ナイン

あだち充さんはデビュー当初、原作付きの漫画の作画を担当することがほとんどでした。デビュー時は講談社の雑誌。その後少年サンデー増刊号に掲載されますが、「週刊少女コミック」などの少女誌にも掲載していました。
あだち充さんのゆったしとした感じの独特な空気管は少女漫画に通じるものがありますもんね。そして「少年サンデー増刊号」に戻って連載したのが「ナイン」です。こちらは原作がなくオリジナル作品。1978年から1980年まで連載されていました。
主人公は俊足のセンター選手です。エースや4番が主人公ではない野球漫画は珍しいですよね。
1983年に単発でアニメ化もされています。
陽あたり良好!

「陽あたり良好!」は週刊少女コミックで1980年から1981年まで連載されていました。
「ひだまり」という下宿所を舞台にしたストーリーです。主人公は女の子ですがヒーローが応援団で甲子園を目指す姿が描かれています。
こちらは少女誌で連載されたということもあり、野球漫画という感じではなく恋愛や人間関係がメインですが題材として甲子園が出てきますよ。
1982年にドラマ化、1987年にアニメ化もされています。
『陽あたり良好!』(1980年)高杉勇作、岸本かすみと村木克彦の三者の関係がストーリーの軸となっている青春ど真ん中のラブストーリー - Middle Edge(ミドルエッジ)
タッチ

「タッチ」はヒット作の多いあだち充さんの中でも一番のヒット作ですよね。週刊少年サンデーで1981年から1986年まで連載されました。コミックスは全26巻です。
ストーリーも説明するまでもないとは思いますが、上杉達也、和也の双子の兄弟と幼馴染の浅倉南の恋愛をメインにした野球漫画です。
最初は弟の和也が野球をやっていて「南を甲子園に連れていく」と約束します。ですが、その夢があと一勝で叶うという県大会決勝の日、和也は交通事故に遭い帰らぬ人となってしまいます。
あだち充さんは「タッチ」というタイトルに弟から兄への交代という意味を込め、早々に和也を死なせることを決意。ですが編集部には猛反対されたのだとか。担当編集は板挟みになっていたのですが、最後はあだち充さんについて、和也が死ぬ回の原稿は隠れて校了し、その後逃亡したそうです。そこまでしてストーリーを守ってくれたんですね。
あだち充さんは、和也が死んでからはなるべく暗くならないように「池中玄太80キロ」を参考にしたそうです。確かに、哀しいけど暗く重くはないストーリーなんですよね。さすがです。
和也の死からは達也が和也の夢のバトンを受け継ぎ、野球部に入部し甲子園を目指します。徐々に才能が開花し、高3の夏には見事甲子園の切符を手にするのでした。
アニメ化、アニメ映画化、実写ドラマ化、実写映画化、とさまざまなメディア化もされている人気作品です。
マンガ『タッチ』の最終回ってどうだった? - Middle Edge(ミドルエッジ)
H2

タッチから6年後。1992年から1999年まで週刊少年サンデーで連載されました。
国見比呂、橘英雄という2人のヒーローと雨宮ひかり、古賀春華という2人のヒロインの恋愛を軸にした野球漫画です。「H2]というタイトルはヒーロー二人、ヒロイン二人を意味しています。そして全員イニシャルが「H]なんですよね。
タッチは甲子園を目指すところがゴールでしたが、比呂と英雄は甲子園の予選ブロックが異なるため、甲子園での対決となります。
高校2年、3年で甲子園に出場するので甲子園での試合が結構見られますね。また、最後は甲子園の準決勝で終わり、決勝は描かれていないのもあだち充さんらしく、想像力を掻き立てられますね。
4人の恋愛模様は連載開始当時には結末を決めていなかったそうです。比呂の思春期が遅れたことで幼馴染とのひかりとすれ違ってしまったというのがこの作品のテーマだそうです。結末を途中で考えたとは思えないほどラストもうまくまとまっていると思います。さすがですね。
1995年にアニメ化、2005年に実写ドラマ化もされています。
【H2】比呂の本命は誰?四角関係をおさらいしてみよう! - Middle Edge(ミドルエッジ)
クロスゲーム

2005年から2010年まで週刊少年サンデーで連載されました。
主人公樹多村光と幼馴染の月島四姉妹の関係を描いた野球漫画です。第一部は小学生からスタート。光は野球少年でスポーツ用品店の息子。光と月島家の次女、若葉はとても仲が良かったのですが、三女の青葉とは犬猿の仲でした。正午の夏、若葉が突然の事故で亡くなってしまいます。光と青葉は同じく大切な存在を失ったのでした。
第二部は中学生からスタート。光はチームに所属していなかったのですがトレーニングは続けていました。そして高校生になってひょんなことから野球部に所属することになります。青葉もまた小さなころから野球が好きで中学、高校では野球部に所属していました。
あだち充さんのヒロインといえば女子らしい女子だったのですが、今作では野球少女がヒロインになります。青葉は女子なので甲子園には出れませんが練習には必ず出てきます。その姿に野球部員たちの気合も入り甲子園を目指していきます。
「クロスゲーム」は2009年にアニメ化されました。
アイドルA

クロスゲームと同じ時期2005年から「ゲッサン」で不定期連載されている漫画でまだ完結していません。
里美あずさはグラビアアイドルとして活躍する高校生。その一方、監督である父の影響で、野球の才能も持っています。
あずさには顔がそっくりな幼馴染平山圭太がいます。圭太の名前を借りて高校野球、プロ野球の世界でも活躍していくストーリー。あずさが野球をしている時は代わりに圭太がアイドルの仕事をすることも。
あだち充さんは現実的なストーリーが多いですがこちらはちょっと漫画チックなお話ですね。
MIX

2012年から現在も「ゲッサン」で連載されています。タッチから30年後(実際は40年近くたっていますが)の明青学園を描いたストーリーということでも話題になりましたね。
明青が甲子園に出場したのは達也たちがいた年1度だけ。それ以来の甲子園出場を目指す義理の兄弟立花投馬・立花走一郎のバッテリーと妹の音美を中心としたストーリーです。他の作品とは違い明確なラブストーリーではありませんが人間模様も楽しめます。
タッチの登場人物も登場することがあるので昔のあだち充ファンも楽しめる作品ですよ。
2019年にアニメ化もされています。