1978年夏のスター・ウォーズ日本公開を控え、とにかくSF映画に飢えていた、当時の観客たちと日本の映画興行界。
実はその当時、ミドルエッジ世代の少年たちの好奇心を刺激しまくった、一本の作品があったのを覚えておいでだろうか?

『フレッシュ・ゴードン』日本版ポスター
そう、その映画こそ、この『フレッシュ・ゴードン』だ!
往年の人気ヒーロー『フラッシュ・ゴードン』のパロディポルノ映画として製作された本作は、『スター・ウォーズ』への憧れと、SF映画の魅力に目覚めてしまった我々ミドルエッジ世代にとって、文字通り大注目の作品だったのだ。
都内では、新宿東急や丸の内東映パラスで公開されたが、当時小中学生だったミドルエッジ世代には、内容が内容だけに残念ながら見に行くことが出来なかった本作。きっと皆、新聞広告やチラシ・ポスターなどから何とかその内容を読みとろうと、出来る限りの想像力を働かせた覚えがあるのではないだろうか。

『フラッシュ・ゴードン』日本版ポスター
ちなみに、本家『フラッシュ・ゴードン』のリメイク版が公開されたのは、『フレッシュ・ゴードン』公開から3年後の1981年のことだった。
もちろん『フレッシュ・ゴードン』も、現在ではヘア解禁版が普通にソフト化されているので、好きなときに自宅で鑑賞することが可能な環境にある。しかし、やはり我々の頭に今も浮かんでしまうのは、少年の日に憧れた妄想上の『フレッシュ・ゴードン』に他ならない。
そこで今回紹介したいのが、日本公開時に奇跡的に雑誌掲載されていた、この『フレッシュ・ゴードン』コミカライズ版だ。
ただ、掲載誌が「月刊プレイコミック」という大人向けの漫画誌だったため、今までその存在すら知らなかったという方が多いはず。そんな幻の迷作コミカライズを、今回は振り返ってみたいと思う。
*映画『フレッシュ・ゴードン』については、下記のリンクよりご確認下さい。
フレッシュ・ゴードン Space Wars - Wikipedia
コミカライズ版『フレッシュ・ゴードン』概略

掲載誌表紙
本作が掲載されたのは、「月刊プレイコミック」1978年4月号。作者は石川森彦先生で、全31ページに渡って掲載されていた。ちなみに石川先生はこの他にも、「月刊プレイコミック」1978年10月号に『ザ・ドライバー』のコミカライズ版を執筆されている。

折込ピンナップにも、『フレッシュ・ゴードン』が!
画像の通り、コミカライズ版以外に折込ピンナップにも『フレッシュ・ゴードン』のポスターが使用されるなど、いかに当時の注目度が高かったかが分かる本作。果たしてその内容は映画版に近いものだったのだろうか?
コミカライズ版「フレッシュゴードン」内容紹介

本作の扉絵
迫力ある見開き扉絵には、石川森彦先生のアメコミ調の絵柄が実に良く合う。

エキサイト星に到着したフレッシュたち。

映画にも登場する一つ目の怪物!
映画の序盤の展開をすっ飛ばし、本作はフレッシュたちがポコチンロケットで敵の本拠地であるエキサイト星に降り立つ所から、いきなりスタートする。到着するなり敵の軍隊に捕まってしまった三人が連れて行かれたのは、満貫大王の宮殿だった。

悪役"満貫大王"登場!

コミカライズ版の影の主役、暗黒の女王アモーラ登場!

大人向け雑誌ならではの、読者サービス!

スーパーパワーを得た、フレッシュの反撃!
地球にエキサイト光線を発射して地球人を狂わせ、地球征服を企む満貫大王が登場!更に満貫大王と敵対する、暗黒の女王アモーラも登場し、フレッシュを巡って小競り合いを繰り広げることに!そんな中、敵の攻撃で傷つき倒れたフレッシュはアモーラに助けられ、彼女はSEXを通じてその強大なパワーをフレッシュに分け与えるのだった。
こうして、暗黒の女王アモーラのお蔭でパワーを得たフレッシュは、満貫大王に戦いを挑むのだが・・・。

「フレッシュゴードン」と言えばこれ!ピストンロボットもちゃんと登場。

大魔神ペガサス登場!

ありがとう、暗黒の女王アモーラ!
映画でも印象的だった、股間にドリルをつけた"ピストンロボット"を撃破したフレッシュの前に、満貫大王が送り出したラスボス、大魔神ペガサスがついに出現!
デールを人質に取るペガサスの手から、彼女を救出したフレッシュ。大魔神ペガサスはバランスを崩して塔の上から地面に落下。大爆発を起こして、満貫大王はエキサイト星もろとも宇宙のチリとなって砕け散ったのだった。
結局、暗黒の女王アモーラの力によって悪を倒したフレッシュたち一行が、ポコチンロケットに乗って地球への帰路についたところで、本作は終了する。
アメコミ調の絵柄と迫力あるアクションシーンにより、映画本編よりも面白い内容に仕上がった本作は、当時映画館に行けなかった我々ミドルエッジ世代の好奇心を、十分に満たしてくれたと言えるだろう。
最後に
いかがでしたか?
映画の序盤、フレッシュゴードンたちが宇宙に飛び出すまでのエピソードがバッサリと切られている代わりに、ラブストーリーの要素を入れて作品全体に漂うチープさを見事に消し去った、このコミカライズ版。
実物の映画では味わえない、あの頃に夢見た俺たちのフレッシュゴードンに、多少なりとも近づけた気がする。そんな読後感を得られる作品として、ミドルエッジ世代にも是非オススメしたい作品なのだが、残念ながら権利などの関係でこちらも単行本などには収録されていないのが現状だ。やはり当時の時代の空気込みでなければ、その面白さや魅力が100%味わえない作品だけに、本作の一日も早い復刻が待たれるところだ。