松木ひろし
松木ひろしをご存知でしょうか?脚本家です。あまり一般的には知られていないかもしれませんね。60年代~80年代に大活躍したんです。
代表作は数あれど、イチオシは、なんと言っても石立鉄男と大原麗子のラブコメ「雑居時代」ですね。
もう不朽の名作です!そしてもちろん、他にも多くの素晴らしい作品を残しています。
松木ひろしのテレビドラマのデビューは1960年の「ぼうふら紳士」。映画でも活躍し、60年代にはクレイジーキャッツ、ザ・ドリフターズ、コント55号の主演作の脚本を担当しています。

ニッポン無責任野郎
60年代にも多くの作品を残していますが、しかしまぁ、松木ひろしといえば、やはり70年代。しかも、テレビドラマ。やはりこれでしょう。ということで、70年代の松木ひろし、いってみましょう。
だいこんの花
70年代の最初の1本は、「だいこんの花」です。70年代をリアルタイムでご存知の方であれば忘れることの出来ない名作。主演は竹脇無我、その父親役に森繁久彌を配したホームドラマです。

だいこんの花
放送は1970年10月22日~12月24日。おいおいなんだよ、それって60年代じゃないかという声が聞こえてきそうですが、そこは大目に見て頂きたい。「だいこんの花」は5部構成なんですね。
第2部は「新・だいこんの花」として1972年1月6日~ 6月29日まで放送されました。
おぉ、加藤剛のなんと凛々しいこと。以降「だいこんの花」は、第3部1972年11月16日~1973年5月10日、第4部1974年9月5日~1975年3月27日、第5部1977年6月2日~11月24日と長きにわたって放送されています。
しかし、松木ひろしが脚本を担当したのは第2部まで。第3部からはそれまで共同で担当していた向田邦子が1人で書いており、「だいこんの花」は彼女の代表作のひとつとなるのでした。
おひかえあそばせ
ダイコンの次は人参だ!というわけで、同系列でホームドラマ「にんじんの詩(1972年7月6日~1972年11月9日)」を担当。主演は宇津井健でした。それにしても、「だいこんの花」がいかに人気だったかが分かりますね。
その間、他局(日本テレビ)に「おきあがりこぼし(1970年11月 - 1971年1月」を書いていた松木ひろしが、いよいよ本領を発揮します。
「おきあがりこぼし」に続いて日本テレビで放送された「おひかえあそばせ」です!

おひかえあそばせ
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上記のストーリーをよく読んでください。そしてこの配役です。妻を亡くした父親役に大坂志郎。その父親には6人の娘。長女役は冨士眞奈美。そして主人公には売れないカメラマン役の石立鉄男。その友人に山本紀彦と、ストーリーもさることながら見覚えのあるこの出演者。そうです。分からない人にはまったく分からないでしょうが、まんま「雑居時代」です。「雑居時代」は「おひかえあそばせ」のリメイク版、というか、プロトタイプなんです。

雑居時代
設定上の大きな違いは、「おひかえあそばせ」は6人姉妹、「雑居時代」は5人姉妹となっていて、「おひかえあそばせ」では次女(宮本信子)と四女(岡田可愛)が主人公を好きになるという点ですね。宮本信子も岡田可愛も勝気な性格でカワイイんですよね。その二人を合わせたのが「雑記時代」の次女(大原麗子)という感じです。
「雑記時代」と違ってやきもきするようなラブロマンスは少ない。というか、「おひかえあそばせ」にラブストーリーを軸にしてシリアスな要素を入れ、更にブラッシュアップしたものが「雑居時代」ということになります。
あの名作「雑居時代」は、「おひかえあそばせ」という作品があったがために完成度の高いドラマになったというわけです。
パパと呼ばないで
「おひかえあそばせ」に続き、1971年10月から石立鉄男&ユニオン映画シリーズの第2作目となる「気になる嫁さん」が放送され大ヒット。ただ主演は石立鉄男というよりも、榊原るみです。松木ひろしは全40話のうち、1話~3話まで続けて担当したもののその後は飛び飛びとなり、結局7話しか担当していません。
次いで1972年10月4日から石立鉄男&ユニオン映画シリーズの3作目「パパと呼ばないで」が放送されます。

パパと呼ばないで
これはもう、なんと言ってもチー坊こと橋本千春役の杉田かおるですね。カワイイとしか言いようがありません。石立鉄男演じる安武右京が、 姉の死去によって姪の千春を引き取り、米屋の2階に下宿することになり、そこで繰り広げられる心温まるホームドラマ。
「雑居時代」で石立鉄男が杉田かおると最初に出会うシーンで「あれ?お米屋さんの2階に居なかった?」というセリフは、このドラマがあったからなんです。
まぁ、何にしてもチー坊はカワイイ!!!
これまた大ヒット。しかし、松木ひろしは、またまた1、2話を続けて書いているものの、その後はやはり飛び飛びです。忙しかったんでしょうし、ヒット作を手掛けるのは大変なのでしょう。この作品、脚本は5人がかりとなっています。
気まぐれ天使
石立鉄男・ユニオン映画シリーズの4作目にいよいよ「雑居時代(1973年10月3日~1974年3月27日)」が登場し、1974年10月13日~1975年3月30日までがシリーズ5作目の「水もれ甲介」です。
この2作品、松木ひろしは大活躍で「雑居時代」はほとんど一人で書いていますし、「水もれ甲介」でも半分近く書いてます。
そして6作目となるのが再び石立鉄男、大原麗子コンビとなる「気まぐれ天使」です。

気まぐれ天使
松木ひろしの脚本にこの2人とくれば、誰だって期待します!「雑居時代」よ再び!と誰もが思ったことでしょう。しかし、ちょっとばかり違うんですね。いえ、確かにこの2人は今で言うところのツンデレです。くすぐられます。
うだつの上がらない彼としっかり者の彼女。しかもその彼女はセクシーお姉さんとして深夜の人気DJときたもんだ。「雑居時代」と違って既に婚約中だけど結婚までの道が遠い。いつものようにすったもんだがあるわけです。それでこそ松木ドラマです。
松木ひろし流石にいいとこ突きます。しかしですねぇ、これ、主役はこの2人じゃないんですよ。実質的には樹木希林が主役です。石立鉄男、大原麗子コンビの出番が少ないです。一説には大原麗子の体調が悪く長時間の撮影に耐えられなかったと言われています。
それもあってでしょう。全43話とシリーズ最長であるにも関わらず大原麗子は13話で姿を消してしまいます。
松木ひろしもこのコンビに思い入れが強かったのでしょう。大原麗子が出ている13話中の12話を手掛けています。そして、その後はパラパラと。。。
「気まぐれ天使」のヒットを受けて「気まぐれ本格派」が始まったのは1977年10月です。

気まぐれ本格派
実家の貸衣装店を兄の利昌に任せ、カーフェリーの船員として気ままな独身生活を送る清水一寛。ところがある日、利昌が交通事故に遭い…
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「気まぐれ本格派」は、石立鉄男・ユニオン映画シリーズの最終作です。松木ひろしは1話から6話まで続けて担当し、ラスト2話も力を込めて制作していますね。有終の美という感じでしょうか!
「水もれ甲介」と「気まぐれ天使」の間に他局で「うしろの正面」というドラマも手掛けていますし、さぞかし忙しかったことでしょうね。
池中玄太80キロ
「気まぐれ本格派」の後には「自由学校(1978年、NHK)」、「敵か?味方か?3対3(1978年、テレビ朝日)」、「消えた巨人軍(1978年、日本テレビ)」、「聖女房(1979年、日本テレビ)」と休む間もなく働き続ける松木ひろしですが、70年代最後にまたまた大きなヒット作品を作り上げます。
原案と脚本を担当した西田敏行主演の「池中玄太80キロ」です。

池中玄太80キロ
「池中玄太80キロ」は、パートIが1980年4月5日~6月28日、パートIIが1981年4月4日~8月29日、パートIIIが1989年4月8日~5月6日に放送され、これ以外にもスペシャル番組が制作されるという大ヒット作です。
松木ひろしはスペシャル版も含めほとんど1人で書いています、スゴイ!70年代最後に、そして80年代の始まりに特大の花火を打ち上げた松木ひろし。それにしてもこれだけ立て続けに脚本を書けるなんて驚異的です。しかも、ほとんどがヒット作なんですからね。
70年代は松木ひろしを求めていた。ということは、ホームドラマの時代だったということですね。