覚えてますかこんなCM、大橋巨泉「ハッパフミフミ」

覚えてますかこんなCM、大橋巨泉「ハッパフミフミ」

「はっぱふみふみ」、このフレーズ覚えていますか?時は1969年、現在のパイロットコーポレーションとなる、パイロット萬年筆株式会社が発売していた万年筆、「エリートS」のCMです。当時人気のあった大橋巨泉が、短歌を詠んだ際に口から出てきた言葉だったとか。


巨泉語録はまさにTVの黄金期

2016年に亡くなられた大橋巨泉さんは、多くのテレビの中から強烈な印象を残す言葉を発信してきた人気者でした。「みじかびの・きゃぷりきとれば・すぎちょびれ・すぎかきすらの・はっぱふみふみ」。このパイロット万年筆のCMで放映された短歌風のフレーズは、なんと大橋さんのアドリブだったそうです。このCMは、僅か3カ月間の放送に留まってしまいましたが、あまりにナンセンスな造語が若者の間で大流行して、パイロットの万年筆は大ヒットとなりました。当時、ボールペンに押されて不振を極めていた社業の再建に繋がったCMだったそうです。

また、11PMで絶妙のコンビを組んでいた、朝丘雪路さんの巨乳を「ボイン」と表現。大橋さんの自著「ゲバゲバ70年!」において「ボクの造語の中では【はっぱふみふみ】が有名になってはいるが、自分では【ボイン】がうまいと思っている」と語っています。この他にも、ハウス食品のCMで「なんちゅうか、本中華」、クイズダービーでお馴染みになった「倍率、ドン!」など、テレビの黄金期を過ごした世代の皆さんには、あの福々しい笑顔と重なって、深く記憶に刻まれているのではないでしょうか。

CMプランナー

CMプランナーという仕事をご存じですか?電通から誕生したと言われる職業の一つなんです。当時に機能していた仕事でメインだったのが、テレビ番組の中で放映される生コマーシャルの企画でした。ですので、日本で最初にCMを作っていた方々は、コピーライターなどではなくシナリオライターに近い仕事をしていたということになりますね。映画製作が不況に陥り、映画の世界での仕事を希望していた人たちが多くテレビに流れてしまい、彼らがシナリオを書いているという時代でした。

欧米では、すでに広告会社のコピーライターとアートディレクターが存在していました。彼らはグラフィック広告の技法を使って、テレビやラジオのCMを当たり前のように製作していたのです。しかし、そちらの方面でかなり遅れを取っていた日本では、多くのシナリオライターが、広告やテレビ時代のコミュニケーションを勉強しながら、日々の仕事をこなしていたのです。

印刷からテレビに

当時の広告は、印刷が中心となり文字で人々を説得してきたのです。しかし時代が変わって、媒体がテレビになってくると文字で訴えるのは力不足。当時、文明批評家のマーシャル・マクルハーンによる「メディア論」が、唯一の教科書となっていました。アメリカのCMも充分に参考にはなるのですが、日本の関係者たちはテレビという媒体を通して、テレビの前の多くの人たちにどう情報を提供しようかということに関心は向いていました。「メディア論」では、論理的思考を用いて線でつながる印刷物と違い、テレビは点的な思考とされています。テレビというメディアは、人間の理解力をつくり変えることができるのです。

「はっぱふみふみ」は音楽業界の隠語だった

そしてそんな時に制作されたのが、パイロットエリートSのCMでした。そうです「はっぱふみふみ」ですね。1969年のCMでは、当時深夜でありながら人気番組となっていた「11PM」の司会、マルチタレントの大橋巨泉さんが出演しました。「すぎしびの~」という、なんとも奇妙なセリフは、巨泉さんのアドリブだったそうで、音楽業界の人たちにだけに通じる言葉、いわゆる隠語だったのです。まさにテレビを使った、実験とも言えるCMだったのです。

実はきちんとした売り文句

いろいろ説明しましたが、じっくりと巨泉さんのセリフを見てみると、なんとなく売り文句になっていますよね。

もともとはキャッチコピーがあったようですが、単にキャッチコピーだけではインパクトが薄かったでしょう。なので、元のキャッチコピーをいじくって、語感を真似た短歌風にして視聴者の関心を引いたのですね。さすが大橋巨泉といったところでしょう。最後の「はっぱふみふみ」は、語感から「文章・発破・早い」などが想像できるので、ただデタラメに言った訳ではないのです。万年筆の性能について語った、いわばオノマトペだとも言えますね。

日本のCMが新展開に

これまでのように文字で伝えるCMの場合、意味不明のメッセージを書いたら、誰も理解ができません。しかしテレビCMの場合なら、たとえアドリブなのか意図的なのかわからない「はっぱふみふみ」というメッセージでも、その音や巨泉さんの語り口を見ている視聴者は面白く受け止められます。それが証拠に「はっぱふみふみ」の面白さが、商品の売上につながったのです。この「はっぱふみふみ」は、これまでに存在していなかった日本のCMに、全くの新しい形を吹き込んだのでした。まさに大橋巨泉さんのアドリブ「はっぱふみふみ」は、日本CM界の先駆者になったのです。

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