必見のボクシング映画
最も過酷で美しいスポーツといえるボクシング。相手を殴って倒すだけという単純なルールが観る者を引き付けて放しません。
ボクシングの歴史は古く、何と紀元前4000年ごろの古代エジプトの象形文字に既にその存在が記されているというのですから驚きです!但し内容は随分違っていたようで、現在に通じる3分1ラウンド制、ラウンド間に1分間の休憩をとる、グローブの着用、ダウンした者が10秒以内に立ち上がれない場合はKO負けとするといったボクシングルールが確立されたのは1867年のことです。まぁ、それでも長い歴史がありますね。
それだけ古い歴史とスポーツとしての魅力を持ったボクシングですから、それを題材とした様々な作品が作られているのも当然といえます。
今回は観ないと人生損をしてしまうボクシング映画にスポットを当ててみます。
ボクシング映画と言われてまず頭に浮かぶのは何でしょうか?年齢や性別にもよるかと思いますが、おそらく多くの人の脳裏にはシルヴェスター・スタローンの顔が浮かぶのではないでしょうか?そう、あの名作「ロッキー」ですね。

ロッキー
この映画、まぁ間違いなく名作。間違いなく面白いです。観て損なし、観ないと人生損しますって。
当時のシルヴェスター・スタローンは映画のオーディションに50回以上も落選しており、ポルノ映画に出たり用心棒をしたりして細々と生活していたと言います。まさにロッキーそのもの。二重写しだ。そしてロッキーがそうであったように、シルヴェスター・スタローンもまた一夜にしてスターの座を掴むことになった作品です。
まぁ、何と言ってもストーリーがイイですよ。難しいことなどありゃしません。まさしく絵に描いたようなアメリカンドリーム一直線の映画です。
それでもってテーマ曲がキャッチーでイイですよねぇ。この曲がかかると意味もなく燃えるという男たちは後を絶ちません。
テレビドラマ並みの製作費で作られたという「ロッキー」ですが、スタッフ、出演者、そして何よりシルヴェスター・スタローンの情熱でしょうか、チープな感じなど全くせず最高の作品に仕上がり全世界で大ヒットしました。そして第49回アカデミー賞の作品賞・監督賞・編集賞をはじめ多くの賞に輝いています。
で、スタッフ、出演者、そして何よりシルヴェスター・スタローンの情熱はこの大ヒットにうま味を覚えたのか、その後「ロッキー2」、「ロッキー3」、「ロッキー4/炎の友情」、「ロッキー5/最後のドラマ」、「ロッキー・ザ・ファイナル」、いくらなんでもやりすぎだろと思わなくもありませんが、その声はシルヴェスター・スタローンに届かず、更に「クリード チャンプを継ぐ男」、「クリード 炎の宿敵」といったスピンオフ作品までがバンバン製作され続けています!まぁ、これはこれでファンにはたまらんトコですけどね。
傷だらけの栄光
リアルタイムで「ロッキー」を観た人たちよりも1世代、いえ2世代ほど前の人々を熱狂させたボクシング映画があります。主人公の名は同じくロッキー。映画のタイトルは「傷だらけの栄光」です。
主人公はイタリア系のニューヨーカー、ロッキー・グラジアノ。映画「ロッキー」の主人公がロッキー・バルボア(本名はロバート・バルボア)でニックネームが「イタリアの種馬」。なんか通点ありますね。
但し「傷だらけの栄光」のロッキーは実在の人物です。演じたのはポール・ニューマン。彼は本人の話し方や癖を模倣するなど徹底した役作りを行ったそうですよ。
面白いことに映画「ロッキー」も当初主人公役にポール・ニューマンの名が挙がっていたというから驚きです。プロデューサーには「傷だらけの栄光」でのポール・ニューマンのイメージがあったのかもしれませんね。
が、そもそも「傷だらけの栄光」の主役はジェームズ・ディーンに決まっていたという話です。ジミーは撮影前に交通事故で他界してしまったがために、その役がポール・ニューマンにまわってきたのだとか。

傷だらけの栄光
「傷だらけの栄光」は撮影賞と美術賞の2部門でアカデミー賞を受賞しており、まぁ、間違いなく名作ですね。観て損なし、観ないと人生損します。
監督は「ウエスト・サイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック 」「スタートレック」などで知られる名匠ロバート・ワイズです。
そうそうロバート・ワイズは「傷だらけの栄光」の前にも「罠」という素晴らしいボクシング映画を監督しています。
「傷だらけの栄光」でもうひとつ注目すべき点があります。実はこの映画ポール・ニューマンの出世作と言うだけではなく、スティーブ・マックィーンの映画デビュー作品でもあるんですよね。
レイジング・ブル
次にご紹介するのは「レイジング・ブル」。主人公のジェイク・ラモッタというのも実在のプロボクサーで、演じるのはこの作品で第53回アカデミー賞主演男優賞を獲得した若き日のロバート・デ・ニーロです。
ジェイク・ラモッタはイタリア人の父親とユダヤ人の母親の間にニューヨーク市ブロンクス区に生まれています。う~ん、またイタリアかっ!こうなってくるとボクシング映画の主人公はイタリア系というのが王道なのではないか!と思えてきますね。
因みに「傷だらけの栄光」のモデル、ロッキー・グラジアノとジェイク・ラモッタは少年時代からの悪友だというのですからこりゃまた驚きです。

レイジング・ブル
プロ・ボクシング元ミドル級チャンピオンで、"ブロンクスの怒れる牡牛(レイジング・ブル)"の異名をとったジェイク・ラモッタ。スラム街から這い上がり、不屈の闘魂で王座に君臨した栄光と破滅の半生とは…?
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監督は今や巨匠のマーティン・スコセッシ。マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロのコンビといえば1973年の「ミーン・ストリート」を皮切りに、1976年「タクシードライバー」1977年「ニューヨーク・ニューヨーク」、「レイジング・ブル」の後には1983年の「キング・オブ・コメディ」、1990年「グッドフェローズ」、1991年「ケープ・フィアー」、1995年「カジノ」、2019年に公開された「アイリッシュマン」とまぁ、互いになくてはならない間柄。
よくも二人してこんなにも名作を作り上げたものだ感心するしかないわけですが、中でもロバート・デ・ニーロにとって「レイジング・ブル」はエポックメーキングな作品といえるかと思います。なんせ本作品で「デ・ニーロ・アプローチ」を完成させたと言われているからですね。
「デ・ニーロ・アプローチ」というのは、 役に合わせて顔かたちを変化させ、徹底的にその役になり切る演技法のことです。「レイジング・ブル」では引退後のジェイク・ラモッタの肥満体型を表現するために体重を27kgも増量しているんですよっ!
ロバート・デ・ニーロは、第53回アカデミー賞、第46回ニューヨーク映画批評家協会賞、第38回ゴールデングローブ賞、第6回ロサンゼルス映画批評家協会賞といった主だった映画賞の主演男優賞を受賞しました。
まぁ、何と言っても27kgの増量ですからねぇ。報われたわけです。良かった!
そして作品としても、観て損なし観ないと人生損する1本に仕上がっています。
どついたるねん
もちろん日本にも素晴らしいボクシング映画があります。「あしたのジョー」。ええ、確かにね。確かにそれもあります。しかし、ここは「どついたるねん」を推したいと思います。
阪本順治監督のデビュー作です。主演は赤井英和。実際にボクサーだったということを抜きにしても、圧倒的な存在感を発揮しています。で、ヒロインの相楽晴子がカワイイです。

どついたるねん
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監督デビュー作の阪本順治と、ほとんど新人俳優の赤井英和。そしてもちろん低予算。だれだって不安になりますよ。しかし、それは杞憂です!まさに観ないと損する1本ここにあり!です。
原作が赤井英和の自伝「浪速のロッキーのどついたるねん 挫折した男の復活宣言」ということもあったのかもしれませんが、堂々たる演技を見せてくれます。
また、共演の麿赤児、原田芳雄が流石の存在感。そして、くどいようですが相楽晴子がカワイイ。
もしかすると当初あまり期待されていなかったのではないかと思われるのですが、結果は予想以上の大成功!1989年度の第32回ブルーリボン賞作品賞受賞作品を受賞し、第63回キネマ旬報ベストテン日本映画部門第2位に輝いています。
出演者でプロボクサーだったのは赤井英和だけではありません。赤井英和演じる安達英志と試合することになる清田さとる役の大和武士もそうなのですが、単なるプロボクサーではなく当時日本ミドル級の現役チャンピオンだったのですよ。
実際に赤井英和は急性硬膜下血腫・脳挫傷で意識不明となって現役引退をいていたという状況ですから、まさに体を張った渾身のボクシングシーンが展開されています。熱いです!危険を承知の熱演。面白くないわけないですよ。
あ、それともう一人。輪島功一が本人役の解説者として出演しています。
チャンプ
観て損なし、観ないと人生損するボクシング映画と言われて最もお勧めなのが、もしかするとこの作品かもしれません。フランコ・ゼフィレッリ監督の「チャンプ」です。
フランコ・ゼフィレッリ監督といえば「ロミオとジュリエット 」や「ブラザー・サン シスター・ムーン」、もしくは「エンドレス・ラブ 」といった作品で知られており、 若いころにはルキノ・ヴィスコンティ作品の助監督をしていたという筋金入りの監督さんです。
そんなフランコ・ゼフィレッリ監督の作品が面白くないわけがないっ!というか、この作品、絶対に泣くっ!誓ってもいい、この映画を観て泣かない人間などこの世に存在しませんっ!!!

チャンプ
主人公のボクサーをジョン・ヴォイト、主人公の元妻をフェイ・ダナウェイ、その二人の子供をリッキー・シュローダが演じています。何はともあれこのガキ、いえ失礼、子役のリッキー・シュローダが名演すぎで、“大人を泣かせるために生まれてきた”と言わずにはおれません。
因みにリッキー・シュローダは本作でゴールデングローブ賞の新人男優賞を受賞しています。
勿論リッキー・シュローダの演技だけが素晴らしいわけではありません。フェイ・ダナウェイは美しく最高の演技を見せてくれていますし、ジョン・ヴォイトのうらぶれた感じも見事です。
いやぁ~、親と子の絆ってヤツですねぇ。「チャンプ」ホントにいい映画です。
実はこの映画、リメイク作品なんです。オリジナルはキング・ヴィダーが監督をし、1931年に公開されています。
そう言えば、チャンプという言い方は、この映画で知ったように記憶しています。映画はいろいろ教えてくれますからねぇ。人生を豊かにするためにも、もっと映画を観ようではありませんか♥