視聴率59%を記録!日本社会に多大な影響を与えた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」

視聴率59%を記録!日本社会に多大な影響を与えた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」

皆さんは「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐殺人事件」をご存知でしょうか?1963年に発生した誘拐殺人事件で、その注目度の高さ及び後の社会に与えた影響から「戦後最大の誘拐事件」とも言われています。


日本社会に多大な影響を与えた「吉展ちゃん誘拐殺人事件」

皆さんは「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐殺人事件」をご存知でしょうか?1963年に発生した誘拐殺人事件で、その注目度の高さ及び後の社会に与えた影響から「戦後最大の誘拐事件」とも言われています。この記事では、吉展ちゃん誘拐殺人事件の概要と現在について書いてみたいと思います。

事件の概要

事件が発生したのは1963年3月31日のこと。東京台東区入谷町に住む村越吉展ちゃん(当時4歳)が、自宅近くの公園で行方不明となり、両親はすぐに警察に通報しました。そして2日後の4月2日、犯人から身代金50万円を要求する電話が入ってきました。

日本初の「報道協定」が結ばれる。

誘拐事件と確定した吉展ちゃんの失踪。そこで警察は犯人への刺激を避けるため(1960年に発生した「雅樹ちゃん誘拐殺人事件」でのマスコミの過熱報道の反省もあった)、マスコミに対し報道の自粛を要請。日本初の「報道協定」が結ばれました。

4月7日、身代金の受け渡しが行われる。

犯人からの度重なる電話の後、身代金の受け渡しは4月7日に決定、犯人から「母親一人で金を持ってこい」といった受け渡し方法が指示されました。受け渡し現場に犯人はいなかったものの、吉展ちゃんの靴が置かれていたことから、母親はその場に50万円の入った封筒を置きました。すると近隣で監視していたと思われる犯人は、警察のわずかな隙を突き50万円を奪取し逃亡したのです。それ以降、犯人からの連絡はなく、吉展ちゃんの行方もわからないままとなってしまいました。

想定された犯人像、そして録音テープ。

犯人を取り逃がしてしまった警察。4月19日には、この事件を公開捜査に切り替え、録音に成功していた犯人との電話のやり取りの音声を公開しました。この音声には多数の情報が寄せられ、ズーズー弁(東北方言)に類似したアクセントから、「犯人は南東北から北関東出身ではないか」といった推測もなされました。

犯人のプロファイルを掲載したポスター。

また、電話の声の主の年齢を「40歳から55歳くらいの者」と推定。東北訛りの中年男性という犯人像がプロファイリングされ、全国から目撃情報などが多数寄せられました。しかし、犯人逮捕に結びつく有力な情報はなく、事件は長期化の様相を呈していきます。

公開された犯人の肉声!

「吉展ちゃんを返して」という歌が続々と発表される!

なかなか犯人が逮捕されない中、1965年には“吉展ちゃんを返して欲しい”という思いを歌に込めた楽曲「かえしておくれ今すぐに」が発表。当時の人気歌手「ザ・ピーナッツ」「ボニージャックス」「市川染五郎」「芦野宏」の競作という形で発売されました。犯人逮捕までの間はラジオなどで頻繁に流され、メディアも全力を挙げて事件の早期解決を願いました。

ザ・ピーナッツ版のレコード。

ボニージャックス版のレコード。

芦野宏版のレコード。

捜査から2年が経過、ついに犯人が浮上!!

まさかの長期戦となり、芸能界も事件解決を応援した吉展ちゃん事件。1965年3月には警視庁捜査一課の捜査本部が解散し、専従者による特捜班が設置されました。そして7月4日。特捜班は、賽銭泥棒などの前科者で以前より犯人候補として挙がっていた小原保(当時32歳)を逮捕しました。

こちらは当時の新聞報道。

小原は当時、借金の返済などでお金に困っており、一方で事件直後に愛人に大金を渡すなど不自然な金の流れがあり捜査線上に浮上。逮捕後に「誘拐した日の夜に殺害し、寺の墓地に埋めた」などと自供し、埋めたとされる円通寺の境内から吉展ちゃんの遺体が発見されました。こうして事件は最悪の結末を迎え、日本中は悲しみに包まれたのです。7月5日の朝にNHKで放送された「ついに帰らなかった吉展ちゃん」は、関東地区で59.0%という驚異的な視聴率を記録しました。

こちらは当時の雑誌。

当時のニュース速報。

事件が後世に与えた影響とは?

当時、国民の最大の関心事のひとつであった吉展ちゃん事件。前述の通り、日本初の報道協定が結ばれた事件でもありますが、一方で後世に多大な影響を残しました。人質の救出に失敗したことを重く見た警視庁上層部は、1964年に日本初の「誘拐捜査専門部隊」として捜査一課に特殊犯捜査係を設置。また同年、刑法の営利誘拐に「身代金目的略取」という条項が追加され、通常の営利誘拐よりも重い刑罰が科されるようになりました。さらに、確実な犯人逮捕のため、犯罪捜査における「電話の逆探知」が行えるようにもなりました。

また、犯人像を「40歳から55歳くらい」と誤ったプロファイリングをしてしまったことや、録音テープの音声解析について当時は技術が確立されていなかったことも反省点となり、技術向上を図る契機となりました。

「吉展ちゃん事件」の映画も製作される。

また、犯人逮捕後の1960年代後半から、吉展ちゃん事件を題材とした映画も何本か製作されています。逮捕直後の1965年にはドキュメンタリー映画「噫(ああ)!吉展ちゃん」が、翌1966年には事件を担当した刑事・堀隆次の手記を原作とした「一万三千人の容疑者」が公開。その後も1979年の土曜ワイド劇場の一作品「戦後最大の誘拐 吉展ちゃん事件」など、時代を超えて事件を題材とした作品が散発的に公開されています。

逮捕後の小原保は?

犯行を自供した小原ですが、1966年の東京地裁での死刑判決以後、3回の公判を行うも翌1967年に最高裁にて死刑が確定。1971年12月、宮城刑務所で死刑が執行されました。享年38。ただ、当時小原を担当した弁護士が後年明かしたところによると、自白については「事実と違う点がある」とのこと。

小原は確かに吉展ちゃんを死なせてしまったのですが、それは「声を出されるのを恐れて口を押えたら死んでしまった」というのが真相であり、「殺すつもりで窒息死させたのではない」というのです。これが真実であるなら殺人ではなく傷害致死となり、当然量刑にも影響を与えます。しかしながら裁判では死刑が確定し、死刑が執行される際にも「真人間になったから平塚さん(平塚八兵衛)によろしく」と、死刑を受け入れていたことが推察できます。

事件から50年以上。現在の現場には…

事件から50年以上の歳月が流れた現在。吉展ちゃんの遺体が発見された円通寺の境内では、供養のために「よしのぶ地蔵」が建立されています。境内で我々を静かに見守っている吉展ちゃん。令和の時代となり、今後同様の悲劇が起こらないことを祈るばかりです。

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