まさに時代を先取りしていたバラエティ「ゲバゲバ90分」

まさに時代を先取りしていたバラエティ「ゲバゲバ90分」

「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」は、1969年秋にスタートして翌年の春まで、そして1970年秋に再開して翌年の春まで。日本テレビ系列局で製作&放送されていたバラエティ。シュールな笑いやブラックジョークなども随所に見られ、まさに一歩も二歩も時代の先を行く番組でした。


ナンセンスなショートコント

MCを務めるのは、放送作家出身の大橋巨泉と前田武彦のなんとも毒のある…というか個性的なお二人。そのお二人の掛け合いで進行していく生放送パートと、事前収録を済ませているショートコントのパートで構成されています。録画で撮影されたナンセンスなショートコントが、アイキャッチで挟みながらこれでもかというほどに次々と繋いでいく演出手法になっていました。

番組のモデルとなっていたのが、当時アメリカNBCで放送されていたコント番組「ラフ・イン」。この番組が「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」にも大きな影響を与えていたことは間違いのないところでしょう。放送内で頻繁に登場した、ハナ肇の「アッと驚く為五郎」や巨泉の「うーしししし」は流行語にもなりました。

毎回ごとに150本とも言われる膨大なショートコントを繋いでいくという演出手法。番組がコマーシャルになると、大人はトイレに行きますが、逆に子供がコマーシャルを見にテレビの前に来ます。それなら、本編ごとコマーシャルのような流れにしてしまえばいいんじゃないかと言う発想によって作られていたんです。

すさまじいコントのネタ数

「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」を作る際には、ふんだんの予算と充分な制作時間を確保しています。そして収録中に一度でもNGが出たネタは、二度と収録しないという、贅沢も厳しい状況の中で行われていました。放送作家陣が作り上げる「ゲバゲバ」のネタ台本は、B4版で3cmぐらいの厚さだったそうです。通常番組の台本がB5版だったことも考えると、そのすごさがわかりますね。そして、当然ボツになったネタも膨大な量になっています。1回分のボツ原稿だけで、積み上げると1mほどになったそうですから、その壮絶さが想像できるというものですね。

アドリブは許しません

番組を見ていたら、まるで全てばアドリブとも思えるコントもありましたが、実は完全に台本に忠実に進行され、アドリブは一切許されなかったそうです。一見すると雑談をしているような所でも、完璧に台本どおりだったとか。MCの前田武彦さんが、一言二言アドリブを入れただけで、台本通りにしろと怒鳴られた程。

当時を振り返った藤村俊二さんは、台本を譜面に読み替えて、いかにアドリブを利かせて演奏するかという作業が面白かったと語っています。状況・進行・セリフなどにアドリブは許されていなくても、表現力や発信力などは出演者のアドリブが大きな力を発揮していたのでしょうね。実際のところ、「ゲバゲバ」でアドリブがOKだったのは、大橋巨泉さん・前田武彦さんと・萩本欽一さんの3人だけだったそうです。

1日に約100本のギャグを収録

「巨泉×前武ゲバゲバ90分!」、その放送1回分の収録には2日間しか費やせませんでした。1日の収録で使われるコントやギャグは約100本。セットチェンジや照明の直し・そしてリハーサルを含めると1本を録るのに約7分しかありません。休憩は時間に含まず全くNGなしで進んだとしても、最低で11時間半もかかってしまう長丁場の現場だったんです。

プロデューサーをしていた井原高忠さんは、想像を絶するほどの手間がかかった番組制作にこう語っています。今後自分達が若返らない限り、こんな番組はバカバカしくて誰もやらないだろうと。当時の井原さんは、副調整室でブドウ糖を打ちながら酸素ボンベを脇において作業をしていたそうです。スタッフへの指示のために、とにかくしゃべり続けていたので、酸欠になったとか。その過酷さがうかがえますね。

何故こんなタイトルに

「ゲバゲバ」というのは、小説家・評論家・コラムニストとして知られる小林信彦さんの命名です。当時各地で頻繁に起こっていた学生運動、国家権力に対する実力闘争を表す言葉がゲバルトでした。ドイツ語の暴力という意味ですね。そのゲバルトに由来しているそうです。

テレビ番組の制作で、当時すでにその波が襲っていたのが、低予算・タレント任せの安易な企画で作られていたバラエティ番組。そんな状況に対する警鐘を含めて、「ゲバルト」という言葉を用いて付けられた番組名でした。

出演者の個性が光る

冒頭のタイトルでは、MCの2人がシルクハットとタキシードで登場してパフォーマンスを行います。そして、その日に登場する個性的なタレントさんたちが、都内各地を自分の名前を書いたプラカードを持ってタイトル曲に合わせて行進するというものでした。

この光景を懐かしく思う皆さんも、きっと大勢おられると思います。プラカードを見て、コントなどからはほど遠い存在の俳優さんから歌手の方までおられるのに驚いた方も。基本的に、コント55号以外ではお笑いタレントは起用されていなかったのです。本格的な俳優・歌手の方々を起用したというのも画期的なことだったのでしょうね。またコント55号のお二人である萩本金一さんと坂上二郎さんも、別々の出演にして同時の登場はありませんでした。

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大橋巨泉 前田武彦 1969年

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