ブライアン・デ・パルマ
ブライアン・デ・パルマといえば、トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル」やアカデミーをはじめ数々の賞に輝いた「アンタッチャブル」などで知られている映画監督で、今では既に巨匠といってよい存在。

ブライアン・デ・パルマ監督
しかし、それは80年代以降の話です。70年代のブライアン・デ・パルマはちょっと違います。いえ、随分違います。マニア心をくすぐる70年代のブライアン・デ・パルマ作品は最高です!
悪魔のシスター
ブライアン・デ・パルマは1960年から作品を撮り始め、最初に注目を集めたのが1968年の「ブルーマンハッタン」です。この作品は第19回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞し、1970年には続編が作られています。苦節10年。やっと実を結んだわけです。そして、ここからブライアン・デ・パルマ栄光の70年代が始まります。
日本未公開の1972年作品「Get to Know Your Rabbit」に次いで1973年に公開された「悪魔のシスター」。これが華麗なる幕開けですね。

悪魔のシスター
原題は「シスター」。「悪魔の」は付きません。タイトルだけを見るとオカルト映画のような感じですが、オカルトよりもたちが悪いと言いますか、コワイです。
内容はネタバレしてしまうと魅力半減、面白さ半減ですので控えますが、ブライアン・デ・パルマ作品の特徴が出ている。つまりこの時点で既に作家として完成されていることに驚かされます。
映像の魔術師とも言われるブライアン・デ・パルマのカメラワーク。大きな特徴として、①スクリプトスクリーン(画面が中央で割れて別々の映像が流れる)、②極端なスローモーション、③長まわしがあります。そして作品テーマとしては、二重人格(人格の分裂ですかね)。それらの要素が既に顔を出しています。
日本においてはリアルタイムでブライアン・デ・パルマ作品を観ることが出来たのは本作が最初になるかと思いますが、この感覚に驚いたことでしょう。
ファントム・オブ・パラダイス
人によってはブライアン・デ・パルマの最高傑作は本作である!と言いきる人多数の「ファントム・オブ・パラダイス」。1974年の公開です。
漫画「ベルセルク」ファンであれば、主人公のコスチュームに見覚えがあるはずです。そう、あれです。また、映画の中には「ジューシーフルーツ」というバンドがでてきます。日本にも同名のバンドがいましたよね。そう、あれです。
日本だけではなく、そして各方面に大きな影響を与えている映画ですね。

ファントム・オブ・パラダイス
ヒッチコック作品をはじめ様々な作品のオマージュといますか、引用を多用することでも知られているブライアン・デ・パルマ。「ファントム・オブ・パラダイス」でも「オペラ座の怪人」「ファウスト」「ノートルダムのせむし男」などの古典作品からアイデアがとられています。
元になった作品と比べるのもまたブライアン・デ・パルマ作品の醍醐味のひとつなんですよね。
さて、肝心の内容ですが、上記の引用からでは恐ろしいほどに面白さが伝わらないかと思います。いえ、大雑把に言えば内容はその通りで間違いはないのですが、これを読んだだけでは全く観る気がしないですよね?お気持ちは痛いほど分かります。
詳細を記すればネタバレとなるし、観る気は起きなくても、もう、これは実際に観てもらうしかありません。映像の魔術師ですからね。言葉には出来ないのです!
愛のメモリー
ブライアン・デ・パルマのヒッチコック好きはよく知られています。ヒッチコック愛でいっぱいの映画が1976年に公開された「愛のメモリー」です。
日本で「愛のメモリー」といえば、それはもちろん松崎しげる。あの歌声が頭の中いっぱいにかけまわりますが、当然ながら映画とはまったく関係ありません。
そもそも原題は「Obsession」。強迫観念と訳されます。映画のタイトルとしては弱いようにも感じますが、グッとヒッチコック感がでますねぇ。

愛のメモリー
物語は1959年、主人公の妻と娘が誘拐され犯人が逃走中に自動車事故を起こし一緒に乗っていた妻子は死んだと警察から聞かされます。
それから16年後の1975年、主人公は共同経営者とイタリアのフィレンツェを訪れた際、死んだ妻とそっくりの女性に出会います。2人は惹かれあい結婚を決意するのですが、また女性が誘拐されてしまうのです。ふたつの誘拐事件の裏には何があるのか?という実にアルフレッド・ヒッチコック監督の「めまい」を感じさせる内容です。
キャリー
さぁ、「キャリー」ですね。センセーショナルを巻き起こし世界的に大ヒットしました。原作が人気作家のスティーヴン・キングで、その同名小説の映画化ということも商業的成功の要因でしょう。

キャリー
この映画はブライアン・デ・パルマの手腕もさることながら、キャリーを演じたシシー・スペイセクとその母親役のパイパー・ローリーの演技が圧倒的です。(二人ともアカデミー賞にノミネート)
また、本作はジョン・トラボルタの本格的な映画デビュー作でもあります。
「キャリー」は、1999年に続編「キャリー2(監督はカット・シーア)」が作られ、2013年にはキンバリー・ピアース監督によってリメイクされています。
殺しのドレス
70年代最後を飾る傑作「殺しのドレス」は、またしても内容をお伝えすることが出来ません。アルフレッド・ヒッチコック監督のこれまた名作「サイコ」へのオマージュだからです。こう言えばお分かりいただけるでしょうか?そもそも「サイコ」をご存じでなければ分かりようがありませんよね。
それではまたしてもこう言うしかありませんね。観る気は起きなくても、もう、これは実際に観てもらうしかありません。

殺しのドレス
それにしても「殺しのドレス」とは、なんと美しいタイトルなのでしょう。原題も「Dressed to Kill」ですからバッチリです。
この後ブライアン・デ・パルマと結婚することになるマドンナ役のナンシー・アレンが美しく魅力的です。
しかし、ある日ブライアン・デ・パルマが自宅にもどると不倫現場に出くわしあえなく離婚。ブライアン・デ・パルマは相当ショックだったことでしょう。
その不倫の模様をそのまま再現したシーンから始まるのが1984年の作品「ボディ・ダブル」です。そして翌年の「アンタッチャブル 」へとつながり大監督への道を歩みだすのです。
ブライアン・デ・パルマ、ただでは起きない男なのです!