
右腕を喪失した状態で、艦船のドックに佇むクエス専用ヤクト・ドーガ
私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。
今回紹介するのは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』上映当時のリアルタイムガンプラキットから、1/144 クエス・パラヤ専用ヤクト・ドーガです!
ヤクト・ドーガ(クエス・パラヤ専用機) 1/144 7 1988年4月 800円(機動戦士ガンダム 逆襲のシャア)

今では珍しい1/144の縦ボックスアート
さて、『Z』『ZZ』と続いて放映当時の旧キットを紹介してきた新展開の『ガンプラり歩き旅』ですが、今回ご紹介するのは、ガンダムシリーズ初の完全劇場用新作映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』より、クエス・パラヤ専用ヤクト・ドーガをチョイスしてご紹介します。いや、このチョイスにもちゃんと必然があるんですよ、奥さん。

まずは普通に完成した旧キットのヤクト・ドーガの塗装済み完成品
今回も、無駄な蘊蓄から始まるのだが、40年を迎えようとするガンプラの歴史の中で、この『逆襲のシャア』シリーズは、その中でも重要なターニングポイントとなる要素と仕様をいくつも持ち込んだパイオニアなのである。
それは一つには、イマドキのガンプラであれば標準装備の「パーツ単位の色分け」と「接着剤のいらないスナップフィット組立方式」の採用であった。
更に昔、60年代に始まったプラモデル文化(ちなみに「プラモデル」という名称自体、その時期にウルトラ怪獣ソフビ人形で大ブレイクした企業・マルサンの登録商標であった。他の企業は「プラキット」等と銘打っていた)は、思春期層を中心に広まっていったが、70年代初頭からの、バンダイ、アオシマ、マルサンなどによるマスコミ(漫画やテレビのキャラクター)商品プラモの快進撃で、幼児層も手を出すようになり、やがて80年代に入る頃にガンプラで一気に社会現象を生み、大人社会から注視されるようになったのである。

完成した旧キットのサイドビューとバックビュー
そうなると、いつの時代も親の世代、社会というのは目ざといもので、70年代前後に、不良(笑)の間で流行っていた「シンナー遊び」「アセトン遊び」と、プラモデルで主に用いられる接着剤やラッカー塗料などが安易に結びつくのではないかという疑惑が飛び交い、それはもちろんタミヤセメントやグンゼの薄め液程度ではどうやったって中毒遊びなんてできやしないのだが、今で言う「ポリコレ棒で叩」かれ続けた模型業界は、スケールモデルを安全地帯へと一度切り離し、児童層向け(ではなくなってきたんだけどね、もうこの頃は)のガンプラだけを矢面に立てて、業界をあげて対応することにした。
また一方で、ガンプラブーム最盛期の1982年に、子どもが模型用塗料で火事を起こした事件も影響し、模型業界をあげて「安全・安心」の水性ホビーカラーが急遽開発され、店頭に並ぶことになった。
しかし、いくら業界が全力を挙げて開発したと言ってもしょせん水性は水性、小学生が使う絵具と原理は一緒である。筆者も当時、時流に乗って水性塗料を一度使いかけたが「筆で塗ると塗料が伸びない」「ラッカー性よりもムラができやすい」「ちょっとやそっとじゃ乾かない」「乾いても、水にぬれると溶けだしてくる」「乾いた後も、ちょっとこすれるとすぐ剥がれる」「パーツの上に塗る時、隠ぺい力が低すぎて、濃い色のパーツの上に薄い色が乗らない」等など、文字通り「使い物にならない」代物だった。
しかしバンダイは、そこは仕方ないのだが一応世間への顔向け上、組立説明書等には「塗装には、より安全な水性塗料のご使用をお勧めします」とか、なんかまじない文のように今でも記載し続けていたりする。
あれから36年が経ってみて、こないだどうしても調色が難しい色味が、水性ホビーカラーで単色で出ていたので「さすがに進歩してるはず」で買ってみて使ったが、見事に上で書いた短所がそのままで、大河さん一生水性ホビーカラーは使わないと腹をくくった。

正面から見た旧キットのヤクト・ドーガ。プロポーションは悪くない
何が言いたかったかというと、その「プラモデルがプラモデルたりえている必要条件」の「接着剤と溶剤系塗料」から、脱却しなければ社会から抹殺される。売り上げが年々徐々に右肩下がりになってきていた、ガンプラ関係者とバンダイがそう怯えても、さもありなんという状況が出来上がっていた。
「パーツ同士を接着させて、色を塗って作るのがプラモデル」で、そこから接着剤と塗料を追い出せとは、まさに『一休さん』のとんちのような社会風潮。
しかし、かといってギャクギレして『バンダイ、ガンプラやめるってよ』になってしまっては、バンダイだけではなく模型業界全体を震撼させる業界的事件になってしまう。
そこでバンダイが掲げた二大挑戦テーマが「接着剤のいらない、はめ込むだけで完成する仕様」と「初めからパーツ単位でアニメ設定どおりの成型色で生産されているガンプラなら、塗装しなくてもよい仕様」という、後のMG、HGUC、PG、RGに繋がっていくメインストリームコンセプトだった。
その二大コンセプトは、片方で「はめ込み式だけだと、パーツがポロポロ落ちる」RGガンダムやHGUC サザビー等の欠点を生みつつ、後者は「正面から見える部分はスラスター内部まで全部パーツ色分けしてあるんだけど、バックパックのバーニア内部が塗り分けられている1/144 HGUCは、2018年現在ほぼ皆無」なフォーマットを生み、まだまだ進化の過程を歩み続けているのだが、「その歩み」を始めたのが、今回紹介する『逆襲のシャア』のキット群商品からなのである。

劇中再現。ギュネイのヤクト・ドーガ(HGUC)と並び飛ぶ、クェスのヤクト・ドーガ
『逆襲のシャア』の映画自体は、1988年3月12日公開開始の、いわゆる「88年の春休み映画」だったわけだが、そのガンプラ展開は公開を先駆けること1クールの、1987年12月の「1/144 νガンダム」から始まった。
この「1/144 νガンダム」もいわく付のシロモノで、まだこの12月段階では、「新作でアムロが乗るガンダムにはフィンファンネルが付いている」ことはネタバレさせられなかったため、まずはフィンファンネル抜きの状態で800円で発売。
同じタイミングでリ・ガズィが発売され、年が明けて1月には、ギュネイのヤクト・ドーガが、2月にはシャアのサザビーが、3月にはギラ・ドーガが、そして映画公開のタイミングで今回紹介するクェス専用のヤクト・ドーガが発売されるというプロジェクトであった。
ちなみに、フィンファンネル付きνガンダムは、キットの出来そのものは、1/100に至っては現代のMG版に勝るとも劣らないクオリティではあるが、1/144が7月、1/100が10月と、完全に映画の盛り上がりが終わった後の発売になっており、どうも商機を逃した雰囲気が当時から拭えなかった。
しかし、上で書いた二大コンセプトへの挑戦は、このシリーズで早くも相当細かいところまで行きわたっており、第1弾で発売された1/144 νガンダムでも、額の角や胸のダクトなどがオレンジイエローのパーツで、コクピットハッチやふんどしが赤いパーツで、それぞれ成型されていて、今のHGUCなどでもお馴染みの「キットの箱のふたを開けると、多色成型のカラー別のパーツが、一枚のランナーに収まっている図」は、ここから歴史が正式に始まったと言っていいだろう。
また「接着剤いらず構造」に関しても、当時からはめこみの保持力は最重要課題であったからか、このシリーズでは殆どのキットが、ほんの数個のネジを使って、ドライバーで止めていく方式が採用されている。
これが「1/100 νガンダム」になると、いきなり頂点を極めるところまでいくのだが、今回はあくまで1/144 ヤクト・ドーガの話なので、話を本題に戻そう。

シールドを装着した左腕
このキットも、上記したように「成型色段階で5色」「ネジビス5つ付き 接着剤不要」仕様で構成されている。
色分けは「本体メインの赤」「バーニア類のちょっと濃い赤」「武器やパイプ類のミディアムブルー」「頭部や胸、脛前面やシールドの白」「バックパックの濃紺」で分けられており、ジオン紋章などはシールで補完もされているので、説明書通りに組むだけでも、少なくとも『Zガンダム』『ガンダムZZ』時代よりは、アニメに近い色分け状態の完成形を手にすることが出来る。
キットには付属品として、ビーム・ライフル、ビーム・サーベル、ビーム・ガトリングガンが付いてきていたのだが、実はこのキットも、この連載紹介でたまにある「数年前に気の迷いで組み立ててしまったまま放置してあった奴」なので、シールド以外の付属品はなくなってしまっているので、その辺りご勘弁ください。
その上で、毎度お馴染み「なんでイマドキなら、色分けもプロポーションも完璧なHGUC版が出ているのに、旧キットを用意したの?」に関しても、この後述べていくのでお付き合いくださいませ。

激戦のさなか、戦闘不能な状態で、シャアに会いたいという気持ちだけでサザビーに辿り着いたクェスのヤクト・ドーガ
さぁ本題に入ろうか!
あのね、こっからは、文体も人格も変わる勢いで、このキットを全否定しますよ(笑)
いや、このキットと言うか、この『逆襲のシャア』1/144シリーズ全体を統括した責任者クン。二大ミッションのハードルを同時に乗り超えなきゃいけないプレッシャーを前に、いろいろ考えたのは分かるが、そのせいで、「そもそも」論で当たり前のこと、それこそ初代の1/144のガンダムやザクで出来ていたことが、疎かにされ過ぎている欠点を含んだ商品が、このシリーズでは多すぎるのだ。
それは「腕の可動方向」という純粋な問題である。
さきほど、上でこのキットの左腕を見てもらったが、今度はちょっと同じ構造の右腕をご覧いただきたい。

ヤクト・ドーガの右腕
デザインの立体再現度は高い。出渕デザインの曲面の立体構成としてもかなりレベルは高いだろう。ディテールも過不足なく、パイプ類等もちゃんと別パーツで再現されている。
しかし。
この「見るからに内側に曲がりそうな腕」は、むしろ「内側に“しか”曲がらない腕」なのである。

腕を上げて、曲げられる関節を頑張って曲げた状態
手首までが角度が変えられる仕様なのは褒めるべきかもしれないが、肘の曲がり角度90と累積すれば、ボディに対する手首の位置は160度ぐらいまで可動することは可能だが、なんとこのキット「上腕ロールが存在しない」つまり、肘を前に向かって曲げることが不可能なのである。

両腕を、最大限可動させてつけたポーズ
なのでこの写真のように、両腕の可動領域を最大限活かしても、ゴリラがウホウホテンションをあげているか、昔懐かしの『おそ松くん』のイヤミの「シェー」のポーズにしか見えない。
そもそもバンダイ、というかポピー時代から、このメーカーは「関節可動するアクションフィギュア」の、「関節の優先順位」がおかしいのだ。
それはガンプラブーム直前のポピー時代に展開したアクションフィギュアシリーズ「ワールドヒーロー」から、この『逆襲のシャア』時期にバンダイ玩具で一番盛り上がっていた「聖闘士星矢 聖衣大系」シリーズまで変わらず、その優先順位は、まず首の回転で、次は肩の回転で、その次はなぜか「股間」で、次が「膝」そして「肩の開き」が優先で、ようやく次が「肘の可動」になるのだが、この「肘に可動」どうやら少なくとも当時のバンダイは「内側に曲がるポーズが一番絵になる」前提で商品仕様を作っていた節がある。

左側ウルトラマンタロウは70年代後半のポピー「ワールドヒーロー」右側のフィギュア素体は「聖闘士星矢 聖衣大系」シリーズから
聖衣大系のフィギュアも、上腕にロール軸はちゃんとあるが、逆に(聖衣で前腕と手の甲が繋がってる関係で)手首が前腕に対して固定であり、手首位置を前提にすると、肘は内側に曲がる以外に「カッコいいポーズ」は取れないのである。
確かにガンダムのモビル・スーツ自体、初期から特にジオン側は、ザクもグフもドムも肘関節が内側を向くようにデザイン画が描かれていて、ガンプラもその状態で飾るのがもっとも「それっぽい」ことは確かだった(逆に、肘が内側に曲がるべきパーツ形状のまま、前に曲がるアニメ独特の二次元の嘘演出を、マニアの間では大河原邦男氏にちなんで「ガワラ曲げ」と呼んでいた(笑))。
しかし、歴代ガンプラは、それこそ第1号の1/144ガンダムのように「上腕ロールがないので前にしか肘が曲がらない」仕様のものこそはあったが、1stの1/144キットは、(ゲルググみたいな)可動範囲の限界の差はあっても、少なくとも肘を前に曲げた自然なポーズはとれたはずである(前にも内側にも一切曲げる気のないジオング抜きで(笑))。
「その法則」が崩れたのは、『Zガンダム』での1/220シリーズからであり、しかし『Zガンダム』1/220シリーズは、別個にメインストリームの1/144シリーズがあればこそ、低価格帯コレクションシリーズとして「肘ロールなし。肘内側可動」仕様が許されたところはある。
上でも書いたが、確かにメカロボットの通常のデザインというものは、最小限度まで可動軸を減らして立体化しようとした場合、肘は内側に向かって関節軸が描かれていることが多かった(イマドキは発想が逆になっているデザインも多い)。しかしそれと同等に「肘関節が内側にしか曲がらないロボットメカ」など、プラモでもアニメのメカでも、そうそう存在しなかったのが80年代初頭のガンプラブームだったのだ。
問題は「なぜ、歴代ガンダムシリーズ初のオリジナル劇場用映画版のガンプラ」で「それ」をやらかしてしまったのかだ。
確かに「デザイン至上主義からすると、上腕ロールが仕込みにくい」というヤクト・ドーガデザインの問題もあるかもしれない。
しかし『逆襲のシャア』シリーズは、劇中で登場するモビル・スーツのガンプラが全て1/144で7種発売されたが、その中でちゃんと上腕でロールする商品は、νガンダムとリ・ガズィ、ギラ・ドーガだけで、残り4種は肘が内側にしか曲がらない仕様。
デザイン上本当に仕方ないのか?と疑うのは、一番上腕ロールが仕込みやすそうなジェガンが、なぜか前腕にロールがあって、前腕はグルグル回転するんだけど、曲がる方向は内側だけという素敵な仕様であることからも、「バンダイが何か完全に間違えてる」感を理解してもらえると思う。
またこのキット、何度も書くが、デザインの立体化と色分けは比較的優秀なのだが、こと可動という点については、過去になかった優秀さを誇る部分と、過去にはあり得なかったダメさ加減を誇る部分とのハイブリッドでお送りしているのだ。

肩の開きと開脚範囲
開脚は、このデザインのスカートを考慮すれば妥当な脚の開きが出来る。しかし肩。いくらファンネル装着バインダーが邪魔をしているからと言って、1988年にこの範囲はないだろうとツッコまざるを得ない。

結果としての腕の可動範囲
「内側にしか曲がらない肘」と「45度も開かない肩」でポージングさせると、結局この程度が限界になる。先ほども書いたが「ゴリラが胸を叩いてテンションあげてる図」だと言われたら、もうそうとしか見えなくなってくる。
また、今「開脚について」は褒めたが、開脚姿勢を保つのは膝関節である。膝の可動範囲と保持力を確認してみよう。

誰か救急車を! 人が仰向けになって倒れています!
いや……もうネタにでもせぇへんとやってられへんわ……。
確かに昨今のガンプラの、イマドキのインフルエンサーガンプラレビュワーさん達が、義務として確認する「片膝立ちポーズ」が、どんだけの価値やバリューがあるのかちょっと分からないんだけれども、さすがに「これはない」わ。
脛側にポリキャップの受けがあるんだけど、そこが経年劣化でヘタっているのか、基礎構造上から問題があったのか、このヤクト・ドーガ、少し油断をすると仰向けに倒れていくことこの上なし。なおかつ膝の曲がり具合なんぞを確認なんぞしようものなら……というのが上の写真の惨状の解説。うん……「膝は90度曲がります」でいいんじゃないかな……この際……。

脛がハの字に開きます
ジェガンの前腕同様、本来腿にあって欲しかったロール軸が脛側にあるもんだから、昔から由緒正しいガンプラの素立ち姿勢の「ハの字立ち」も、股間からじゃなくいきなり膝から下がハの字になるという四次元構造なんですわ。
もう本当、このシリーズのキットを設計した人って「どうすれば接着剤無しでバラバラにならない構造に出来るか」「どう分割すれば、大まかな色分けがパーツで再現できるか」しか、考える余裕がなかったんじゃないかな。

頭部可動は優秀
ところがどっこい、こと頭部の可動に関しては、デザイン上では動かしにくく立体化把握もし難い形状で、顎下にはパイプが伸びているにも拘わらず、上下左右に結構動く。

頭部構造の右側からのアップ
頭部のパーツは赤と白の物で分割されていて、ボディとの接続は少し後ろへ引いたような案配で背中側に近くすることで頭部前方のクリアランスを確保。2本のパイプも。固定接続するのではなく、頭部の顎下の隙間の空いた部分に入り込んでいるだけなので、頭部の動きの邪魔をしない。
この心づかいの1/1000でも、肘に回してくれれば……(以下略)

バックパックの作りは丁寧
上で何度も書いたが、「出渕デザインの立体再現度」だけはどのキットも優秀なんですよ、このシリーズ。
思えば当時キットって『ガンダムZZ』の頃も、ガルスJとかR・ジャジャとか、出渕氏デザインのモビル・スーツが、ガンプラ化(の、主にギミック・可動面)で割を食ってばかりだったような気がする。
どれも立体栄えするデザインなんだけどもねぇ。

左が今回紹介した旧キット。右がHGUC版クェス・パラヤ専用ヤクト・ドーガ
もっとも、この写真で見る限りは、HGUCのアレンジも(イマドキという意味では)悪くなく、後はもう、キット自体のポテンシャルの差の問題なのだけど、どうにもこうにも旧キットの方は、志高くも追いつかずというよりも、アレもコレもと要求され過ぎてしまい、ガンプラの本来の商品価値がおろそかにされ過ぎたという感が否めない。
さて、ここでいつものテーマ。
「市川大河は、シミルボンの『機動戦士ガンダムを読む!』での、ガンダムシリーズの名場面を再現するだけなら、最新のHGUCを使えばいいだけなのに、なんで旧キットを持ち出して(しかも批判しまくりで(笑))作って紹介しているのか」
その回答は、こちらのアニメ本編画像をご覧になっていただければわかる。

アニメ劇中より。被弾して右腕を失って収容されたヤクト・ドーガ
劇中では、実はクェスのヤクト・ドーガの活躍シーンはそれほど多くはない。ニュータイプの素質を開花させる試験のときと、初の実戦で、まぁビーム・ガトリングは使うんだけど、精神的に不安定で、その後すぐにガトリングごと右腕を吹っ飛ばされてしまう。
このクラッシュ再現では、まぁぶっちゃけHGUC版をもう一つ買ってくるか、バンダイお客様相談センター宛てに、右肩パーツ一通りを請求して、それらでクラッシュパーツを作るという手もあったのだけど「もう一個買って丸々クラッシュモデル」の予算はリ・ガズィが持ってちゃったし、パーツ請求しようにも、意外と右肩全部のパーツって数が多くてリスクも大きい(たまに、請求したパーツがないと、それ以外のパーツだけ送ってくるという真っ当な判断をされるのだが、こっちにしてみるとそれが一番困る)。
むしろ出番的にはクラッシュ版の方がいろいろ重要なので、どうしようかと思っていたところでこのキットを見つけたので、あぁちょうどいいやで、このキットの右肩をクラッシュさせることに決めたという次第。
肩でクラッシュしていれば、肘の曲がる方向も気にならないしね。

実際に右肩をクラッシュさせた旧キットヤクト・ドーガ
実際問題として、右肩のどのあたりまでをどのタイミングでクラッシュさせるかは相当悩んだのだけれども、80年代までのメカアニメでは当たり前だったんだけど、メカ描写に拘った『逆襲のシャア』でさえ、「カットごとにクラッシュ状態が異なる」作画の現象が起きていて。
まぁこちらとしては、最大公約数的に、「ムーバブル・フレームが内蔵された右肩が派手に損傷している」を再現出来ればいいか、的にモデリングした次第。

ダメージ部分のUP。モデリングはいつものようにモーターツールとジャンクパーツ
塗装に関してはあまり覚えていないのだけれども、基本の赤はキットのままで、ファンネルをイエロー、白をホワイト+ダックエッググリーン、パイプ類をミディアムブルーで筆塗りしたという記憶がある。

今一度。ノーマル状態のヤクト・ドーガを煽りで! 意外とカッコいい?
難所も弱点も欠点も、許しがたい点も多数あり、この時期のガンプラの無理矢理な「はめ込み式完成」「水性塗料推し」への落胆と反発があったため、大河さんは今でも「足りないと思った箇所は迷わずMrカラー筆塗り」「どんだけスナップフィットだろうと、可動箇所以外はタミヤセメントで接着」を頑なに守り続けるへの反面教師にさせてもらった。
ガンプラの一つの大きな転換期としては、1/144ガンダム、旧HGガンダム、旧HGグフカスタム等と並んで、句読点としては再評価が待たれるシリーズではあると思っている。
市川大河公式サイト