以前紹介した『片腕ドラゴン』の主演スター、ジミー・ウォング。カンフー映画ブームが日本から去った1976年に公開された、彼の刑事アクション映画の傑作が今回取り上げるこの『スカイ・ハイ』だ!

『スカイ・ハイ』日本版ポスター
ミドルエッジ世代にとっては映画の内容よりも、このハング・ライダーを前面に押し出した迫力満点のポスターや、「千の顔を持つ男」のキャッチフレーズで我々の心を鷲づかみにしたマスクマン、ミル・マスカラスの入場曲にも使われた主題歌、『スカイ・ハイ』が強烈に印象に残っているのではないだろうか?

『スカイ・ハイ』シングル盤レコード
ハング・ライダーに皆が憧れた映画、『スカイ・ハイ』とは?

『スカイ・ハイ』OPタイトル
意外にも、原題は『香港から来た男』というシンプルな物だった本作。
まるで強大なゲイラ・カイトの様な三角形の翼で、大空を自由に飛び回るその姿!当時のミドルエッジ世代の心を鷲掴みにしたその新スポーツこそ、このハング・ライダーだったのだ!

『スカイ・ハイ』日本版ポスター
今まで日本人に馴染みの無かったこのハング・ライダーだが、実は1973年の映画『007死ぬのは奴らだ』にもいち早く登場している。
だが、やはり日本の観客にとってはこの『スカイ・ハイ』が本格的な登場として記憶されており、大空を自由に滑空するその姿は、あまりにカッコ良すぎる主題歌と一緒に、今もミドルエッジ世代の記憶に強烈に残っている。

『スカイ・ライダーズ』日本版ポスター
実はWikipediaによると、日本でこのハングライダーが本格的に普及するようになったのは、何と『スカイ・ハイ』が公開された1976年からなのだそうだ。そう考えると、日本におけるハングライダー普及に本作が及ぼした影響は、極めて大きかったと言えるだろう。
実はこの年には、更にハング・ライダーを前面に押し出したアクション映画『スカイ・ライダーズ』も公開されており、正にこのハング・ライダーこそ70年代のこの時期に一世を風靡した新スポーツだったのだ。

『スカイ・ハイ』OPタイトルより
ちなみに本作の主演は、以前ここでも紹介した『片腕ドラゴン』のジミー・ウォング。

『スカイ・ハイ』本編より
現代を舞台にしたこのポリスアクション映画では、香港からオーストラリアに渡った敏腕刑事を演じている。

若き日のサモハンも出演!
悪役に二代目ジェームズ・ボンド役で有名な、ジョージ・レーゼンビーを迎えたことでも話題となった本作だが、何と実は若き日のサモハンも出演していたのはご存知だろうか?
幸い現在では廉価版DVDもリリースされているので、興味を持たれた方は是非一度チェックして頂ければと思う。
『スカイ・ハイ』コミカライズ版概略

掲載誌の表紙
本作が掲載されたのは、月刊少年チャンピオン1976年7月号。ちなみに作者は、もはやこの頃映画コミカライズ界のエースとなっていた、たなべせつを先生。

折込ピンナップにも特集されていた!
コミカライズ版だけでなく、折込ピンナップの裏面にはカラー写真による映画の紹介も掲載されていた。
『スカイ・ハイ』コミカライズ版紹介

コミカライズ版の扉絵

香港警察の敏腕刑事ファン登場!
麻薬の密輸ルートを追ってオーストラリアにやって来た、ファン刑事を迎えるシドニー警察と麻薬局の面々。

走るオートバイに向かって必殺のキック!

組織のボス、ウィルトン登場!

手掛かりを求めて敵の道場へ潜入するファン。

命の恩人がついに犠牲に・・・。
敵のボス、ウィルトンの道場へ侵入したが見つかり、激闘の末に重傷を負ったファン。彼を見つけて看病してくれたアイリーンも、ついに敵の襲撃で犠牲となってしまう。
怒りに燃えるファンは、ついに高層ビル最上階にあるウィルトンのアジトへ単身殴り込みをかけるのだった。

ハング・ライダーで奇襲をかけるファン!

ビルの屋上から窓を蹴破り登場!

もみ合う内に手榴弾のピンが抜けた!

間一髪で脱出したファン。
実はラストシーンが映画と微妙に違っている、このコミカライズ版。
映画ではハングライダーで脱出する余裕は無く、外に垂らしたロープを滑り降りて一気に地上まで脱出するという、非常にスピーディーな展開になっているのだが、『ハング・ライダーアクション』と銘打たれた本作には、やはりコミカライズ版ならではのアレンジの方が合っている様に思われる。既に月刊少年チャンピオン誌上において、数々のブルース・リー映画のコミカライズ版を発表されていた、たなべせつを先生だけに、この『スカイ・ハイ』でも迫力あるアクションシーンを見事に再現されているのが凄い!
オーストラリアを舞台にしたスケールの大きいアクション映画として、未だにミドルエッジ世代には根強い人気を誇る作品だけに、機会があれば是非もう一度劇場の大スクリーンで上映して頂きたいものだ。
最後に
いかがでしたか?
当時劇場に見に行けなかったが、後に日テレの水曜ロードショーで放映されたときに見た、という方も多いのではないだろうか?
既にカンフー映画ブームが去ってしまった時期とはいえ、まだまだジミー・ウォングの知名度は興行的に価値が高かったこの頃。本当に鳥の様に自由に大空を飛び回るジミー先生の姿は、素晴らし過ぎる主題歌の効果と併せて当時の子供たちに「凄い、カッコいい!」と、憧れの気持ちを抱かせたのだった。
当時劇場に見に行けなかったミドルエッジ世代にも、その魅力を大いに伝えてくれていたこのコミカライズ版が、いつの日か復刻される日が来ることを、願って止まない。