジンジャエール」を何度か注文するのですが、その言い方が耳に残るカッコよさ!ファンの間で有名な「ジンジャエールはジュースじゃねえ。このタコ!」という名セリフが出てきます。
40年も前の映画ですが、内田裕也の佇まいは古臭さを微塵も感じさません。ボウズ頭もカッコイイの一言です。
因みにこの映画、実話をもとにしているんです。なかなかコワイですよね。
ヒロインを演じるのは中村れい子。キレイです。とてもキレイです。しかも、サービス満点にたっぷりとヌードを披露してくれてます。
若松孝二監督とは1979年に「餌食」という映画で既にタッグを組んでいるのですが、この映画も内田裕也の魅力満載で観て損なしの1本ですよ。
十階のモスキート
1983年の「十階のモスキート」。これがまた内田裕也ならではの作品です!監督は「月はどっちに出ている」や「マークスの山」などで知られている崔洋一で、これが彼の監督デビュー作です。いきなりイイ映画撮りました!流石ですね。
今作の内田裕也の役どころはうだつの上がらない警察官です。やっぱり無口で不愛想。競艇にうつつを抜かしサラ金まみれとなり、最後には犯罪を犯すという、いかんともしがたい男。そんな主人公を異常にカッコよく演じています。抑揚のない演技は国宝級。内田裕也の真骨頂ですよ。

十階のモスキート
この映画は元警察官が、かつて勤務していた派出所の巡査を殺害して拳銃を奪い、サラ金の店員を射殺して現金を奪うという実際にあった事件を題材としています。コワイ話ですよね。
「十階のモスキート」は「水のないプール」同様、主演だけではなく、企画、脚本も内田裕也が担当しています。
「十階のモスキート」、奇妙なタイトルですね。「ある時、壁に蚊をつぶした小さな血痕が付いていることに気付いた。自分は大きな宇宙の中のちっぽけなモスキートみたいなものにすぎないが、人は刺せる」と思ったらしく、これがテーマになったと内田裕也はインタビューで答えています。
そう言えば、この映画にも出ているビートたけしが「内田裕也は映画のタイトルを付けるのが上手い」と言っていましたねぇ。
コミック雑誌なんかいらない!
ピンク映画出身の滝田洋二郎監督が初めて手がけた一般映画「コミック雑誌なんかいらない!」。これ、内田裕也の代表作となりました。そう言い切っていいでしょう。「キネマ旬報賞」主演男優賞、「報知映画賞」主演男優賞、「毎日映画コンクール」脚本賞を受賞。更にはカンヌ映画祭監督週間に招待され、ニューヨークやロサンゼルスでも上映されていますからね。

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内田裕也は芸能レポーター役で、これまた様々な実話をエピソードとして取り入れています。
主人公は芸能レポーターであるにも関わらず、当然のように言葉数が少なく不愛想。内田裕也の出番だぜ、シェキナベイベー!!!というわけです。
こんな陰湿なレポーターってどうなんだよ?でもって、なんか活舌も悪いぞ!と言う突込みは全くもって意味がありません。内田裕也ですからね。内田裕也がやってるんだからさ、当然さ!という訳です。
それにしても、後に「おくりびと」などの傑作映画をものにする滝田洋二郎監督は流石ですよ!
「コミック雑誌なんかいらない!」という題名もまた素晴らしいですが、これは頭脳警察の楽曲のタイトルからとられています。が、作品とはなんの関係もありません。
内田裕也という人は、実話を基に脚本を書き主演した作品において、その才能を大いに発揮できるタイプのようですねぇ。まぁ、自分が興味を持った、やりたい内容となっているわけですから自ずとやる気が湧いてくるのも当然でしょうけどね。
しかしまぁ、内田裕也が演じるキャラクターは見事に一貫しています。意地の悪い言い方をすれば役者としての幅がないと言えそうですが、それがどうしたってなもんですよ、シェキナベイベー!
反体制=ロックとは余りにも短絡的にすぎますが、テーマが何であれ、主人公の志向がどうであれ、映画の中の内田裕也を見ていると、もう、ロックとしか言いようがないです。そう、彼こそがロケンロール!それで間違いありません!!!