長友佑都  一心不乱初志貫徹切磋琢磨   前進しか知らぬ熱きサムライ

長友佑都 一心不乱初志貫徹切磋琢磨 前進しか知らぬ熱きサムライ

抜群のスピード、運動量、1対1で絶対に負けない強さを持ち、「僕から努力をとったら何も残らない 」と語る長友佑都は、元をたどればボールを持てば誰にも渡さずドリブルで攻め続け、とられると守備に戻らない四国のガキ大将。それがいつのまにか攻めに守りに1番走ってチームに貢献する世界レベルのサイドバックになった。


北京オリンピック

2008年8月7日、北京オリンピックで日本は、アメリカ、ナイジェリア、オランダが同じグループリーグに入った。
そして総当たり戦を行い上位2チームが決勝トーナメントに進出できる。
予選リーグ第1戦は、アメリカ戦だった。
ナイジェリア、オランダに比べてアメリカは格下だった。
実際、前半は日本ペースで進んでいたが、後半開始直後、日本の左サイドバック:長友佑都が、アメリカの右サイドバック:マーベル・ウィンに抜かれ、そこからゴールを決められた。
マーベル・ウィンは、大リーガーの父を持ち、すでにアメリカのフル代表でもプレーをしている要注意選手だった。
その後、守備を固めたアメリカに日本はゴールを奪えないまま試合は終わった
予選リーグ第2戦:ナイジェリア戦で、長友佑都は先発から外された。
そして日本は1対2で敗退。
予選リーグ最終戦:オランダ戦で、長友佑都は先発したが、またも自分のサイドを破られてしまいPKを与え、日本は0対1で負けた。
こうして北京オリンピックで日本は予選リーグ敗退で終わった。
北京オリンピックの最終戦から7日後、2008年8月20日、9月にワールドカップ最終予選を控える日本代表がウルグアイと親善試合を行った。
しかしピッチは敵に支配され、なにもできずに1対3で完敗した。
長友佑都は後半から出場。
オリンピックの名誉挽回のチャンスだったがウルグアイのハイプレッシャーに
「またミスをしたらどうしよう」
と弱気に支配されてしまった。

ブレた心

Jリーグデビュー、オリンピック日本代表、日本代表、長友佑都はプロ1年目でステージをどんどん高くなった。
そして北京オリンピックや日本代表戦の不出来について、
「気持ちが消極的になったからプレーも消極的となった」
と分析。
初めての大舞台で注目度も高く「負けるか、勝つしかない」とピッチに立ったが「ミスはしたくない」という思いもあった。
「ミスを恐れてのプレーは何も得られないばかりか、そんなプレーをするくらいならピッチに立つ意味すらない。
たとえミスがあってもいいから躍動するプレー、自信を持って前に進むことが重要。
積極的なプレー、チャレンジした結果のミスなら学びもある」
また準備不足もあった。
プロはアマチュアに比べ1つ1つのプレーの責任が大きかった。
そして真剣勝負の高い緊張感から解放されていないまま次の試合はやってきた。
ピッチに立てば闘志が、練習不足、睡眠不足、休養不足などの不安をかき消したが準備不足でいいプレーができるわけがなかった。
「また試合や。
セーブしたほうがええかな」
そんな守りの姿勢で練習やトレーニングを続けていくと気持ちが弱くなってしまい、ミスを恐れ、批判を恐れ、メンタルはブレた。
苦しい日々だったが、
「顔を上げなければ」
「前を、上を向かなければ終わってしまう」
と無理やりポジティブな自分を演じるしかなかった。

「僕のメンタルはブレまくっていた」
長友佑都は素直に認めた。
そして
「どうすれば強い気持ちが手にできるのか?」
と考えた。
出した答えはシンプル。
「練習するしかない」
もっともっと強くなるためには練習しか考えられなかった。
自信満々、積極的な気持ちで試合に臨むためには日々の練習しかない、自信を持てる努力、準備をすると
「あと1本」
「あと1回」
「あと1分」
と練習で自分を追い込めば気持ちは自然と前を向いた。
またオリンピックや日本代表で
「Jリーグでやれても世界相手だとまだまだアカン」
と痛感した長友佑都は、全体練習後や全体練習がない午後に土斐崎浩一トレーナーと自主トレーニングを始めた。
この自主トレは長友佑都の気持ちを原点に戻してくれた。
ただただ走った中学時代。
寝る間も惜しんで筋トレに励んだ高校時代。
「もっともっと」
と鍛えることしか知らない。
それが長友佑都だった。
「努力は裏切らない。
努力すれば成長できる。
成長に限界はない。
そのことを僕は成功体験として過去に学んだ。
だからこそ真っすぐ、迷いなく努力できる。
それも僕のストロングポイントなのかもしれない」
次第に心のブレはなくなった。
2008年11月、ワールドカップアジア最終予選、カタール戦で先発復帰。
また前年、Jリーグで12位だったFC東京は6位になり、長友佑都はJリーグ優秀選手賞と優秀新人賞を獲得した。

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