第53回アカデミー賞
第53回アカデミー賞は1981年3月31日に行われたアカデミー賞発表・授賞式である。
本来は1981年3月30日に行われる予定だったが、ロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂事件が起こったため、次の日に延期された。
外国語映画賞に黒澤明の『影武者』がノミネートされていたが、受賞には至らなかった。

会場となったドロシー・チャンドラー・パビリオン
第53回目のアカデミー賞授賞式は、例年通りドロシー・チャンドラー・パビリオンで行われた。
結果は、俳優のロバート・レッドフォードが初めて監督したドラマ『普通の人々』が、作品賞、監督賞、助演男優賞を含む4部門を受賞した。
作品賞『普通の人々』(Ordinary People)
幸せな日常を送る家族だったが、長男の事故死をきっかけに家族の悩みが露呈し、愛情と信頼を失っていくストーリー。
後年の映画にも影響を与えており、同じく兄を亡くす映画としては1986年の『スタンド・バイ・ミー』や2009年の『マイ・ブラザー』がある。
家族の崩壊を描いた作品としては1999年の『アメリカン・ビューティー』などがあり、これは監督したサム・メンデスも『普通の人々』を意識したと語っている。オマージュとして『普通の人々』で使われたのと同じクローゼットを『アメリカン・ビューティー』の終盤に登場させた。

普通の人々
作品賞のその他の候補作は以下の通り。
歌え!ロレッタ愛のために
エレファント・マン
レイジング・ブル
テス
監督賞:ロバート・レッドフォード『普通の人々』
ロバート・レッドフォードは、俳優としては『スティング』で1973年度の第45回アカデミー主演男優賞にノミネートされたのみだが、演出家としてはこの処女作で作品賞、監督賞を獲得。
若い頃は画家志望だったためか、季節の移ろいや中西部の町を美しくとらえて評価された。
また、『クイズ・ショウ』でも1994年度の第66回アカデミー作品賞、アカデミー監督賞を受賞する。

ロバート・レッドフォード(Robert Redford)
他の監督賞ノミネートと作品は以下の通り。
デヴィッド・リンチ(エレファント・マン)
マーティン・スコセッシ(レイジング・ブル)
リチャード・ラッシュ(スタントマン)
ロマン・ポランスキー(テス)
主演男優賞:ロバート・デ・ニーロ『レイジング・ブル』
『レイジング・ブル』は、実在のプロボクサーであるジェイク・ラモッタの自伝を基にした伝記映画。第6回ロサンゼルス映画批評家協会賞作品賞も受賞した。
ロバート・デ・ニーロはこの作品の主役ジェイク・ラモッタを演じるために、体重を27kg増量させた。このように徹底した役作りで知られている。
1975年の第47回アカデミー賞では『ゴッドファーザー PART II』で助演男優賞を得た。

ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)
助演男優賞のノミネートは以下の通り。
ロバート・デュヴァル(パパ)
ジョン・ハート(エレファント・マン)
ジャック・レモン(マイ・ハート マイ・ラブ)
ピーター・オトゥール(スタントマン)
主演女優賞:シシー・スペイセク『歌え!ロレッタ愛のために』
『歌え!ロレッタ愛のために』は、カントリー歌手ロレッタ・リンの半生を描いた伝記映画。
もともとは歌手を目指していたシシー・スペイセクは、本作で劇中歌を吹き替えなしで歌いあげて評価された。
1976年公開のホラー映画『キャリー』では主役のキャリー・ホワイト を演じ、アカデミー主演女優賞にノミネートされていた。

シシー・スペイセク(Sissy Spacek)
他に主演女優賞にノミネートされた方は以下の通り。
エレン・バースティン(レザレクション/復活)
ゴールディ・ホーン(プライベート・ベンジャミン)
メアリー・タイラー・ムーア(普通の人々)
ジーナ・ローランズ(グロリア)
助演男優賞:ティモシー・ハットン『普通の人々』
助演男優賞も『普通の人々』からの受賞となった。
ティモシー・ハットンが兄を亡くす弟コンラッド・ジャレット役で出演し、弱冠20歳にして受賞した。ゴールデングローブ賞 助演男優賞も獲得している。
ティモシー・ハットンの代表作には『タップス』や『ロングウェイ・ホーム』がある。

ティモシー・ハットン(Timothy Hutton)
助演男優賞のノミネートは以下の通り。
ジャド・ハーシュ(普通の人々)
マイケル・オキーフ(パパ)
ジョー・ペシ(レイジング・ブル)
ジェイソン・ロバーズ(メルビンとハワード)
助演女優賞:メアリー・スティーンバージェン『メルビンとハワード』
『メルビンとハワード』は、大富豪ハワード・ヒューズを偶然助けたことで莫大な遺産の相続人に指名された実在の男性、メルビン・デュマーの体験を映画化した作品。
メアリー・スティーンバージェンは、主人公メルビンの前妻リンダ役を演じての受賞。ゴールデングローブ賞 助演女優賞にも輝いた。

メアリー・スティーンバージェン(Mary Steenburgen)
他に助演女優賞にノミネートされた方は以下の通り。
アイリーン・ブレナン(プライベート・ベンジャミン)
エヴァ・ル・ガリエンヌ(レザレクション/復活)
キャシー・モリアーティ(レイジング・ブル)
ダイアナ・スカーウィッド(サンフランシスコ物語)