レイモンド・チャンドラー
活字離れ、出版不況と言われ、小説を取り巻く環境には厳しいものがあります。それでもまだ推理小説は人気があるようですが、似て非なるとはいえハードボイルドの方は目を覆うばかり。昔は人気があったんですけどねぇ。
ハードボイルドを若い人にはぜひ読んでもらいたいし、そうでない方にはぜひ読み返して頂きたい。先ずは、そう、第一人者であるレイモンド・チャンドラーをお勧めする次第です。
レイモンド・チャンドラー
推理小説であれば、主人公は名探偵。しかし、ハードボイルドとくれば、主人公は私立探偵であることが望ましいように思います。
世界で最も美しい名前を持った私立探偵と言われるフィリップ・マーロウ。レイモンド・チャンドラーの長編小説の主人公は、この男が務めます。
フィリップ・マーロウ
フィリップ・マーロウのアメリカでの人気は日本の比ではなく、長編映画、TVシリーズ、ラジオドラマ、そしてコミック化もされているほどです。
映像に関しては、ハンフリー・ボガート、ロバート・ミッチャムをはじめとして、ジェームズ・ガーナー、ジェームズ・カーン、エリオット・グールド、ジョージ・モンゴメリー、ロバート・モンゴメリー、パワーズ・ブース、ジェイソン・オマラ、ディック・パウエル、フィリップ・ケーリー、ダニー・グローバー、トマス・ハナクなど、実に多くの役者がフィリップ・マーロウを演じています。
レイモンド・チャンドラーの長編作品は全部で8作(そのうち1作は未完)。遺作となった「プレイバック」を除き全て映画化されていて、主人公のフィリップ・マーロウを実に多くの俳優が演じています。比べてみると楽しいですよ。
それではレイモンド・チャンドラーの名セリフがちりばめられた、どれをとっても不朽の名作を順に紹介していきます。
大いなる眠り
レイモンド・チャンドラーの長編作品は近年 村上春樹が翻訳したことで新たに注目されました。まぁ、それで若い読者を獲得したのであれば結構なことです。勿論、作品は村上春樹人気に助けを借りなくても素晴らしいのですが、長編1作目の「大いなる眠り」からして傑作ときています。
大いなる眠り
ハードボイルドはタフな私立探偵にセクシーな美女というのはお決まりです。その登場人物のこだわりぬいた粋な会話は大きな魅力ですからね。
「大いなる眠り」は映画化され1955年に日本でも公開されましたが、何故か邦題は「三つ数えろ」。出演者はハンフリー・ボガートにローレン・バコール。ボギーが演じるフィリップ・マーロウってのはやっぱりいいもんです。
監督は名匠ハワード・ホークス。モノクロってのが雰囲気があっていいですね。ハードボイルド映画にぴったり。それにしても、ローレン・バコールは美しいです。
本書の中でフィリップ・マーロウが探偵という仕事について語っています。「事件を引き受ける。つまり生活の為に売るべきものを売っている。神様からもらった少しの勇気と知恵と依頼人を保護しようと歩き回る熱心さ。それだけさ」思わず私立探偵になってしまいそうになります。
さらば愛しき女よ
長編シリーズの第2作目「さらば愛しき女よ」。村上春樹訳 では「さよなら、愛しい人」となる。現代風と言えなくもありませんが、でも、ねぇ、ハードボイルドらしさで言えばやはり「さらば愛しき女よ」でしょう。因みに原題は「Farewell, My Lovely」です。
さらば愛しき女よ
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) | レイモンド チャンドラー, Raymond Chandler, 村上 春樹 |本 | 通販 | Amazon
ここでのフィリップ・マーロウはもちろんカッコいいのですが、もう1人魅力的な男が登場します。殺人を犯した大鹿というあだ名を持つマロイです。本書は大鹿マロイの不器用なまでの一途な愛が魅力となっています。
3度映画化されているようですが、日本で有名なものとしては1975年に公開されたロバート・ミッチャム主演のものでしょう。