【桃尻娘】橋本治はこんなふうに世に知られてきた

【桃尻娘】橋本治はこんなふうに世に知られてきた

平成31年1月に亡くなられた作家の橋本治さん。長編小説や評論だけでなく、中世・近世の日本文学にも及ぶ多作な作家でしたが、彼が世に出てきたときはこんなふうなデビューでした。彼の業績のほんのさわりをご紹介。


しかしこの中にも橋本治らしい「ひとこと言いたい」セオリーは生きています。

「春って曙よ!」あの『桃尻語訳 枕草子』爆誕

あの有名な書きだし「春は曙」を
「春って曙よ!」とぶっ飛んだ訳でお披露目した『桃尻語訳 枕草子』。
受験勉強の時にお世話になった方もおいででは?

上中下の3巻からなります。
枕草子そのものはそんなに長い作品じゃないんですが
桃尻語訳の他にその10倍以上の「註」がついていて
それがまた桃尻語をしゃべってる橋本治なんですよ。

桃尻語訳 枕草子〈上〉 単行本 – 1987/9

桃尻語訳 枕草子〈上〉 | 橋本 治 |本 | 通販 | Amazon

ちょっと引用してみますね。
枕草子第一段
「春は曙。やうやうしろくなりゆく山ぎは、少し明りて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。夏は夜。月の頃はさらなり。闇もなほ、蛍の多く飛び違ひたる。またただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。」
これを桃尻語訳にすると

「枕草子」を取り上げた理由、
おそらくそこには、平安時代にもいた、等身大の「女」を取り上げたかったという
意図があったのではないでしょうか。
漢文で書かれるのが普通であった時代に書かれた、かな文字の作品。
日常にあるつらつらした思いや感じたことやできごとを書いた「枕草子」は
現代における少女マンガと同じ位置づけと見ることができます。

でもなぜ「桃尻語訳」だったのか

桃尻語訳は、たしかにぶっ飛んではいるのですが
いわゆる「意訳」「超訳」ではないんです。

橋本治『「わからない」という方法』によると
ひとつの文を訳すにも、「断定の助動詞に完了の助動詞がくっついて、しかも推量なんだよな」
と原文をいちいち品詞分解し、全部現代語におきかえるという作業を
延々と何万回も繰り返した「地を這うような作業」だったそう。
その第一稿を読み直して原文と突き合わせ、直しを入れること三回。
さらにそれに追加した第二案を書き足して推敲をし、やっと清書。
出版社に渡した後も校正作業で赤を入れるなどの念の入れようだったそうです。

こうして「桃尻語」というカルいノリの言葉に置き換えられた「枕草子」が
とっても読みやすいものになったかというとさにあらず。
わかりにくいのは原作者の清少納言のせいだと橋本治は言っていますね。

たぶんそれを補足するための「註」がふんだんにあるわけなんですが
(その「註」だけで平安時代のしきたりや政治情勢や風俗が網羅されています)
これが補って余りある・・・余りあり過ぎるために
『桃尻語訳 枕草子』は、また別の意味でハードルの高い本になっています。

批評の手の届かない「マグマの人」

その後橋本治は
『貧乏は正しい!』1993年
『窯変源氏物語』1991–93年
『宗教なんかこわくない!』1995年
『ひらがな日本美術史』1995–2007年
『双調 平家物語』1998–2007年
『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』2002年
『夜』2008年
『巡礼』2009年
『福沢諭吉の「学問のすゝめ」』2016年
『草薙の剣』2018年
などの代表作のおよそ20倍の著作を出す、非常に多作な作家となりました。

多作ではありますが、一方で、正当な評価をされていない作家でもあります。
評価の難しい作家ということです。
なにせ「小難しい」のですから。

橋本治は自分を読書家だと思っていません。
ただ、世の中のいろいろなものごとを「おもしろい」と思う自分と
なぜ自分が「おもしろい」と思ったのかをがっつり考えたいという欲求に
あらがうことのできなかった作家なのだと思うのです。
底知れぬ知識のうしろには膨大な量の情報があり、
それを欲し咀嚼し続けるマグマがあったはず。

70歳で亡くなるときまで、マグマを燃やし続けた作家でいらしたのではないでしょうか。

橋本治さんは2019年1月29日、肺炎のため東京都新宿区の病院で逝去されました。
ご冥福をお祈りいたします。

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