「天下とったる」横山やすし vs 「小さなことからコツコツと」西川きよし 怒るでしかし!!

「天下とったる」横山やすし vs 「小さなことからコツコツと」西川きよし 怒るでしかし!!

1980年代に起こった漫才ブームの中で横山やすし・西川きよし、通称「やすきよ」は不動の王者だった 。実力派若手との共演、対決も多かったが「ライバルは?」と聞かれた横山やすしは「相方」と答えた。そして西川きよしは猛獣使いか調教師のごとき見事なムチさばきで荒ぶる相方と対峙した。


会社と関係が悪化した西川きよしとヘレンは、愛はあるがお金はなく、食事はいつもインスタントのワンタンメン。
それを毎日続けてたが、そこに「アホの坂田」こと坂田利夫も居着き、実質、ヘレンが2人の男を食わしていた。
そんなとき、西川きよしは先輩の中川礼子に
「1度、お見合いしてみたら?」
といわれた。

きよしにとって横山やすしは2歳上。
コンビ別れを繰り返す男と聞いていたので緊張しながら指定された喫茶店にいった。
「おうっ!」
椅子に座っていたやすしは手を振って呼び、第一声で
「俺な、お前と漫才でけへんかったら困るんや」
といった。
「やってもらわな困るって・・・
僕まだ新喜劇に出てるわけですからね。
イコール、はよ芝居を辞めて俺と漫才してくれな困るぞということを初対面でいうわけですから・・・ビックリしました。
ほおーこんな人もおるんやなというね」
西川きよしは驚くと同時に
「リッチになれるかもしれない」
「ワンタンメンから逃れられるかもしれない」
と心を揺さぶられた。


1966年5月21日、「横山やすし・西川きよし」が結成された。
しかし西川きよしは、漫才は素人。
劇場のボイラー室や非常階段で、やすしとの猛烈な特訓が始まった。
「漫才というものは標本があって標本がない。
キャリアがあるからしゃべりが上手とか、新人だからしゃべりが下手だとか断定し切れるものではない。
しゃべりというのは個人の特技である。
それに色づけするテクニックを取り入れて初めてキャリアが裏づけ証拠するだけの話である」
そんな漫才哲学を持つやすしの書く台本は、同じ時間でも原稿用紙は倍。
つまりしゃべくりのスピードも倍。
きよしは、その台本を3度読んでから、やすしとネタ合わせ。
1つの漫才をモノにするために、ひたすらそれを繰り返す。
2人は毎日、必死に練習。
人生の勝負がかかっていた。


1966年6月、結成した次の月には京都花月で初舞台を踏んだ。
きよしはマジメで考え込むタイプ。
出番前、硬くなる相棒にやすしは声をかけた。
「リラックスせいよ。
好きにしゃべったらエエ。
ワイがうまい具合にやったるさかい」
いくらキャリアを積んでも、この構図は変わらなかった。
本番前はいつも舞台下で
「よーし」
とガッツポーズをとって気合を入れるきよし。
それをみて
「なにを力んでんねんな。
やる前から・・・」
とあきれるやすし。
すかさずきよしは
「いや、やる前やからや!」
といった。


横山やすし・西川きよしは、次々と笑いを起こしていった。
自分たちの発言で客席がドッと笑い、その波のようなエネルギーを全身で受けるのはステージ上に立つ者しかわからない快感だった。
しかし問題もあった。
劇場での漫才は、1日数ステージあるが、やすしは、ステージの合間に一杯飲むことがあった。
きよしは、それに強い違和感があった。
「ひょっとしたら次のステージも笑わしたるぞっという気持ちでビールを飲んで餃子を食べてたかも知れませんわ。
でも僕はちょっと違うのと違うかと内心思ってるんですけど、先輩でもありますし、漫才師としても力のある人ですし、こんなことくらいで日頃の腕が鈍るオレやないっていう雰囲気も持って帰ってくるわけですよ。
外からね。
でも酔ってちゃ間をはかれませんからね。
ほいで出ますわ。
もうやれませんもんね。
もう冷や汗ですわ。
大恥かいて帰るわけです」
(西川きよし)

(なんでこんな1杯や2杯の酒で負けなあかんのや)
頭にきたきよしは、バラバラで帰ろうとするやすしに
(いうべきことはいわなければいけない)
と無理やりついて一緒に帰り、やがて
「待てよ」
と声をかけた。
やすしは止まろうとしない。
「待ていうてるやろ」
ときよしは前に回った。
「2つ目の舞台全然アカンかった」
「なにをいうとんねん。
客、ドッカンドッカン笑うとったやないか」
「酒でロレツ回らんとな、舞台なんかできるかいな」
「そんなことか。
あれくらいの酒なんともあらへんわ」
やすしはいい捨て、歩き出した。
しかしこういうのがきよしには許せない。
「待て」
追いかけて肩をつかんで振り向かせ、顔を殴った。
2人は取っ組み合いの殴り合いを始めた。
その後も本番が終わる度、必ずといっていいほど舞台袖でアドリブや間のことなどでケンカ。
殴り合いに発展することもあったが、先に手を出すのは必ず西川きよしだった。

しかし周囲はそれを決して止めない。
それは劇場を何よりも大事に考える吉本のルールだった。
「我々は終生、製造メーカーに徹しないといけない。
新製品を次々と世に送り出す。
劇場はそのためのショーウインド、ショールーム。
テレビは芸の出来高を発表するメディア。
劇場で鍛えられたタレントの息は長い。
消耗品になりたくなければ舞台で腕を磨きなさい。
芸のないお方は淘汰されてしかるべきでしょう。
芸の修理が利くのは舞台。
舞台では笑いの値打ちがすぐに計算できる。
ウケなかったらどこが悪いか研究し直して次の舞台で修正すればよろし。
テレビはそれができん。
だから吉本は劇場を大事にするんです。
漫才でもウケないと舞台を降りてからどつき合いのケンカをしてます。
それでも周囲が仲裁に入ってはいけません。
死なん程度にトコトンやらせればいい。
それが吉本の芸人訓練法ですな」
(林裕章、創業者一族の林正之助の娘と結婚し吉本に入社し、最終的に会長となった)


1967年4月5日、横山やすし・西川きよしは上方漫才退床新人賞を受賞した。
そのときの横山やすしは
「勝負はやっぱり勝たなアカンよ」
とコメント。
その後も賞を総ナメにしていった。
横山やすし・西川きよしは売れっ子芸人に仲間入りし、TVの仕事もドンドン増えて寝る暇もないほどの忙しさになった。
9月27日、西川きよしとヘレンが周囲の反対を押し切って結婚。
「トンビが揚げをさらった」
といわれた。

「白黒つかん勝負は好かん」
というやすしはスポーツなら個人競技派。
野球は基本的に嫌いだが高校球児の情熱は好き。
プロ野球は
「金がからんどる」
と大嫌い。
そして自身、
「マラソンの練習や」
といって毎日、走った。
家から花月までマラソン通勤したり、テレビ、ラジオと忙しい合間もストイックに走り続けるやすしの目標は
「フルマラソンの国際大会出場」
あるとき高速道路の出口手前で渋滞に巻き込まれ
「走ろう」
といって現場に向かってきよしと一緒に走ったこともあった。

1968年、
「大卒者が社会に出る歳までに家を建ててやる」
そう思っていた西川きよしは、22歳になる前に自分の家を建てた。
この後も収入が増えるに従って次から次へ大きな家に引っ越していったが、ずっと坂田利夫はついてきた。
「だんだんだんだん売れて収入が、少しのお金が、大きい幸せになってくれるんですよ」
という西川きよしだが、仕事を終えて家に帰ると坂田利夫が待っている。
「キー坊、まあ一杯飲め」
「アホか、俺の酒や」
「なに怒ってんねんな。
まあ座れ」
「俺の家や!」
「キー坊、なんか最近、家が狭くなってきたなあ」
「お前がおるからやろ!!」
西川きよしはついに目をむいた。

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