「おやじファイト」で得られた生きがい!40代ボクサー、阿部浩治さん

「おやじファイト」で得られた生きがい!40代ボクサー、阿部浩治さん

自分の過去を振り返った時、誰しも口惜しかったり恥ずかしかったことがあると思います。そんな過去をどう受け入れて消化するかは人それぞれ。40代でリングに立つボクサー阿部浩治さんはそんな自身の過去を美化することなく向き合うことで生きがいを手に入れることが出来ました。


20年を経て、聖地・後楽園ホールへ

「おやじファイト」フェザー級日本チャンピオンの阿部浩治さんは、40代のチャンピオンとして2度後楽園ホールのリングに上がり2戦1勝1分とチャンピオンを防衛中。

彼にとって、後楽園ホールのリングに上がることはおよそ20年ぶり。

若き日に志したボクシングと夢が叶った後楽園のリング。
プロボクサーとして2度立った後楽園のリングでは、いずれも2Rにダウンを奪われた苦い過去を持っています。

プロを離れて堅実な人生を送る阿部さんが、なぜ20年経った後に再び後楽園のリングに立つこととなったのか。

その偽らざる心境を、ミドルエッジ編集部(ミド編)は伺って参りました。

おやじファイトとは

プロボクサーを夢見て国立大学を志望

タイトルからはちょっと違和感を感じるかもしれませんが、若き日の夢を追いかける誰しもが、周囲の反対を振り切ってまで猛進するドラマティックな展開を歩むとは限りません。

むしろそのような例は珍しく、多くの人にとっては現実的な環境との折り合いの中で夢は夢のままに終わることの方が多いのではないでしょうか。

中学2年のころ、プロボクサー鬼塚勝也選手に憧れてプロボクサーを夢見た阿部さん。
話はそんな阿部さんの中学生時代から始まりました。

1977年、宮城県気仙沼市生。
埼玉大学在学中にプロテスト合格。
大学卒業後には公務員試験に合格、現在は千葉県市川市役所に勤務。
2015年より「おやじファイト」に参戦。
現在は4勝1分、フェザー級の日本チャンピオン。

阿部浩治さん

中学では卓球部、高校ではハンドボール部

「宮城県気仙沼市に生まれ高校までは仙台で育ちました。中学校では卓球部に所属して仙台市下で3位の成績を収めることが出来ました。」

-仙台といえば卓球少女愛ちゃんを思い出さずにいられません。その地で3位とは素晴らしい成績ですね。

「ええ、ですが当時は卓球というとマイナーなイメージがあって、自分が卓球部だということをあまりいいたくない、そんな気持ちでもあったんです。」

-たしかに、当時は室内部活ですとバスケットボールとバレーボールがカッコよくて卓球とバトミントンはマイナーというイメージはありましたね。また、ボクシングとも少し異なるイメージを抱くように思います。

「高校に進むとハンドボール部に所属しました。実践重視のハンドボール部で県下3位の強豪校でしたが団体スポーツの難しさも感じることとなり、高校2年の冬には退部しました。」

-県下3位、これもまた強豪校だったのですね。団体スポーツより個人スポーツ、、、ところでボクシングに関心を抱いたのはいつ頃だったのでしょうか。

「中学校2年のとき、鬼塚選手の試合を見てボクサーに憧れましたね。プロボクサーになりたいと思って大学は国立大学を志望することにしました。」

-えっ、プロボクサーになるため国立大学ですか?

「はい、公務員だった父親が厳格な家庭環境で育ったものですから親元にいる間はボクシングに挑戦することが出来なかったんです(笑。国立大学への進学なら一人暮らしも認めてくれたので、まずは国立大学を目指しました。そして大学に入ったら角海老宝石ボクシングジムに入ろうと決めていました。」

思わず「あ、分かるなあ~」などと感じてしまったミド編。

中高生の頃「〇〇がやりたい!」と思っても、親の目が気になって出来なかったこと。
大学生になったら、一人暮らしが出来るようになったら、などと考えた経験は多くの方に共通しているのではないでしょうか。

埼玉大学に入学、角海老宝石ボクシングジムへ

-角海老宝石ボクシングジムの門を叩いたのはなぜだったのでしょう?

「角海老宝石ボクシングジムは基礎からみっちり叩き込んでくれたので、それまでボクシング未経験の自分には合っていましたね。ボクシングにずっとあこがれていたので大学1年の8月入門以来、練習に明け暮れました。



当時は世界チャンピオンになればテレビのゴールデンタイムで放送された時代ですし、大学時代は必死で練習に励みました。毎日強い人と拳を交え、ボコボコにされても次の日にはまたジムに通う。そんな生活を繰り返しながら大学3年の時プロテストに合格したんです。」

中2で憧れたボクシング。
その世界へ歩みを進めるために国立大学を目指す。

一見ユニークな歩みと感じますが、同時に道を定めたらブレない強さを感じます。
その精神力で、阿部さんは埼玉大学3年生のときにプロボクサーとなります。

憧れのプロボクサー、そのリング上でみた景色は。

2戦して2敗、ともに2Rでダウンを奪われる

1998年12月5日のプロデビュー戦、翌1999年8月16日のプロ第2戦。

阿部さんはともに聖地・後楽園ホールで戦い敗れます。
いずれの試合でも2Rにダウンを喫し、阿部さんはリベンジを期しつつ就職することになります。

「それなりの練習を積んだ自負もありプロテストは自信があったんです。そして迎えたプロデビュー戦の後楽園ホールは心が昂って目の前の鉄扉が開くまでの時間が長かったですね。」





「プロで2戦やった実感としては『このまま続けてもよい流れが作れない。一度就職して環境を変えてからリベンジしよう』というのが率直な思いでした。



元々、角海老宝石ボクシングジムには大学卒業後に会社員として働きながらプロで戦う新井泰選手という方がいて、自分もそのような道を目指していたんです。」


元日本王者の新井泰さん、会計事務所を開業 | Boxing News(ボクシングニュース)

ボクシングがやりたくて国立大学を志した阿部さんの中高時代。
今度はプロのリングでのリベンジを誓いつつ大手企業に就職することとなりました。

2年間の会社員生活を経て公務員試験に合格

就職した企業を2年で辞めた阿部さん。
社内結婚を経ての退職後、1年の勉強期間を経て公務員試験に合格することとなります。

見事合格した後、現在の職場である千葉県市川市役所に採用された阿部さんは、リベンジを期していたプロのリングを目指してボクシングジムに足を運び、2006年に再びプロテスト合格を果たします。

果たせなかったリベンジ

-「ボクサーになる」と誓ってからの大学受験、「リベンジする」と誓ってからの公務員試験。一見繋がっていないようにみえますが、阿部さんはどちらもクリアしたうえでプロの資格を勝ち得ています。

「プロになった満足感よりも、リングでダウンした口惜しさと恥ずかしさがずっと忘れられなくて。その事実と向き合えなかったこと、弱い人間と思われるのが嫌だったこと。そんな気持ちを拭うことが出来ませんでしたね。」

再びプロの資格を手に入れた阿部さんでしたが、時同じくして子宝に恵まれたこともあり、試合はすることなく引退。

その後は公務員として生活を送ることとなりました。

「その後は仕事と家庭の毎日を送りましたが、ライセンスの年齢制限である37歳を迎えてプロボクサーとしてリベンジを果たすことが不可能となったとき、気持ちが荒んでしまうこととなりました。結局、2戦2敗の現実を受け止めることが出来ず無為に過ごしてしまったという気持ちが残ってしまったんです。」

厳しいトレーニングに耐えてプロの資格を2度手に入れた、という見方も出来るとは思います。

しかしながら、志した場所と実際に歩んだ道との乖離に苛まれる、その苦悩はご本人にしか分からないことかもしれません。この時期について、阿部さんは明確に低迷期だったと話されました。

「おやじファイト」との出会い

2015年、そんな阿部さんに大きな転機が訪れます。

「子供の同級生のお父さんが元ボクサーだったんです。父兄参観のときに思い切って話しかけてみたらボクシングの話で意気投合しまして。一緒に練習しよう!という話から。正直、嬉しかったし楽しかったんですよ。」

そこで出会ったのが「おやじファイト」。

ジムでの練習を再開した半年後、阿部さんはついにボクシングのリングに再び上がることとなりました。

おやじファイト-「ただのオヤジか戦うオヤジか。」

– 30歳以上のオヤジのためのボクシングスパーリング大会

ボクシングと離れた後の自身を低迷期と語った阿部さんは、この「おやじファイト」との出会いで息を吹き返したかのように生きがいを取り戻すこととなります。

「おやじファイト」阿部さんの戦績

日時 戦績 対戦相手 場所
2015年9月20日 3R判定勝ち(3-0) 川向寿和 扇橋会館
2016年2月28日 3R判定勝ち(3-0) 藤本洋平 新宿フェイス
2016年8月27日 3R判定勝ち(2-1) 渡辺章 新宿フェイス 関東R40フェザー級チャンピオン
2017年7月30日 引分け(0-1) 河村秀樹 後楽園ホール 九州R40フェザー級チャンピオン
2018年7月29日 3R判定勝ち(3-0) ヤンピ 後楽園ホール 関西R40フェザー級チャンピオン

2016年8月より、日本チャンピオンとしての防衛を続ける阿部さん。

現在は熊野ボクシングジムへと練習拠点を移し、キックボクサーの西村清吾選手らとも汗を流しています。

【中年の星】死線を越えた男が選んだ戦場はキックボクシング、西村清吾(TEAM-KOK)の生き様を見よ!【NKB】 - Middle Edge(ミドルエッジ)

いまはリングに上がり続けることを喜びとし、また二人の子供たちに父親の頑張る姿を見せることもモチベーションになっていると語る阿部さん。

自身のこれまでを振り返り、それらを「バランス」「友達」「低迷期」「生きがい」「やりがい」として話されました。

バランス

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