【まえがき】
1986年に公開されたアメリカ映画。
原作はモダン・ホラーの大家スティーヴン・キングの非ホラー短編集『恐怖の四季』の中に収められた、秋の物語『THE BODY』(『死体(英語版)』)です。
思春期に差しかかった少年4人が〝ひと夏の冒険〟に出かけるストーリーで、そのゴールには「死体探し」というちょっとしたホラー要素が含まれます。
誰にでもある〝少年期―少年の頃の懐かしい思い出〟が満載です。
その「少年のときだからこそできる、無鉄砲な冒険譚」が本作では輝くほどに展開します!
所せましと彩られた傑作の名シーンから〝隠れた名場面〟まで、今回は「本作の魅力」を一挙ご紹介していきます!

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リバー・フェニックス, ウィル・ウィートン, ロブ・ライナー 邦画・洋画のDVD・Blu-rayはアマゾンで予約・購入。お急ぎ便ご利用で発売日前日に商品を受け取り可能。通常配送無料(一部除く)。 12才の夏、 誰も大人になんかなりたくなかった……。 【ストーリー】 1959年オレゴンの小さな町。文学少年ゴーディをはじめとする12才の仲良し4人組は、行方不明になった少年が列車に轢かれて野ざらしになっているという情報を手にする。死体を発見すれば一躍ヒーローになれる!4人は不安と興奮を胸に未知への旅に出る。たった2日間のこの冒険が、少年たちの心に忘れえぬ思い出を残した………。 【映像・音声特典】 ● 音声解説(ロブ・ライナー監督) ● メイキング・ドキュメンタリー:「あの夏の想い出」 ● ミュージック・ビデオ ● ミュージック・スコア ● タレント・ファイル ● 関連作品予告編集 【スタッフ&キャスト】 ≪監督≫ロブ・ライナー ≪出演≫ウィル・ウィートン
〈概要について〉
【映画版】
1950年代末のオレゴン州の小さな町キャッスルロックに住む4人の少年。
それぞれの好奇心から線路づたいに“死体探し”の旅に出ます。ひと夏の冒険が描かれていきます。
アカデミー脚色賞、ゴールデングローブ賞作品賞、監督賞にノミネートされ、これを機に全米のみならず日本でも大きく人気を博します。
また、ベン・E・キングが歌う同名の主題歌は本作と競合する形でリバイバルヒットされしました。
ストーリーでは、主人公・ゴーディの兄弟間で拡がる葛藤が描かれ、その葛藤が生むとされるカインコンプレックスの詳細な性質が、本作をもって世に知られます。
【原作との違い】
●映画ではキャッスルロックはオレゴン州にあるが、原作ではメイン州である。
●映画では4人は沼を渡る時にヒルに襲われるが、原作ではビーバーが作った貯水池で水浴している時に襲われている。
●映画ではクリスがエースを挑発し、ゴーディが銃を発砲してエースの動きを束縛しているが、原作では逆でゴーディがエースを挑発し、クリスが発砲する。
●映画ではゴーディが執筆する際にテディとバーンとは疎遠となっているが、原作では執筆する以前に2人はすでに死亡している。
●映画ではクリスは弁護士になってから刺殺されるが、原作ではまだ法学部の学生の頃に刺殺される。
●原作ではゴーディは劇中で短編小説を2本執筆しているが、映画ではクリスたちに直接語った1本のみである。
●原作では街に帰った後4人はエース達に復讐されるが、映画ではその描写はない。
●原作では執筆後のゴーディが工場で働いているエースを目撃するが、映画ではその場面がない。
【主な登場人物】
●ゴードン・ラチャンス
主人公。愛称は「ゴーディ」。性格は内向的で真面目。
●ゴードン(大人)
劇中での語り手。ストーリー現時点で作家となっている。
●クリストファー・チェンバーズ
愛称は「クリス」。ゴーディの親友。
●セオドア・ドチャンプ
愛称は「テディ」。大きな黒縁眼鏡をかけている。
●バーン・テシオ
太っちょで、ちょっとのろま。性格は臆病でうっかり者。
●エース・メリル
不良グループのリーダー。
●アイボール・チェンバーズ
クリスの兄。いつもエースの隣にいる。
●ビリー・テシオ
バーンの兄。少年の死体の情報を発見した。
●デニー・ラチャンス
ゴーディの兄で故人。アメリカンフットボールのスター選手である。
●ゴーディの父と母
デニーを事故で亡くした悲しみで活気を失っており、ゴーディには関心がない。
【30秒でわかるあらすじ】
ストーリーは冒頭から、成長したゴーディの回想録から始まります。
ゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人は、いつも一緒にいる仲良しでした。
その4人はある日、バーンが兄から盗み聞きした「死体」の情報を知り、その死体を探しに行きます。ひと夏の冒険の始まりです。
死体の主(ぬし)はブラワーといって、キャッスルロックから30キロ離れた森の奥でずっと野ざらしになっています。このブラワーの死体は「行方不明」として扱われており、発見者はテレビ局からヒーロー扱いされ、一躍有名人になれます。
4人は「ヒーロー」になることを夢見て旅に出ますが、その途中、さまざまな苦難に遭います。
不良グループにからまれたり、陸橋で列車に追い駆けられたり、沼で体中をヒルに噛まれたりと…。それでもめげずに4人は冒険を続けます。
そして4人はやっとの思いでブラワーの死体を森で発見しますが、そこにまた不良グループが現れて…。
スタンド・バイ・ミー - Wikipedia
【本作の魅力!1】:広大な自然
アメリカ映画にはとかくよくありますが、本作もアメリカのオレゴンを舞台としているため、その広大な自然の魅力が満載です。ゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人が自分たちの町から森へと出て行くシーンは、「その広大な自然」が少年4人を待ち受けているという純粋な魅力にあふれています。
冒険中では、アメリカならではの大きな森林の空間、川、草原、また沼や峡谷のような難所の描写まで、緻密な構成が興味深いでしょう。
観れば観るほど、自然を彩る適材適所の光景が心地良く刺激します。
【本作の魅力!2】:楽しいリズミカルな音楽
本作では音楽がよく流れます。この音楽はまるで、少年4人の間や不良グループの間で日常茶飯事に交わされる〝挨拶〟のようです。
この音楽や歌の流れるタイミングが実にいい!
「映画だからこその演出」となりますが、これも観れば観るほど味わいがあり、ストーリー展開と脚色に効果大の魅力を添えてくれます。
音楽や歌を効果的に使うことで、映画のストーリー脚色がこんなにも変わるのかという演出効果のように思います。
本作で有名になった『ラディポップ』や『スタンド・バイ・ミー』(テーマ曲)は、他のどの曲と比較しても傑作と言えるでしょう。
【本作の魅力!3】:思春期の懐かしさと冒険
本作のテーマは「冒険」と「人生」です。
この2つのテーマを最大に魅了してくれるのが「思春期」という誰でも1度は通るタームにあります。
「少年期」と言ってもとりわけ未熟な部分だけを際立たせた描写ではなく、少年期にこそ覚える純粋でデリケートな印象です。
少年期からその後の人生までを彩らせる「とてつもなく壮大な構想設定」が浮き彫りになっていきます。
ゴーディと実兄との間で交わされるコンプレックスや、ゴーディとクリスとの間に生まれる友情、さらにテディやバーンとの間に見られる家庭の事情や体形のコンプレックスなど、それぞれの描写にも一口には語り尽くせない〝人間の孤独と幸福〟が豊富に描写されます。
【本作の魅力!4】:少年らしい勇気
少年期にある子どもにはよく〝無謀な勇気〟に魅了されます。
世間知らずゆえの「向こう見ずな勇気」に見えますが、本作ではその「向こう見ずな勇気」が非常に大切にされます。子どもらしい純粋な姿勢のように描かれています。
不良に襲われたクリスをゴーディが守ろうとするときや、列車に追い駆けられるゴーディとバーンを見守るクリスとテディの表情、また犬に襲われかけたゴーディをクリス・テディ・バーンの3人が助けようとするときなど、それぞれの場面で少年たちは自分の危険も顧みずに動いていきます。
このときに芽生えた少年らしい勇気は「向こう見ず」と言うよりも、人が生来持ち合せた「純粋な愛情」と言う方が適切でしょうか。とても暖かい仕上がりです。
【本作の魅力!5】:素朴な語らい
冒険中に4人は、それぞれの悩みを打ち明ける機会を得ます。
ゴーディにはゴーディの、クリスにはクリスの、それぞれに深い悩みを抱えています。その悩みの核心部分をそれぞれの語り口で明かすのです。
とくにゴーディには兄との間のコンプレックスがあり、「自分なんかいなくなればいい」と心底で思うほどの哀しさがありました。
その心の機微を上手く拾ってケアしフォローするクリスの表情は、まさに〝生涯の親友〟とも言える暖かい力を醸し出します。
「お前は物語を創るのが上手いんだから、そんなこと気にせず、生まれ持った自分の才能を信じればいい」
このクリスのセリフにゴーディは、積もらせてきた哀しみを一気に放出して泣きます。そして成長したゴーディは、見事にライターとして成長しました。
どうぞこの4人の語らいを、存分に味わってみて下さい。「こんな友だちがほしい」とつい思ってしまう名場面がちりばめられています。
【本作の魅力!6】:冒険の最高のスリル
冒険には〝何が起こるかわからない、未知のスリル〟があります。本作のストーリーでもこの〝スリルあふれる展開〟が始終つきまといます。
はじめはオーソドックスに自然の脅威や事変のスリル、そのうち〝スリル〟が人に形を変えて〝不良グループに追われるスリル〟に移り変わります。
次々と移り変わる〝スリル〟の連続に、視聴者はおそらくエンドロールまで飽きずに観賞することができるでしょう。
ですが本作に埋れた〝本当のスリル〟は目に見える所にあるのではなく、4人の過去に隠された「経験から生まれてくるスリル」にあります。
テディには軍隊上がりの父親がいて、その父親にテディは耳を切りつけられてずっと傷を持つことになります。このような暗い過去歴からテディの性格は、親の愛情を異常にほしがる〝飢えた人間像〟を醸します。
町でも冒険中でもテディには〝自分で招いてしまうスリル〟が次々現れます。
このような「生活歴による個性が生み出すスリル」の様子を、ストーリー中に確認するのも面白いでしょう。
【本作の魅力!7】:ストーリーは現在形で
「死体探しの冒険譚」が主なストーリーですが、その冒険を終えた後でも、4人の人生はそれぞれで違ってきます。
ゴーディは作家になり、この4人でした冒険の記録を物語風にアレンジしていきます。クリスはその後に独学で勉強して法律家になり、テディとバーンは疎遠になります。
原作ではさらに踏み込み、冒険中に出会ってしまった不良グループに今度は町でからまれるシーンまでが展開されています。
映画では大人になったゴードンの語りにより「その後の展開」が明かされますが、その後続のストーリーがあまりに斬新です。冒険中の4人に友情を感じてしまった人には、もしかすると泣けるほどの衝撃もあるでしょう。
どうぞ本作を味わう際には、そのメインストーリーだけでなく、「その後の4人のストーリー」にも触れてみて下さい。まさに少年期だけでなく、4人の人生そのものを描写した、壮大な設定に気づくでしょう。
【本作のみどころ!その1】:みんなのアジトの丸太小屋
4人には〝アジト〟とする、木の上の小屋があります。
少年ならではの簡素な作りの小屋ですが、4人はいつもそこに集まって、人には言えない悩みや興味や趣味を共有し合います。
そこで交わされるトランプ遊びやはしゃぎよう!
クリスとテディとバーンの3人は比較的明るく、コンプレックスを抱えながら繊細なゴーディとは少し一線を画します。
そこでトランプ遊びの〝切り札〟を出すゴーディの姿勢には、他の3人と自分とをはっきり分ける心象のようなものが浮かびます。
このような細かいシーンを見逃さないことで、その後のストーリー展開にも「4人のそれぞれの立ち位置」がはっきり見取れるでしょう。
【本作のみどころ!その2】:チョッパーが追い駆けてくる!
4人は冒険中、まだキャッスルロックを出てすぐの所で、チョッパーという凶暴な犬を飼っているおじさん宅に入り込みます。
4人はおじさんに自分たちの存在がバレないようにと細心の注意を払いますが、ひょんなことからバレてしまい、結局チョッパーに追い駆けられます。
このときの4人の表情!
必死に逃げる4人の真剣かつ面白い有様が、おそらくこの場面に1番あふれています!このときの4人とおじさんとのやり取りも、実にハラハラさせる〝リアルタイムな仕上がり・テイスト〟になってます。
【本作のみどころ!その2】:列車が追い駆けてくる!
またまた冒険中に、4人は森から出た所の陸橋に差しかかります。
その陸橋を渡らずに迂回するとまる1日かかってしまい、もとより無鉄砲のテディの勧めで全員がそこを渡るハメになります。
「自分たちが渡り終えるまでは列車はこない」という何の根拠もない少年らしい信望の下(もと)、4人は潔く陸橋を渡り始めます。
テディとクリスはバーンの前方を歩いていたため、そのまま陸橋を渡り終えますが、ゴーディはバーンの後ろを歩いていたのでなかなか渡り終えません。
バーンは四つん這いになって渡っていたのでかなり遅かったのです。
しているうちに、「絶対にこない」はずの列車が来てしまいます。
ここから先に陸橋を渡り終えたテディとクリスが見守る中での、バーンとゴーディの懸命の〝橋渡り〟の開始です。
ハラハラドキドキ感は、おそらくこのシーンでしょう。
コミカルなタッチで描かれる〝陸橋でのつなわたりのようなシーン〟を、ぜひ暖かく見守ってあげましょう。
【本作の名シーン!その3】:恰好よすぎるリバー・フェニックスことクリスの優しさ
クリスとゴーディはもとより級友ですが、この冒険を通してさらに親密になります。生涯の友とも言えるでしょうか。
クリスは自分の悩みを持っていますが、ゴーディは兄とのコンプレックスで非常に挫折しており、クリスは自分の悩みを放ったままで、そのゴーディの心に寄り添います。
ゴーディには文才がありましたが、それまでは誰もその才能を認めてくれず、その陰でゴーディは自分の夢をあきらめていました。
兄とのコンプレックスから生まれた「自分が兄の代わりに死ねばよかった」と言わせるほどの深い悩みが、追い打ちをかけるようにゴーディにのしかかります。
そんなとき、クリスはゴーディに作家になることを勧めます。
ゴーディが〝今悩んでいる核心部分〟を聞き、この夢に向かわせる愛情の深さは、いつもそばにいてくれる〝親友の友情〟が溢れます。
暗い森の中でのクリスとゴーディの語らいのシーンでは、クリスは自分の悩みを打ち明けながらも明るく振る舞い、またゴーディの悩みを聞いて支えます。
このようなクリスの優しさに魅了される場面を、ぜひ本作の要所で吟味してみて下さい。
【本作のみどころ!その4】:エースと不良グループの脅威
もともと「死体探しの冒険」は、バーンの兄が仕入れてきた情報から生まれたものです。
それを盗み聞きしたバーンがクリス、テディ、ゴーディの3人に打ち明け、4人は「ブラワーの死体探しへの冒険」に出ます。なので、この冒険はもともと不良グループのものでした。
不良グループのリーダー・エースは、冒険中の4人に出くわし「冒険を中止しろ」と脅してきますが、いえばもっともな主張です。
でも冒険をやめなかった4人ですから、それから不良グループと少年4人とのしつこい紛争が始まります。
このような背景の下、不良グループと4人は、2度、クライマックス的な対決を果たします。
1度目は町中、2度目は森の中です。
町中ではエースがクリスを押さえつけ、自分の言う事を聞かせるシーンですが、そこでは〝力の差〟を見せつけられます。
そして2度目はラストシーン。冒険であるていど自立して成長できた4人は、今度は不良グループに屈しません。今度のエースとクリスの争いはさらに切迫しますが、ここでゴーディの勇気が冴え、不良グループはすごすご退散します。
ぜひこの成長した少年たちの姿をお見逃しなくご堪能下さい。
【本作のみどころ!その5】:ブラワー発見時のゴーディとクリス
「もともとが死体探しなんだから、パーティ気分にはなれないよ」
これはゴーディが呟くセリフですが、4人どのような気持ちで冒険しているかが知れる貴重なワンカットになるでしょう。
冒険の目的が〝死体探し〟なので、確かにルンルン気分ではありません。ですがテディやバーンは「ヒーローになれること」を夢見て初めから冒険をしており、その浮かれ気分をどうしても捨てられません。クリスも初めはそうでした。
でも冒険しながら段々ブラワーに近づくにつれ、「ブラワーも自分たちと同じ少年で、自分たちと同じように悩みを抱えたり、冒険したいという思いもあっただろう…」という、別の見方が出てきます。
クリスもゴーディの言うことに納得し、テディとバーンを諭す形で、結局、死体を持ち帰ることはしませんでした。
このラストシーンの4人それぞれのあり方を、ぜひご堪能下さい。本作『スタンド・バイ・ミー』を醍醐味がわかるでしょう。
【解説とレビュー】
本作『スタンド・バイ・ミー』を小学生時に初めて観ましたが、今でも鮮明にその感動を呼び起こすことができるほど、〝忘れることのできない感動と魅力〟を植えつけられました。
なんといってもクリスの優しさと愛情が味わい深い…。
ゴーディはどちらかというと現代によく見られる〝悩める少年〟の姿を持ち合せており、実際にこのゴーディの立ち位置になる人は多いかと思われます。
だからこそ余計に「クリスみたいな親友がほしい」と想わされるのでしょう。
「スタンド・バイ・ミー」の日本語訳は「いつでもそばにいてほしい」となり、さらに超訳すれば「いつもそばにいてくれる親友像」となります。
少年には少年なりの、中高生なら中高生なりの、それぞれの「その時にしかない悩み」があり、またそれと同時に「その時にこそ欲しい親友」の姿があるのでしょう。これはおそらく誰にでもあるように思います。
つまり本作『スタンド・バイ・ミー』という映画は、
人の人生にいつでも飛び込んでくる不朽の名作
となるでしょう。
本作は決して少年の悩みだけなく、成長してもつきまとう〝人生の悩みとあこがれ〟を素直に捉えています。
このような背景と内実をともに、多くの人がこの『スタンド・バイ・ミー』を今でも心のコレクションにしていることでしょう。