「高校生の女の子は普段常に心の中でブツクサ言っている筈だ」
(講談社文庫版『桃尻娘』あとがき)との認識をもとに
頭の中で、言葉にせずに「思った」感情を
なんとか言葉にしたらこうなった、的な
だらだら垂れ流し系の饒舌体なのですが
その、いろんなものにブチギレてる視点はかなりな部分リアルで
それが「桃尻語」とのちのち言われる文体とマッチしているんですね。
ここまで饒舌に文句をつけて来ての最後の部分。
どうです純文学でしょう。
誰ですかエロだって言ってるのは。
蛇足ながら付け加えておくと
「桃尻娘」と名付けたのはクラスメートの男子達で
遠足に行った時にたまたまピンクのコットンパンツを履いていたから
そういう二つ名がついたわけ。
別に素肌のヒップがピンクなわけじゃないのよォ。
なのになぜかロマンポルノになってしまったり
日活ロマン・ポルノポスター 『桃尻娘(ピンク・ヒップ・ガール)』 竹田かほり 亜湖 監督・小原宏裕 原作・橋本治 ’78日活
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『桃尻娘』は、単行本に同時収録された『無花果少年(いちぢく・ボーイ)』『菴摩羅HOUSE(まんごおハウス)』『瓜売小僧(ウリウリぼうや)』『温州蜜柑姫(おみかんひめ)』の後
『その後の仁義なき桃尻娘』(1983年)
『帰って来た桃尻娘』(1984年)
『無花果少年と瓜売小僧』(1985年)
『無花果少年と桃尻娘』(1988年)
『雨の温州蜜柑姫』(1990年)と、シリーズ化した著作が出ています。
竹田かほりを一躍人気者にした「桃尻娘(ピンク・ヒップ・ガール)」。シリーズで観ると、また楽しめます。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
誰も書かなかった「少女マンガ」論
29歳の(女子高生から見れば)おっさんが
なぜ15歳の女の子のリアルを『桃尻娘』で書けたかといえば
そこには「少女マンガ」という
女の子の世界をリアルに感じられるメディア、
そして当時の社会からは隔絶された「異次元の」世界があったのではないかと。
2歳下の妹さんの読んでいた萩尾望都や大島弓子のマンガが自宅にあり
イラストレーターとして世に出ようとしている橋本治が、
それら24年組の作品を読んでないはずがないわけで・・・
(現に『桃尻娘』にも、竹宮惠子『風と木の詩』のジルベールの名前が出てきます)。
少女マンガは、世の中に現としてありながら、社会的には黙殺されていました。
評価の対象になどなるものではなく
誰もきちんと論じようとする人はいませんでした。
文筆業界の人間として、初めて、少女マンガを論じたのが橋本治です。
花咲く乙女たちのキンピラゴボウ<前篇> / 橋本治 北宋社 1979
<<趣味・雑学>> 花咲く乙女たちのキンピラゴボウ<前篇> / 橋本治 | 予約 | 単行本(実用) | 通販ショップの駿河屋
書評『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』橋本治著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
出版当時、それほど話題になったわけではないですが、
その後24年組について論じられるようになってから
「ほぼリアルタイムに近い時点でこれを書いた橋本治はすごい」と
後年じわじわと評価されてきた本です。
『桃尻娘』の女子高生のたたみかけるノリではないですが
多表現で饒舌な説明を、上から下から横からまわりこんで書き込んでいくスタイルは
もうすでに「橋本治」。
本人の経歴に曰く「日本評論史に燦然と輝くマンガ評論の金字塔」です。
ちょっとおまけ 実は元祖「編み物王子」
今「編み物王子」というと、ニットの貴公子広瀬光治が有名ですが
実は橋本治は、35年前に編み物の本を出しています。
元祖「編み物王子」だったんですよ。
男の編み物、橋本治の手トリ足トリ 単行本 – 1983/11/1
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表紙のニットを見るとわかると思いますが、
女性用ニット教本でよく見る「模様編み」ではなく「編み込み」
しかも絵画のように人の顔や図を編み込んでいく、アヴァンギャルドなスタイル。
当時の編み物界に衝撃を与えた本であるらしく
絶版になっている現在では非常に高値で取引されています。
男の編み物 橋本治の手トリ足トリ 1984年 昭和59年 河出書房新社 A08-01
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